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電力小売自由化始まる~「選択権」行使し、脱原発へ前進しよう

2016-04-25 20:38:58 | 原発問題/一般
(当エントリは、当ブログ管理人が月刊誌「地域と労働運動」2016年5月号に発表した原稿をそのまま掲載しています。)

 4月1日、いよいよ電力の小売り自由化がスタートした。これまで、地域独占・総括原価方式の下で、市民の希望を無視して原発再稼働を強行してきた電力会社の支配体制に風穴を開ける最大のチャンスだが、課題も多い。脱原発社会を実現するため、どのような選択をすればいいのか。

 ●「原発以外」都民7割

 そもそも電気は、どの企業のどのような設備を使って発電しても品質に差がなく、送電線も共有のため、特定の会社の電力だけが送電中に劣化するということもない。そのため価格だけが重視される傾向が強いが本当にそれでいいのか。

 福島原発事故経験後、市民の脱原発の意思は強く、あらゆる世論調査で脱原発に賛成が常に過半数を占める。特に今回、事故を起こした東京電力の営業区域である東京、東電柏崎刈羽原発のある新潟で行われた世論調査では、いずれも7割が脱原発を支持。「原発の電気を使わない」を電力会社の選択基準にするとの回答は「価格」の次に多かった。東京都民に限れば「東電以外への切り替え」を検討する人は6割に上った。

 脱原発を電力会社の選択基準にすることには大義があるが、問題は多くの新電力会社が原発の電気を使用しているか否かを含め、電源構成を開示していないことだ。消費者団体は電源構成の開示を義務化するよう求めたが、原発を維持したい経産省は努力目標にとどめ義務化は行わなかった。

●原発維持のからくり

 今回の自由化は、あくまでも電力の小売り部門に限られ、最も抜本的な改革である発送電分離は行われなかった。送電網を電力会社から分離、電力会社含めすべての発電事業者が使用料を払い、送電網を借りて使用する発送電分離が行われるまでの間は、電力会社が送電網を持ち、新電力は電力会社の送電網を借りて送電する現在の体制が続く。

 電力会社は新電力各社から「託送料」を徴収するが、原発の延命のため、核燃料サイクルや廃炉費用が託送料に上乗せされる可能性もある。託送料には国の規制が設けられる予定だが、過去、同様に規制とされてきた電気料金も電力会社の申請通り認可されてきたことを考えると、「政府―電力結託体制」の下で実効ある規制とはいえない。

 国は、発送電分離が行われ、総括原価方式(電力会社のあらゆる経費を電気代に上乗せできる制度)も廃止となる2020年以降を見据え、原発「救済」策を次々に打ち出している。こうした動向にも関心を持ち、原発救済にノーの声を上げる必要がある。

 ●情報開示と見極めが鍵

 新電力会社のすべてが自分で発電設備を持っているわけではなく、持っている場合でもすべての電力を自家発電の電気でまかなうわけではない。誰かがどこかで発電した電気を転売するだけの新電力会社も多い。

 新電力の「セット料金」の中には一定期間、解約ができないものもある。このため、電力会社を慌てて選ぶのではなく、半年程度じっくり見極めて選ぶ方がいいとアドバイスするのは門間淑子(ひでこ)さんだ。反原発自治体市民連盟エネルギー担当で、東京都羽村市議も務める。電力会社を選ぶ鍵は、電源構成と電力会社との提携の有無を見極めることにあるという。大規模な発電設備を自分で持っている会社ほど電力会社の電気に頼る必要がなく、原発比率も低いからだ。

 現在、九州電力管内を除き原発は停止しているが、再稼働されれば、原発を動かしている電力会社と提携している新電力会社の電気には必ず原発の電気が交じることになる。セット割引を売り出しているソフトバンク、au(KDDI)も電力会社と提携している。

 一方、反原発自治体議員市民連盟が主要37社に対してアンケート調査をした結果、F―POWER、エネット、中央セントラルガス、JX日鉱共石エネルギー、みんな電力、洸陽電機、東急パワーサプライ、シナネンの8社は原発の電気を使わないと回答した。

 これらの中には、電源の一部を市場から調達すると回答した社も含まれる。送電線は電力会社も新電力各社も共有のため、市場からの調達電力には原発の電気が交じる可能性があり、完全な脱原発は容易ではない。だが、再稼働にまい進する電力会社からこれらの会社など新電力に切り替えることで、再稼働ノーの意思を示し、原発比率を下げることができる。

 安倍政権支持者の支持理由1位が「他に選択肢がないから」であることは世論調査ですでに明らかになっている。有権者に「選ばせない」ことで政権に就いている安倍首相が、消費者に「選ばせない」ことで市場を独占している電力会社を利用して、市民の反対する原発再稼働を強行する――日本社会のそんな構造が見え隠れしている。有力な選択肢が提供されれば、電力支配も安倍支配も覆すことができる。情報開示に消極的な新電力会社には情報開示を求め、適切に電力会社を見極める市民が増えるほど、脱原発の実現に近づく。

参考資料:レイバーネットTV第99号「緊急企画「電力自由化」どこを選んだらいいのか?
(以下の動画の、1時間12分頃から)

レイバーネットTV第99号「緊急企画「電力自由化」どこを選んだらいいのか? ゲスト:門間ひで子さん(東京都羽村市議会議員)」

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衆院北海道5区補選の結果について(コメント)

