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大学の受験科目に数学を必ず課すべきとはいうもののしかし...

2024-08-05 21:30:05 | 読書ノート
西村和雄 , 八木匡編著『学力と幸福の経済学』日経BP/日本経済新聞出版, 2024.

  教育経済学。回帰分析なども出てくる論文集であり、一般読者にとって読みやすいとは言い難い。けれども、得られる知見は有益であり、手っ取り早く結論部分だけ読むというのはありかもしれない。なお、編著者の西村和雄は数理経済学を専門とするが、かつてセンセーションを巻き起こした『分数ができない大学生』(東洋経済新報, 1999)の著者の一人である。

  冒頭の論文の初出は1999年で、それから2024年発表に至るまでの四半世紀に及ぶ論文が14本(=14章+終章)続く。いずれの章も教育・育児についてデータ分析を施している。最初の1~3章は1990年代のゆとり教育批判であり、当時の大学生の学力低下が懸念されている。続く4章~8章が本書の中核部分で「文系より理系のほうが所得が多い、数学を受験科目として大学入学した者がそうでない者より社会に出てからの給与も高い、それゆえ数学教育を重視せよ」と説く。9章~12章は家庭教育の話で、しつけのスタイル──支援型、厳格型、迎合型、放任型、虐待型──によって幸福感や倫理感が変わってくるとする。最後の13~14章は個人の行動スタイルや思考タイプについて分類している。

  以上。数学が重要でかつ支援型家庭教育が望ましいという主張については納得できるものだ。問題は、そのためのコストに社会や家庭が耐えられないかもしれないという点である。少子化の中、ゆとり教育以前のようにあれこれ厳しくするというのも難しいことだろう。受験教育を通じて数学力を高めるという以外の方法を考えてみてもいいかもしれない、と簡単に言ってみるものの、アイデアがあるわけではない。
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