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ひろの東本西走!?

読書、音楽、映画、建築、まち歩き、ランニング、山歩き、サッカー、グルメ? など好きなことがいっぱい!

99%の誘拐(岡嶋二人)

2007-10-10 22:49:14 | 10:あ行の作家

99okajima1 99%の誘拐(講談社文庫)
★★★★’:75点

うーん・・・。面白かったのですが、終盤が意外に盛り上がらず。感想は参考ブログに掲げた”そらさん”とほぼ同じで、ライト感覚の誘拐・ハイテク犯罪小説といったところでしょうか。全体的に淡泊な感じで、それ自体は悪くないのですが、犯罪小説(?)としては緊迫感といった点で惜しいなと思いました。

20年前の誘拐事件の被害者・生駒慎吾。慎吾の父・洋一郎と共に身代金として5000万円分の金の延べ棒運搬を手伝った当時の部下の間宮不二夫と鷲尾。20年前、合併話を申し入れてきたリカード・カメラ。5000万円は洋一郎がリカードの力を借りずにもう一度イコマ電子工業を立て直そうとしてかき集めたお金だった。次から次へと指示を出す犯人に振り回される洋一郎たちと警察。そして、5000万円分の金の延べ棒は・・・。

このあたりは黒澤映画の傑作「天国と地獄」のような雰囲気を醸し出して非常に良いと感じたのですが・・・惜しいなあ。
※最近TVドラマで「天国と地獄」の「生きる」がリメイクされました。
  私は後者しか見ませんでしたが、黒澤作品とは似て非なるものでしたね。

コンピュータ技術を駆使したハイテク誘拐劇で発表当時(1988年)は斬新だったと思いますが、今日ではかなり陳腐化したもののように思えてしまいました。パソコン技術等の進化の速さゆえ仕方ないのですが、それを割引いても私は「クラインの壺」の方が面白かったような気がします。

◎参考ブログ

   そらさんの”日だまりで読書”
   たこやきさんの”たこの感想文”

************************** Amazonより **************************

緊迫度MAXIMUM(マキシマム)!空前絶後の完全犯罪
末期ガンに冒された男が、病床で綴った手記を遺して生涯を終えた。そこには8年前、息子をさらわれた時の記憶が書かれていた。そして12年後、かつての事件に端を発する新たな誘拐が行われる。その犯行はコンピュータによって制御され、前代未聞の完全犯罪が幕を開ける。第10回吉川英治文学新人賞受賞作!


四角な船(井上靖)

2007-08-31 00:05:00 | 10:あ行の作家

四角な船(新潮文庫)
★★★☆:70点

新聞記者の丸子が同窓会でふと耳にした面白い話とは、人類絶滅の大洪水を信じ、それを救済すべくハコ船を造っている人物が琵琶湖畔にいるという奇想天外なものだった。

井上靖の小説を読んだのは何十年ぶりでしょうか。私にとって井上靖は新田次郎、北杜夫と共に(旧)御三家の一人でしたが、好んで読んだのは中国を題材にした歴史小説(「敦煌」「天平の甍」)や「しろばんば」などの少年を主人公とした作品で、現代小説は殆ど読んだ記憶がありません。

この作品はラストがちょっとピンとこなかったものの、不思議な味わいがありました。人類を救う船。それを考えるのが多少風変わりな人(精神に変調をきたしているかもしれない人)といった点で森絵都の「つきのふね」とちょっと似ているかとも思ったのですが、全編を通じての味わいは全く異なっていました。

メソポタミア、ティグリス、ユーフラテス・・・洪水伝説と関係のある地域をさまよい歩いたという謎の人物・甍(いらか)。牛、鶏、鳥も集めていた彼は最後はアフガニスタンの山中で吹雪にまかれて・・・。

実は船を造ろうとしている甍が出てくるのは僅か2シーン、10数ページだけというのもユニーク。甍を追って琵琶湖、佐渡、東京と飛び歩く丸子によって、甍がなそうとしていることがおぼろげに分かってくるが、遂に甍の本当の心のうちは分からずじまいだった。

