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ひろの東本西走!?

読書、音楽、映画、建築、まち歩き、ランニング、山歩き、サッカー、グルメ? など好きなことがいっぱい!

映画「バッテリー」

2007-04-21 23:30:00 | 10:あ行の作家

Batterimovie1

映画「バッテリー」
★★★★☆’:85点(~90点)

アイリスさんが感想を書かれていた映画「バッテリー」、遅ればせながら観てきました。あさのあつこさんの原作はずっと以前に1~6を読了していましたが(例えば6の感想はこちら)、あの原作を映画に、しかも実写版で映画化するとは!
たぶん読者のそれぞれの頭の中には、原作に登場した愛すべき人物たちのイメージが強烈に焼き付いているであろうことから、ことに実写版は難しかったと思います(私、コミックス版は表紙以外見ていません)。しかし、予想を上回る素晴らしい映画でした。青春映画の傑作といって良いでしょう。映画を見終わっての印象は、愛媛の高校の女子ボート部の青春群像を描いた秀作「がんばっていきまっしょい」とも似ていました。草の匂いと風、日射しと汗、その一方で朝や日暮れの涼やかさを感じさせる映画とも言えます。

原田巧役の林遣都クン。映画ポスターの写真を見たときは綺麗な顔立ち過ぎて原作のイメージとちと違うと感じたのですが、いやいや良かったです。映画をじっくり見てみれば、佐藤真紀子さんの表紙画・挿し絵の雰囲気(細身ながらも強気で剛球を投げる孤高の天才投手)ともかなりマッチしていました。永倉豪役の山田健太クンは、現役キャッチャーでもあったそうですし、体型などもまさにドンピシャ。巧や青波に投げかける笑顔が素晴らしい。原作でもそうでしたが、悩める豪ちゃんの顔なんか見たくないですね。青波役の鎗田晟裕クン。可愛らしいだけの子ならもっと適役の子が劇団などにもいると思いますが、トータルで素晴らしい演技でした。はじめての野球で外野フライをとったときの喜びようが最高でした。「お兄ちゃん・・・」「豪ちゃん!」「あのな・・・」という青波の呼びかけには思わず耳を傾けちゃいますよね。 そうそう、巧が自転車の後ろに青波を乗せて坂を下ってくるシーンは良かったなあ。

映画では、日々成長しつつある天才ピッチャー原田巧の孤独・自信・強気・生意気さ・苛立ち・焦り・不安・・・が丁寧に描写されていました。そして、お互いに不器用な家族愛も(父親役の岸谷五朗さん、ウマイ!)。あの原作を約2時間におさめたため、エピソードによってはやや描き足りないという欠点はありますが(展西の屈折した思いもやや不十分か)、ここまで原作の雰囲気をスクリーンに表現したことに敬意を表します。

そして、岡山の山間の景色が実に美しかったです。草ぼうぼうの荒れたグラウンド(広場?)や単なる川の流れまでもが素晴らしい。サワの家にある大きな木は感動的なほどに凄かった・・・。こんなに美しい自然に囲まれて育つ子供達はええなあ。。。都会っ子の勝手な憧れかもしれませんけれど。

巧の自主トレのランニング・シーンが何度も出てきますが、上半身のフォームにやや硬さを感じさせるものの、ストライドの大きい力感あふれる素晴らしい走りでした。ピッチャーは走らなきゃね。神社の急な階段を駆けあがる姿に、うーん、やっぱり若いって素晴らしいなあと脱帽。

俳優さんで一番オオーッと思ったのは、オトムライ(戸村監督)の萩原聖人さん。独裁者的でちょっと○ーさんっぽさを漂わせたムード、そしてダイヤモンドの原石を見つけた驚きととまどいが絶妙。サワ(沢口)役の子は芸歴豊富なようで名演技でした。ヒガシ(東谷)はちょっと見せ場が少なかったかな?門脇・瑞垣の横手二中コンビはとても中3には見えなかった・・・。原作では次第に存在感を増す瑞垣俊二ですが、この映画ではそこまでのキャラ発揮に至らず。ただし、雰囲気的にはいい線をいっていたと思います。”お電話大好き”で野球に愛された男・海音寺キャプテンも目立たなかったのが残念でした。母親役の天海祐希さん。最初、ちょっと美しすぎると思いましたが、巧が結構美形なので、やっぱり母親はこれくらい綺麗でないとおかしいですね。父親は岸谷五朗さんやしー。

