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★★★★’~★★★★:75~80点
深川の駕篭かき・新太郎と尚平を取り巻く人情物語。
トータルでは、ひとつ前に読んだ「はぐれ牡丹」よりも若干上の評価をしました。
一力さんは私にとって殿堂入り作家の一人です。大好きな作家ですが、”殿堂入り”レベルだけに最近は評価基準も少~し厳しめに設定しています。
全7編中では、二人がふと立ち寄った飯屋で”おゆき”という魅力的な女性が登場する「今戸のお軽」がベスト。
そして、深川の駕籠かき・新太郎、千住の駕籠かき(永遠のライバルですが、ナイスガイ)・寅、鳶の源次、飛脚の勘助、4人の足自慢が意地と誇りをかけた駆けくらべをする「紅白餅(めおともち)」が次点でしょうか。
「紅白餅」は題材としては非常に面白かったのですが、ランナーの私としては”走り”についてもう少し熱く激しく深く描いてほしかったところです。
おゆき。
彼女が出てきて物語が急に明るくなった気がしました。
彼女が営む(?)飯屋で出された料理(と言っても粗末なものなのですが・・・)の描写が、おゆきの人柄・話し方とも相まって非常に印象的でした。
「煮豆に糠漬けと味噌汁で、ひとり三十文だけどいいですか?」
「井戸が自慢なんです。もう一杯注ぎましょうか」
「山椒を少し散らしていただくと、香りが立っておいしいですから」
「ありがとうございます。その糠漬けも評判がいいんですよ」
心のこもった料理、もてなしということが良く分かります。
新太郎じゃないのですが、私も僅か2ページだけでおゆきに惚れやした。
一力さんの作品は、直木賞受賞作「あかね空」での豆腐をはじめとして、料理・食べ物・食事などの描写が生き生きとしていて素晴らしいですね。
てっきり物語の最後には○○とおゆきが結ばれることになるのでは?
と予想していたら・・・おゆきが選んだのは◎◎でした。
○○が可哀想。
やはり「今戸のお軽」で出てきたのですが、駕籠で速く走るには、客の乗り方も関係するというのが興味深かったです。
娘が世話になった芳三郎は客を装って二人の駕籠に乗り、思いっきり飛ばさせる。
かき手と客の息が合わされば、駕籠は幾らでも早駆けできる。
この朝の客は、乗り方が見事だった。
揺れに合わせて身体を動かし、かき手の足を邪魔しない。
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「たいした走りだ、感心したよ」
「お客さんもてえしたもんだ。久々に気持ちよく担がせてもれえやした」
ここも良いシーンでした。
色々と書き出してみると、素晴らしいシーンが結構たくさんありますね。
80点でも良かったかな?