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望ましい性格を努力によって身につける

2018-03-21 09:34:01 | 読書ノート
鶴光太郎『性格スキル:人生を決める5つの能力』祥伝社新書, 祥伝社, 2018.

  ビッグファイブを「性格スキル」と捉えてキャリアについて考えるという試み。半分は環境、半分は遺伝で決まるとされるビッグファイブだが、遺伝の面についてはまったく言及しない。五因子のうち有用なものを、環境を整備して努力によって身につけていこうと呼びかける。

  ビッグファイブには「開放性」「真面目さ」「外向性」「協調性」「精神的安定性」の五つの因子がある。米国では「協調性」が低いタイプのほうが所得が高いが、日本ではそれが高いタイプのほうが所得が高い。「外向性」は職種によって影響の出方に違いがあり、管理職や営業職では高いほうがよく、専門職の場合それが低いほうが仕事で成果がでやすいという。最も重要なのは「真面目さ」で、キャリアだけでなく寿命にもプラスに働く。しかも、「真面目さ」は年齢を経るごとに高めることができる。

  ということで、「真面目さ」をいかに培うか、保護者や教師、および読者に効果的な指導法・獲得法を説くことに後半の頁が割かれている。一方で「開放性」は、成人してから高めることが難しく、学齢期に文化芸術に対する感性を磨いておいたほうがよい、とも。また、「協調性」や「真面目さ」を培ううえで、OJTと転勤の多い日本的雇用慣行は役に立っていたのではないか、とも示唆される。

  以上。どちらかと言えば遺伝の影響が強調されてきたビッグファイブだが、本書は後天的に獲得可能であると論陣を張っている。環境の影響はあまり論じられてこなかったきらいがあり、この点が本書のオリジナルなところだろう。性格のプラスの面を後天的に獲得することは大変だろうか?読者は、本書を手にとる時点で十分「真面目」であると考えられる。すでにスクリーニングされているわけで、それを獲得する努力は難しくないだろう。
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