巧の投球シーンなど、部分的にCGが使われていたようですが、野球をやっていたという林クンの本当の実力はどれくらいだったのでしょうね。フォームはなかなか本格的でした。


ラスト・イニング(あさのあつこ)

2007-03-11 22:50:00 | 10:あ行の作家

Lastinning ラスト・イニング(角川グループパブリッシング)
★★★★☆’:85点

かの名作「バッテリー」(1~6 ※その中でも特に6)の番外編、あるいは、「もうひとつのバッテリー」とも言える作品です。

ラストシーンが印象的だった「バッテリー6」。新田東中vs横手二中、海音寺と瑞垣が実現させた試合の結果は一体どうなったのか。巧と門脇の対決は・・・。みんなが息を呑んだあの門脇のスイングは・・・。彼らはその後どうなったのか・・・。読者に色んなことを想像させながら大団円を迎えた物語が瑞垣の目を通して再び描かれる。

もし、あさのあつこさんが今後「バッテリー」の続編を書かれないとしたら(たぶん続編はありえないと思いますが)、「バッテリー」について語るにはこのような異なった視点での描き方しかないのかもしれませんね。知りたかったことの全てが語り尽くされた訳ではありませんが、素晴らしい作品になったと思います。こうなると、サワ(沢口)やヒガシ(東谷)から見た巧や豪のその後なんてのも読みたくなってきますね。

いずれにしても「バッテリー」に夢中になった読者としては、原田巧、永倉豪、瑞垣俊二、門脇秀吾、海音寺一希といった懐かしい名前が出てくるだけで、”ああ、バッテリーの世界や!”と嬉しくなると共に感慨にふけってしまうこと間違いなし。また、本作では瑞垣の妹・香夏(かな)も重要な役割を演じています。可愛らしさの中のドキッとする成長ぶりにさすがの瑞垣も守勢一方。そこにとある人物がからんできて思わずニヤリ。横手の新バッテリー、ぽわーんとして明るい萩と瑞垣の秘蔵っ子で(?)真面目な城野もいい組み合わせです。

バッテリー・個人賞選定で私が助演男優賞を贈呈した瑞垣俊二(次点は僅差で海音寺一希)がこの作品の主人公です。バッテリー5の感想では、「瑞垣の生き方もしんどいやろなあ」と書いたのですが、この本では瑞垣の生き方の苦しさが一段とよく描かれていました。

そして、門脇でも海音寺でもなく、むろん唐木や池辺でもなく意外な人物が瑞垣の心の内(本人も気づかないまま心の奥底に潜んでいた思い)を一番理解していた驚き・・・。瑞垣は新たな一歩を踏み出すことができるのか。自分で作ってしまった壁を超えることができるのか。

巧や豪が出てくるシーンは少ないのですが、彼らが門脇や瑞垣や海音寺、そして横手ナインや監督に与えた衝撃と影響の大きさ・もの凄さが間接的に描かれます。この描き方が見事。

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出版社/著者からの内容紹介
大人気小説「バッテリー」。あの伝説の試合がここに──!!
全国劇場公開される人気小説「バッテリー」。その中でも屈指の人気キャラクター・瑞垣の目を通して語られる、巧、豪、門脇らのその後とは──。ファン待望の小説がついに登場!!

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◎参考ブログ:

   やまわきさんの”いろいろ感想文”(2007-3-30追加)


図書館戦争(有川浩)

2007-02-07 23:00:00 | 10:あ行の作家

Toshokan1 図書館戦争(メディアワークス)
★★★☆:70点

うーーーん、評価は微妙です。もっと面白いかと期待していたのですが・・・。
いえ、着想は悪くないし、キャラも絶妙で(まあ類型的ではありますけれど)笑える箇所もたくさんあるのですが、メディア良化法、良化特務機関、図書隊・図書特殊部隊といったメインの設定と話の展開に、なーんかピンとこない&しっくりこないなあと違和感を覚え、それが最後までつきまとってしまいました。