甍に出会った人間の多くはその不思議な魅力に引き込まれ、あんないい人はいないと口をそろえる。甍が変なのか、彼を理解できない人が変なのか、次第にそれが分からなくなってくる面白さ。甍からカメオを渡された人々。佐渡の海辺で1日中ひなたぼっこをしながら網をつくろっている盲目のお婆ちゃん。動物園で長年虎の飼育係をしている寺さん。捨て子を拾って(貰って)育てている若い母・七条みやこ。既にカメオは7人に渡されたらしいが、甍の人を見る目はしっかりとしている。そのことに確信を深める丸子。残りの4人がどんな人物か興味深かったのですが・・・。

カメオに入っていた紙に書かれていた謎の文字。それは古代アッカド文字で書かれた「汝、船に乗れ」という言葉だった!彼は本気だ。これが分かった瞬間のゾクゾク感は最高でした。

「夏の庭」でも素敵なお婆ちゃんが登場したのですが、佐渡のお婆ちゃんが実に素晴らしい。何が素晴らしいのかうまく表現できないのですが、丸子の言葉を借りると、

   生まれつきの盲目であるにも拘わらず、何と美しく生きてきたことか。
   誰を恨むでもなく、誰を羨むでもなく、己が運命を素直に受け取って、
   長い人生を生きてきたのである。もしそうでなかったら、こんな美しい
   笑顔はできあがらなかったに違いない。こんな美しい笑いを笑うことは
   できなかったはずだ。えらいものである。甍でなくても、えらいと言う以外
   仕方ないだろう。

そして、甍家と古い頃からつき合いのある船大工の堪左。甍からハコ船の建造を依頼さ
れ、最初は半信半疑だったが、次第にハコ船造りにのめり込んでいく。

   わしはな、丸子さん、いいものは、みんないい形しとると思っとる。
   鉋(かんな)でも、よくきれる使いいいものは、どれもいい形しとる。
   家でも同じや。船でもそや。沈まん頑丈堅固な船は、みんないい姿
   しとる。わしの造る船もいい姿しとるぞ。

ものづくりをする人間、職人・技術者としての言葉が良い。

*********************** 文庫本裏カバーより ***********************

人類絶滅の大洪水が襲来する日、ハコ船によって、救い出されるのは誰か?大洪水を信じ、琵琶湖の畔で、密かにハコ船の建造を開始したひとりの男がいる。深い学識の持ち主で、山中の旧い館に住む彼は、心を許す船大工に設計建造をまかせ、自分はその船に乗るべき人を捜す旅に出る・・・。
奇妙な人物をめぐるユーモラスな物語のなかに、現代社会への鋭い諷刺をこめた長
編。


獣の奏者・王獣編(上橋菜穂子)

2007-08-23 23:25:09 | 10:あ行の作家

Souja2_1 獣の奏者・王獣編(講談社)
★★★★’:75点

闘蛇編を読み終えたときに、”王獣編への期待絶大”としたのですが、その点ではちょっと物足りなかったです。残りページ数が少なくなってきて、果たしてきちんと終わるのか多少心配しながら読んだのですが・・・。最後にリランがとった行動はとても感動的だったのですが、物語は終盤に向かうに連れて次第に駆け足になり、ラストは唐突に終わった感じが否めません。

かつて王国で何が起こったのか、王獣規範が定められた理由、野生の王獣と飼育された王獣の違いなど最大の謎に対する答えは終盤、きちんと示されたのですが、物語としてはやや深みに欠けたような気がします。

題材・素材、着想は素晴らしかっただけに惜しいなあというのが正直な感想です。当初から闘蛇編と王獣編で終わる予定だったのでしょうか。更に続編はないのでしょうか。続編を念頭に置いて書く場合と、いったん終わりとした作品の続きを改めて書く場合では、全く異なるとは思いますが。

闘蛇編と合わせた総合評価は80点かなあ。
王獣編では王獣保護場のシーンが多く、エリンと身も心も傷ついていた幼い王獣・リランとの心のふれ合い、音による会話、初めての飛翔などのシーンは非常に素晴らしく興味深かったのですが、闘蛇編に見られた緊迫感・謎めいた雰囲気が薄れてしまったのは残念な気もしました。私としては、波瀾万丈の異世界ファンタジー、壮大な冒険ファンタジーを期待しており、描き方によってはもっと奥深く壮大な物語になったのではとも思うのですが、上橋さんが描こうとされたものはちょっと違うのでしょうね。ただ、闘蛇編でのエリンとジョウンが暮らすほのぼのシーンは私も大好きでした。

