映画「バッテリー」
★★★★☆’:85点(~90点)
アイリスさんが感想を書かれていた映画「バッテリー」、遅ればせながら観てきました。あさのあつこさんの原作はずっと以前に1~6を読了していましたが(例えば6の感想はこちら)、あの原作を映画に、しかも実写版で映画化するとは!
たぶん読者のそれぞれの頭の中には、原作に登場した愛すべき人物たちのイメージが強烈に焼き付いているであろうことから、ことに実写版は難しかったと思います(私、コミックス版は表紙以外見ていません)。しかし、予想を上回る素晴らしい映画でした。青春映画の傑作といって良いでしょう。映画を見終わっての印象は、愛媛の高校の女子ボート部の青春群像を描いた秀作「がんばっていきまっしょい」とも似ていました。草の匂いと風、日射しと汗、その一方で朝や日暮れの涼やかさを感じさせる映画とも言えます。
原田巧役の林遣都クン。映画ポスターの写真を見たときは綺麗な顔立ち過ぎて原作のイメージとちと違うと感じたのですが、いやいや良かったです。映画をじっくり見てみれば、佐藤真紀子さんの表紙画・挿し絵の雰囲気(細身ながらも強気で剛球を投げる孤高の天才投手)ともかなりマッチしていました。永倉豪役の山田健太クンは、現役キャッチャーでもあったそうですし、体型などもまさにドンピシャ。巧や青波に投げかける笑顔が素晴らしい。原作でもそうでしたが、悩める豪ちゃんの顔なんか見たくないですね。青波役の鎗田晟裕クン。可愛らしいだけの子ならもっと適役の子が劇団などにもいると思いますが、トータルで素晴らしい演技でした。はじめての野球で外野フライをとったときの喜びようが最高でした。「お兄ちゃん・・・」「豪ちゃん!」「あのな・・・」という青波の呼びかけには思わず耳を傾けちゃいますよね。 そうそう、巧が自転車の後ろに青波を乗せて坂を下ってくるシーンは良かったなあ。
映画では、日々成長しつつある天才ピッチャー原田巧の孤独・自信・強気・生意気さ・苛立ち・焦り・不安・・・が丁寧に描写されていました。そして、お互いに不器用な家族愛も(父親役の岸谷五朗さん、ウマイ!)。あの原作を約2時間におさめたため、エピソードによってはやや描き足りないという欠点はありますが(展西の屈折した思いもやや不十分か)、ここまで原作の雰囲気をスクリーンに表現したことに敬意を表します。
そして、岡山の山間の景色が実に美しかったです。草ぼうぼうの荒れたグラウンド(広場?)や単なる川の流れまでもが素晴らしい。サワの家にある大きな木は感動的なほどに凄かった・・・。こんなに美しい自然に囲まれて育つ子供達はええなあ。。。都会っ子の勝手な憧れかもしれませんけれど。
巧の自主トレのランニング・シーンが何度も出てきますが、上半身のフォームにやや硬さを感じさせるものの、ストライドの大きい力感あふれる素晴らしい走りでした。ピッチャーは走らなきゃね。神社の急な階段を駆けあがる姿に、うーん、やっぱり若いって素晴らしいなあと脱帽。
俳優さんで一番オオーッと思ったのは、オトムライ(戸村監督)の萩原聖人さん。独裁者的でちょっと○ーさんっぽさを漂わせたムード、そしてダイヤモンドの原石を見つけた驚きととまどいが絶妙。サワ(沢口)役の子は芸歴豊富なようで名演技でした。ヒガシ(東谷)はちょっと見せ場が少なかったかな?門脇・瑞垣の横手二中コンビはとても中3には見えなかった・・・。原作では次第に存在感を増す瑞垣俊二ですが、この映画ではそこまでのキャラ発揮に至らず。ただし、雰囲気的にはいい線をいっていたと思います。”お電話大好き”で野球に愛された男・海音寺キャプテンも目立たなかったのが残念でした。母親役の天海祐希さん。最初、ちょっと美しすぎると思いましたが、巧が結構美形なので、やっぱり母親はこれくらい綺麗でないとおかしいですね。父親は岸谷五朗さんやしー。
巧の投球シーンなど、部分的にCGが使われていたようですが、野球をやっていたという林クンの本当の実力はどれくらいだったのでしょうね。フォームはなかなか本格的でした。