山田洋次監督の映画“学校 Ⅰ”での田中邦衛さんを、忘れることができない。
黒井(西田敏行)の夜間中学に通うイノさん(田中邦衛)は、50代になるまで、文字の読み書きが出来無かった。趣味は競馬で、カタカナの書き取りの時間にオグリキャップの事について熱弁した事がある。
数十年以上にわたり肉体労働を中心に幾つかの職を転々とし、それが影響して体を壊して大病を患い、映画の最後には療養の為東京から地元の山形に帰省し、その末に亡くなる。妹が1人居たが幼少期に死別しており、その事が自分の責任であると思い込み、心の深い傷となっていた。
夜間中学の親切な田島先生(竹下景子)に好意を寄せ、授業で結婚申し込みの葉書を書く。田島に相談された黒井はイノさんに諦めるよう諭す。
「うるさいよ!カラオケ止めろ!」
「人の葉書をヨ たらいまわしにして読みやがってヨ 笑いものにしてるんだ 俺のことをヨ
何が同じ人間だヨ あんたら(黒井と田島らのこと)病気で休んだって ちゃんと月給出るだろう 俺たちは仕事休んだら その日からオケラだよ 血統が違うんだよ あんたらとはヨ それがどうして 同じ人間同士だぁ 」