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絶対に侵害されてはいけない私的な領域を憲法で保障するとのこと

2013-10-21 13:23:33 | 読書ノート
長谷部恭男『比較不能な価値の迷路:リベラル・デモクラシーの憲法理論』東京大学出版会, 2000.

  憲法学の論文集。憲法学といっても日本国憲法の各条を云々するような解釈学的なものではなくて、憲法一般の意義を問う法哲学なもので、純然たる専門書である。ちなみに、著者は本書以降、プロセス的憲法観の立場にたつ松井茂記(参考)と論争している。

  個人的には、以前読んだときもよくわからなかったが、久しぶりに読み返してみてもやはり難しいという印象だった。著者の一般向けの代表作『平和と憲法を問い直す』(参考)で披瀝された考えから類推すると、「切り札としての人権」という線引きで不可侵の領域を作ることで、多数決によっても侵害されない個人の自由を作り出すことが憲法の機能だということになる。その領域は、功利主義的な「公共の福祉」によっても制限されない。結果として、多様な価値観が平和的に共存する社会体制が作られるよう促すという。こうした憲法観を受けた各論が展開されているのが本書ということになるだろう。

  論文の初出当時の議論の文脈がわからないと、面白く読めないような内容である。著者の別の本をあたってみる。
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