本を愛する気持ちも当然描かれているのですが、本・書物をめぐる闘いというと、ずーーーっと昔にTVで観た映画「華氏451」(原作はレイ・ブラッドベリの「華氏451度」)の設定に驚嘆した記憶があるので、それと比較して中途半端に思えたのかもしれません。
シリアスな作品とライト感覚で軽妙な作品(本書)を同列で比較するのはおかしいのですが、「華氏451」は数十年経っても記憶に残っているのでね。

笠原郁と上司・堂上の関係(似たもの同士の恋(?)、お互いに気になる感じ)はよく描けており、ルームメイト・柴崎の情報屋ぶりも見事。”見はからい図書宣言”などは面白かったです。

第2弾の「図書館内乱」が似たようなテイストだとすると、私は読まないかもです。これは単純に好みの問題ですけれど。

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出版社 / 著者からの内容紹介
───公序良俗を乱し人権を侵害する表現を取り締まる法律として『メディア良化法』が成立・施行された現代。超法規的検閲に対抗するため、立てよ図書館!狩られる本を、明日を守れ!
敵は合法国家機関。相手にとって不足なし。正義の味方、図書館を駆ける!

 笠原郁、熱血バカ。
 堂上篤、怒れるチビ。
 小牧幹久、笑う正論。
 手塚光、頑な少年。
 柴崎麻子、情報屋。
 玄田竜介、喧嘩屋中年。

この六名が戦う『図書館戦争』、近日開戦!


お腹召しませ(浅田次郎)

2007-01-16 21:38:00 | 10:あ行の作家

Ohara1 お腹召しませ(中央公論新社)
★★★☆’:65点

予備知識一切なしで読んだので、短編集だと分かってちょっと驚きました。本作で、ひょっとして浅田次郎氏が宮部みゆき氏や横山秀夫氏を振り切っての”殿堂入り”もあるかと思っていたこともあり、期待度対比でやや低めの採点となりました。

”現在”の語りの部分は氏の作品で時々みられるのですが、本作ではあまり効果的とは思わず。

全6編の中では表題作の「お腹召しませ」と「女敵討(めがたきうち)」がベストで、この2編は75~80点クラスでしょうか。
娘婿が引き起こした不祥事。妻と娘の冷たい言葉。自分は納得できないままに腹を斬ることができるのか(「お腹召しませ」)。国元に残した妻の不貞(実は自分も江戸で妾に子供を産ませているのだが・・・)。ずっと愛していたとは言い切れないが、大事に想ったこともある妻を斬ることができるのか(「女敵討ち」)。主人公の苦悩を描く2つの話は、やや似通ったところがあります。

「お腹召しませ」は、切腹やむなしの事態に陥った主人公に対する妻と娘の冷たさが面白かったです。

玉を磨くがごとく育てた、美しい一人娘に
「お祖父様の享年は越しておいでです。・・・むしろ死に処を得たと申せましょう」
と言われ、二十五年連れ添った妻からも
「叶うことならわたくしもお伴つかまつりとう存じますが、菊ひとりでは勇太郎の養育もままなりますまい。おひとりでお淋しゅうござりましょうが、お腹召しませ」
と見離される。更に娘からとどめのひとこと。
「さようなさりませ、お父上。・・・ご安心下さい。お腹召しませ、父上」

屋敷ではさっさと奥の間で切腹のためのしつらえがなされ、浅黄色の肩衣までが揃えられて妻子の手でたちまち死装束に着替えさせられる。遺書の文言にまで細かく妻からの注文がつき、更には切先が通りやすいように茶漬けを食べろとか、血の出をよくするために酒を一合飲めとか言われたい放題のた主人公。ここまでくると悲喜劇です。

