安全問題研究会~鉄道を中心とした公共交通を通じて社会を考える~

公共交通と原発を中心に社会を幅広く考える。連帯を求めて孤立を恐れず、理想に近づくため毎日をより良く生きる。

10月29日、宇都宮ライトレールに乗る

2023-11-05 19:19:51 | 鉄道・公共交通/趣味の話題
10月28~29日の2日間、都内のイベントで「次世代へつなぐ地域の鉄道——国交省検討会提言を批判する」を発売するため上京したのに伴い、8月に開業したばかりの宇都宮ライトレールに乗ってきました。

<写真>芳賀・高根沢工業団地電停にて


28日朝に千歳を発ち、昼前に羽田着。28日夕方5時半から都内で人との約束があるため、正午過ぎの新幹線で宇都宮に行き、往復乗ったらすぐ新幹線で都内に戻るという超駆け足での訪問でした。そもそも宇都宮市自体、新幹線で何度も通過していますが、前回降り立ったのがいつか思い出せないほど久しぶりです。もしかすると、福島勤務時代に車で訪れて以来、10数年ぶりかもしれません。街の印象含め、率直に感じたことを書きます。

<写真>ライトレール乗り場 JR宇都宮駅と直結している


<写真>宇都宮電停から線路を望む


7月に富山市のライトレールに乗った際にも感じましたが、まちづくりと一体化した公共交通という、今後の1つの方向性を示しているのではないかというのが率直な印象です。

「平石」電停から「清陵高校前」電停まで専用軌道区間で、「清陵高校前」から「芳賀・高根沢工業団地」電停(終点)までの区間も道路上を走りますが、道路と線路は区切られています。

<写真>芳賀・高根沢工業団地電停からは横断歩道で直接工場に通じている


富山のライトレールと大きく違うのは、信号のコントロールがライトレール優先であることです。富山は路面電車の前を横切って右折する自動車を含め、通常信号と変わりませんが、宇都宮ライトレールは、道路側の信号を「赤」+「直進・左折矢印」表示にして、ライトレールが走る際に自動車が電車の前を横切って右折できないようにしていること。これによって定時運転を確保していました。

乗っている間、今までの路面電車と「何かが違う」と思っていましたが、専用軌道区間でも、道路との平面交差地点に踏切を置いていません。ライトレールが通るとき、平面交差する車道側の交通信号を赤にする運用になっていました。夜間など、踏切警報音による周辺住民からの苦情をなくせる上、電車の定時運転も確保できる新しい方法です(今の法制度では踏切の新設が認められないという事情もありますが)。

富山も宇都宮も、(私が乗りに行ったのがいずれも休日という点もありますが)乗客にとにかく若者層(運転免許を取れない18歳未満)が多かったことも印象的でした。

2017年に内閣府が行った「公共交通に関する世論調査」で「あなたは、鉄道やバスがもっと利用しやすければ、出かける回数が今より増えると思いますか」という質問に対し、「増えると思う」「少しは増えると思う」と答えた人の比率が、18~29歳までの若年層で最も高かった調査結果と合致しています(リンク先調査の8ページ、問3参照)。

今回、宇都宮ライトレールに特徴的なこととして、小さな子どもを連れた母親が、子どもの分の運賃もまとめて払うのではなく、子ども自身に現金を持たせ、払い方を覚えさせていたことです。親がまとめて払うやり方だと、子どもは親と一緒のときしか公共交通に乗れませんが、自分で払えるようにきちんと教えれば、子どもが自分1人だけでも乗車できるようになります。「次世代の公共交通の担い手」を、みずからの手で積極的に育てていこうという市民意識は、富山よりも宇都宮のほうが強いと感じました。

それはとてもいいことなのですが、気になる点もありました。家族連れが下車する際、大人はICカードで支払っていますが、子どもの分の半額運賃は、現金でしか支払えないことです。これだけ子どもの利用が多いのであれば、子ども用のICカードがあってもよいのでは? と感じました。

運賃箱の上に表示されている運賃が、大人表示のまま子どもに切り替えられないことも気になりました。たとえば150円区間の場合、子どもが現金払いをする際も表示は150円のまま、運転士が目視で80円(端数の5円は切り上げ)の投入を確認していました。

<写真>運賃箱


これだと、大人2人に子ども1人がまとめて下車するような場合、いくら払えばいいのかわからなくなりそうです。子どもが1人でも乗れるように育てようという意識がせっかく市民の側に生まれているのですから、せめて運賃表示が子ども用に切り替えられるよう、早急にシステムを改修すべきだと感じました。

路面を走る大都市中心部と、専用軌道を走る郊外区間を連結するという点では、富山も宇都宮も共通しており、今後のトレンドになりそうです。既存の鉄道でこの形態を取るものとしては、広島電鉄(市内線(路面)と宮島線(専用軌道)の直通)や筑豊電鉄などがありますが、今回、改めてこれらの先進性を感じました。

特に筑豊電鉄は、乗り入れしていた西鉄北九州市内線の路面電車が1992年に廃止されています。こんな時代が来ると思わず、何とか廃止を免れるのが精一杯の状況の中、生きながらえてきたのでしょう。それが、ぐるっと時代が1周し、「都心~郊外直通運転」が脚光を浴びる時代が再び来たのですから、世の中はわからないものです。

宇都宮名物の餃子を食べる暇すらなく、足早に宇都宮を後にしましたが、驚いたのは新幹線「やまびこ・つばさ」のうち「つばさ」編成から自由席がなくなっていたこと。帰宅後に調べたところ、2022年春改正から全車指定席化されていました。「はやぶさ」以外にしばらく乗っていなかったため、今回初めて気づきました。

しかも、行き帰りともに新幹線「やまびこ」指定席が売り切れで、自由席も満席のため、東京~宇都宮の全区間で立ちっぱなしだったことです。新幹線で、往復の全区間座れなかったのは、年末年始以外では初めてのことで驚きました。しかし、福島原発訴訟関係の用事でしばしば東京~福島・仙台間に乗っている妻によると「東北新幹線は最近はいつ乗ってもこんな状況」とのことでさらに驚きました。東北新幹線は需要に供給が追いついておらず、このままの状況が今後も続くのであれば、増結や増発などの抜本的対策が必要だと思います。

〔完乗達成〕宇都宮ライトレール

2023年の完乗達成路線は、7社13線(参考記録を含めると8社14線)。7月に上方修正した今年の目標、15線にあと2線と迫った。ただ、今後は遠征機会もあまりなさそうで、達成は微妙になってきた。

<動画>【祝・開業!】2023.10.28 宇都宮ライトレール 芳賀・高根沢工業団地発車

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