2016-04-25 01:14:02 | その他社会・時事
衆院北海道5区補選の結果について、レイバーネット管理部よりコメントを求められたので、以下の通り書き送った。以下、当ブログにも掲載しておきたいと思う。

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 野党共闘の今後を占う選挙として注目を集めた衆院北海道5区補選は、野党統一候補、池田まき候補(民進、共産、社民、生活推薦)が惜しくも敗れた。選管最終確定結果はまだ出ていないが、この選挙を分析すると、野党共闘の今後の希望も見えてくる。

 そもそも今回の選挙は、自民北海道連の「ドン」であった町村信孝・前衆院議長の死去によるものであった。選挙が行われることはその時点でわかっていたし、自民が町村の娘婿である和田よしあき候補(自民公認、公明、新党大地推薦)を擁立することも初めからわかっていた。

 これに対し、昨年9月の戦争法(安保法)強行成立以降、野党共闘への気運が急速に盛り上がりながらも、実際の共闘態勢はなかなか確立しなかった。野党共闘の枠組みができたのは今年に入ってから、池田候補の擁立決定は2月になってからで、明らかに出遅れていた。

 それにもかかわらず、和田、池田両候補の得票は、率にして10%程度(24日午後11時現在)。昨年4月に行われた北海道知事選の得票は、勝った現職、高橋はるみ知事(自民、公明推薦)が1,496,915票、敗れた佐藤のりゆき候補(民主、社民、大地推薦、共産支援)が1,146,573票。率にして24%という大幅な差があった。

 この知事選は与党対全野党という構図になっていた。地域政党、新党大地が野党から与党サイドに移ったことを除けば今回の補選と極めて似た枠組みで行われており、比較の対象になると思う。そこで、新党大地の「裏切り」、池田候補の擁立の出遅れというマイナス要因があったにもかかわらず、これだけの僅差に持ち込んだことは、敗れたとはいえ、野党共闘の今後に多くの希望をつなぐものといえる。

 投票率は、補選では50%を切ることも珍しくないが、今回は異例の54.99%(午後8時現在)を記録した。昨年の知事選の投票率が59%だったことと比べると、有権者の関心は高かったといえる。現在、様々な投票率アップのための施策が行われているが、「魅力ある候補者がいれば投票率は上がる」ことが証明された形となった。

 今回、選挙が行われた5区のうち千歳、恵庭の両市は航空自衛隊千歳基地などを抱え、住民の3割が自衛隊関係者といわれる厚い保守地盤である。注目すべきは、その千歳市で期日前投票が前回を下回ったことだ。最近の選挙では、期日前投票は本投票の「先行指標」の傾向が強いが、厚い保守地盤があり、かつ基地の町である千歳市で期日前投票率が下がったことは、戦争法成立以降、基地の町で不安が広がっていることを裏付けるものだ。

 加えて、昨年の知事選より5%近く投票率が下がり、かつ保守政党である新党大地が自民支援に「寝返った」にもかかわらず、池田候補が和田候補との得票率の差を半分以下に縮めたことは、前回と比べて保守層、与党支持層の多くが棄権に回った一方、過去数回の選挙ですっかり政治をあきらめていたリベラル層の投票率が前回より上がったことを示唆する結果である。共産党との共闘にアレルギーを示す民進党内の保守勢力がしばしば口にする「共産党との共闘は、得る票より逃げる票の方が多い」という言説が完全に間違っていることを示した。実際には、民進党には逃げるほどの保守票は初めからなく、むしろ同党がリベラル勢力によって支えられていることが明らかになったのである。

 私は、今年3月に発表したレイバーコラム第25回「いま改めて考える打倒自民の可能性」で次のように指摘した。すなわち、「NHK放送文化研究所年報」2015年版に掲載された同研究所世論調査部の河野啓氏による論考「2度の政権交代をもたらした有権者の政治意識」の中で、「日本の政党のあり方」に関する調査結果を見ると、「政策が近い2大政党」「政策に差がある2大政党」のうち、前者が33%(2012年)→29%(2013年)と減少しているのに対し、後者が28%(2010年)→32%(2012年)→34%(2013年)と、緩やかながら着実に増加していることがわかる。2013年にはついに両者が逆転し、「政策に差がある2大政党」を求める有権者のほうが多くなっている。

 こうした調査結果、また今回の補選に現れた民意の細かい分析の結果は、有権者が安倍自民政治に代わる新たなオルタナティブを切実に、かつはっきりと求めていることを示している。今回の池田候補の善戦は、民主党政権崩壊以降、行き場を失ったまま漂流を続けてきたリベラル勢力、安倍政権に強い不満を抱きながらも、どこに投票すべきかわからず、投票所から遠のいてきたリベラル勢力の受け皿として、野党共闘が有力な回答であることを見せつけた。安倍自民は、何とか勝つには勝ったが、この結果にはまったく満足していないだろう。

 野党各党は、今回の選挙結果に一喜一憂することなく、野党共闘を今後とも進めていくことが必要である。今後、十分な準備期間が与えられれば、安倍自民1強を掘り崩す大きな力として、野党共闘は間違いなく機能する。安倍首相の長年の野望であった憲法改悪を阻止し、安倍政権を打倒する可能性が、北の大地から見えてきた。池田候補はあと一歩及ばず敗れたが、私たちに改憲阻止への希望を与える選挙結果だったと言っていい。

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