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今や護憲というのは革新ではなく保守である

2010-04-06 09:36:47 | 読書ノート
長谷部恭男『憲法と平和を問いなおす』ちくま新書, 筑摩書房, 2004.

  憲法学者による憲法論。発行当初から評判が高く、その当時に読んだ。当初から違和感があったが、改憲論が後退した現在でもその印象は変わらない。

 「万人の万人対する闘争」というホッブズ問題を調整するために憲法が必要だという主張は分かる。だが「昔の人」の決めた法を「現在の人」が変えてはいけない理由はなんだろうか? 本書で使われているそのロジックは次のようなものだ。

“憲法が扱うさまざまな線のなかに、自然な線などどこにもない(中略)。「自然」な線ではないからこそ、いったん後退を始めると、踏みとどまるべきところはどこにもない”(p.180)

  ようは規範が崩れ過ぎることへの懸念である。しかし、問題があれば再度制定し直せば良いし、諸外国はそのような考えから憲法改正を重ねている。また、憲法を制定した当時の人の判断が、今現在の社会に合っているという保証もない。上の引用のようなロジックは、憲法改正を絶対的に禁ずる理由として弱い。

 「無根拠で不合理な面があるかもしれないが、これまで守られてきた伝統や慣習は今後も守られるべきである」。このような思考は、もはや保守主義である。これが現代日本で評判の高い護憲論かと思うと、時代の変化を感じてしまう。
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