どんな嬉しいことがあっても、いつも胸の底に痼りが残っていた。
仕事場のことである。
「顔で笑って心で泣いて……」
演歌にありそうな言葉だが、そんな気分の日が続いていた。
そんな中にありながら、時には、状況好転のニュースもあった。
「よかった、よかった!」
その都度、確かに喜びはあった。
その喜びは、次なる努力へのエールでもあった。
「そうか、そうか、よかったねえ。じゃあ次ぎもまた頑張ろうよ」
そんな中途半端な喜びだった。次なる苛酷な努力が待っていた。だから、その瞬間は喜べても、真底からの喜びにはならなかった。
笑顔をつくり、肩を叩き合って喜んでみても、胸の底に潜む痼りを忘れることはできなかった。
そんな数ヶ月だった。
昨日の午後、とびきり嬉しい報せがあった。Y君からの電話だった。
胸の底に潜んでいた痼りが、緩んでも良さそうな報せだった。
よかった!本当によかった!
後輩たちの努力が、実を結んでくれたのだ。
電話を受けながら、涙腺が緩んでいる自分を感じた。加齢涙腺軟化症……?
こんな時、長話は禁物だ。
多くの後輩たちに、心から「ありがとう」を言いたい。
そして、精一杯の讃辞を贈りたい。
よかったね!!
リーダーのみんなにも、心から感謝を申しあげたい。
個々それぞれの力が、結集して大きな輝きを見せたのだ。
集ひたるサルビアの朱の輝やけり 鵯 一平
未来永劫を約束されたわけではない。
「決まり」を守る長い努力が待っている。それは何事でも同じだ。
今日はOB会。話に花が咲きそうだ。
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