29Lib 分館

図書館・情報学関連の雑記、読書ノート、音楽ノート、日常生活の愚痴など。

シンセを使ったミニマル風の二曲は名曲

2011-07-27 10:31:48 | 音盤ノート
Azimuth "Azimuth" ECM, 1977.

  アンビエントかつミニマルにジャズの要素少々。アジマスは、英国人ピアニストJohn Taylorと、ヴォーカリストのNorma Winstoneの二人のユニットとして当初結成されたが、ECMのプロデューサーであるアイヒャーの勧めに従って、トランぺッターのKenny Wheelerを加えた三人組みで活動するようになった。このアルバムはその第一作。CDは二作目"The Touchstone"と三作目"Depart"がカップリングされた三枚組でのみ発行されている。

  全てテイラーの作曲。1曲目の"Siren's Song"は、ピアノとトランペットとウィスパー気味の女性スキャットの合奏がループする中、テイラーがソロを聴かせる美しい曲。2曲目"O"と6曲目"Jacob"は静かな普通のジャズでそれほど面白くない。5曲目"Greek Triangle"はトランペットの多重録音による小品。

  特筆すべきは、シンサイザーを用いた3曲目と4曲目。3曲目の"Azimuth"は、細かい電子音が反復する上に女声スキャットとトランペットが即興を加えるという曲で、1970年前後のTerry Riley作品のような瞑想的な感覚が味わえる。4曲目の"The Tunnel"は、耽美的なピアノで始まってすぐにダークな電子音が現れ、それがフレーズを循環的させながらも少しずつ位相を変えて歪んでゆくという曲。こちらではウィンストンが普通に歌い始め、途中から細い声でスキャットをする。内面に入り込んでくるような深みを感じさせる。

  同じメンバーでこの他に四枚の録音があるが、この第一作にあったようなシンセサイザー曲は一掃されてしまう。確かに一作目のコンセプトではウィーラーの演奏は活きておらず、二人だけでも十分だった。しかし、ウィーラーを活かそうとしてメロディアスになったその後は、普通のECM的静穏ジャズの範疇のグループになったように思える。音楽的には悪くはないのだが、このアルバムにあった大きな可能性を摘んでしまった。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 実験の設計は本当に見事 | トップ | アマゾンは普通の書店と同じ... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

音盤ノート」カテゴリの最新記事