一方、若旦那にくっついて実家から来た中間が良い。
お家断絶の危機を作り出した娘婿に対する義父(主人公)の想いも良い。
そんな娘婿との束の間の別れ。

「与十を、頼んだぞ。ばかな倅だがの、添いとげてくれよ」
   :
「与十やあい、与十やあい」

「女敵討ち」は、検分を務めた目付役・稲川左近が良い。

人の命と家の命のどちらが重いのか?
2話で、主人公がとった行動は?
最後に一筋の光明が。

******************** Amazonより ********************

出版社 / 著者からの内容紹介
昔のおさむれえってのは、それほど潔いもんじゃあなかった?二百六十余年の太平の後に、武士の本義が薄れた幕末から維新へ。惑いながらもおのれを貫いた男たちの物語。名手が描く全六篇。

内容(「BOOK」データベースより)
入婿が藩の公金に手を付けた上、新吉原の女郎を身請けして逐電。お家を保つために御留守居役が出した名案は「腹を切れ」。妻にも娘にも「お腹召しませ」とせっつかれ、あとにひけなくなった又兵衛は(表題作)―二百六十余年の太平で、武士の本義が薄れてきた幕末から維新にかけてを舞台に、名手が描く侍たちの物語。全六篇。


砂漠(伊坂幸太郎)

2006-08-29 21:30:00 | 10:あ行の作家

Sabaku1_1 砂漠(実業之日本社)
★★★★’:75点

伊坂幸太郎さんの作品を読んだのは初めてでした。
世評では失敗作と言われたり、この作品では直木賞は獲れないといったような書かれ方が多かったと思いますが、読み終えてみるとなかなか面白かったです。

クラブやサークルには入らず、そこそこ一生懸命勉強し、学業に差し支えない程度にバイトし、時々合コンして酒を飲み、麻雀卓を囲む国立大学の学生男女5人組(北村、鳥井、西嶋、南、東堂)。
最初は、他愛のないつまらない会話が続くなあと思っていましたが、5人の性格や考え方などが次第に鮮明になり、各々の存在感が出てきたあたりから面白くなりました。

とある大きな事件が起こり、みんな傷つき、悩み、やがてまた元気になって人間として成長していく姿が丁寧に描かれ、私の採点も55点→60点→70点→75点と、次第にアップしていきました。

とくに、自分の一風変わった主義主張に熱心で他人と合わせたりすることに汲々したりしない信念&孤高の人(? と書くとカッコイイのですが、通常は”変わったヤツ”と思われてしまう)西嶋と滅多に笑わない美女・東堂のカップルが非常に印象的。後半の彼らの会話・行動が得点アップに大きく寄与しました。娘とは違ってとても明るい東堂の母も面白い。自信なさげな南の超能力も very good.南の想いになかなか気付かなかった鳥井のおかしさ。その鳥井が受けた衝撃・悲しみとそこからのカムバック----優しく支えた南たちの存在。いい味わいでした。

最初、春夏秋冬で1年間の物語なんだなと思って読んでいたら、4年間の話だったんですね。どうりで将来に対する不安などの会話も多かったし、寂寥感もあったはずです。

この本で言いたいことは、終盤に出てくる以下の会話・シーンかな?

東堂
  「うん、西嶋も言ってた。北村と北村の彼女が選んでくれたんですよって、
   ずっと言ってた。友達に選んでもらったんですから、って。誇らしげだった」
  「俺は恵まれないことには慣れてますけどね。大学に入って、友達に
     恵まれましたよって、西嶋はずっと言ってた」

卒業式での学長の言葉
  「人間にとって最大の贅沢とは、人間関係における贅沢のことである」
    これは、サン=テグジュペリの本に出てくる言葉らしいですが、重みが
   ありました。

このテーマ自体は珍しいものでも何でもありませんが、彼ら5人(+鳩麦さん)によってそれが生き生きと、また時にはしんみりとよく描かれていたと思います。一見平凡だけれども鮮やかな青春群像だと思いました。

******************* Amazonより *******************

内容(「BOOK」データベースより)
「大学の一年間なんてあっという間だ」入学、一人暮らし、新しい友人、麻雀、合コン…。学生生活を楽しむ五人の大学生が、社会という“砂漠”に囲まれた“オアシス”で超能力に遭遇し、不穏な犯罪者に翻弄され、まばたきする間に過ぎゆく日々を送っていく。パワーみなぎる、誰も知らない青春小説。

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参考ブログ:

 ざれこさんの”本を読む女。改訂版”
 そらさんの”日だまりで読書”