エリンの優しく純粋で、愚直で不器用だけれど正義感に満ちた考え方・生き方は良かったです。孤独感(他方で家族的なものへの憧れ)・焦燥感、王獣を政争の道具にしたくない気持ちなどは丁寧に良く描かれていました。リランと会話ができたときの高揚感なども素晴らしかったです。

王獣編で他に惜しいと感じたのは、ユーヤン、トムラ、イアル、シュナンといった印象的な人物が登場していただけに、それを完全には生かし切れていなかったことです。そして、あのジョウンが・・・。ここだけは納得できません。

黒幕の人物は十分に予想がついたので、このあたりはもう少しひねりが欲しかったようにも思います。ただし、この人物はなかなかに魅力的ではありましたね。

◎参考ブログ   

  ともおさん:会社ともおの読書日記
  エビノートさん:まったり読書日記(2008-3-25追加)

******************************** Amazonより ******************************** 

出版社/著者からの内容紹介上橋菜穂子渾身の長編ファンタジー王国の陰謀に果敢に立ち向かう少女・エリン。獣を操る技を身につけた彼女が選んだ未来とは?「王獣は、けっして人に馴れることはない。甘い幻想を抱いて近づきすぎれば、爪で引き裂かれて死ぬことになる」師匠にそう言われても、エリンは、王獣を恐怖で支配することを拒む。はたして人と獣がともに生きる道はあるのか? 傷ついた王獣の子、リランを救いたい一心で、王獣を操る術を見つけてしまったエリンに、学舎の人々は驚愕する。しかし、王獣は「けっして馴らしてはいけない獣」であった。その理由を、エリンはやがて、身をもって知ることになる……。王国の命運をかけた争いに巻きこまれていくエリン。人と獣との間にかけられた橋が導く、絶望と希望とは?


獣の奏者・闘蛇編(上橋菜穂子)

2007-08-07 23:50:00 | 10:あ行の作家

Souja1 獣の奏者・闘蛇編(講談社)
★★★★☆’:85点

小野不由美さんの「十二国記」シリーズやジブリ映画で有名な「ナウシカ」を彷彿とさせる、少女を主人公にした異界冒険ファンタジー小説&成長物語で、本の雑誌・2007年上半期のベスト10で堂々の1位に輝いた作品です。しかし、私は作者の上橋菜穂子さんの名前を全く知りませんでした。

私が読んだのは闘蛇編のみで、王獣編(これも既刊)に続くようです。闘蛇編は王国や村、習慣などの背景説明、主要人物紹介を含む序章または問題提示といった位置づけのようでもあるので、点数は85点どまりとしましたが、冒頭から緊張感があふれ、読者をグイグイ引き込みます。「十二国記」シリーズの方がスケールの大きさや国などの設定の破天荒さ・ユニークさ、宮殿の造形美などでは(今の所は)上と思いましたが、この作品にはまた別の不思議な静かさや謎があり、素晴らしいです。また、闘いには不可欠の獣・闘蛇の造形が見事。

【注意:以下ネタバレあり】

闘蛇衆(闘獣使い)だった母の死後、半死半生のところを蜂飼いのジョウンに助けられたエリン(主人公です)。実の父娘のように暮らすあたりの雰囲気がほのぼのとして良いです。日々知識を吸収するエリンの聡明さ、生き物に対する優しさと特異な能力に気づくジョウン。その二人の教える喜び・学ぶ喜びの描写も素晴らしい。全体的に緊張と緩和のバランスがうまくとれていますね。

アーリョ(霧の民、本当はアォー・ロウ:戒めを守る者の意)の秘密<操者ノ技>とは?神王国を滅ぼそうとする者の暗躍とそれから真王を衛る「堅き盾」の健脚イアル。彼らはこの後どうなっていくのだろうか。野生の王獣と飼い慣らされた王獣は何が違うのか。類い希な才能を見せ、王獣保護場で学ぶことになったエリンはその謎を解き明かすことができるのか?王獣編への期待絶大です。

***************************** Amazonより *****************************

上橋菜穂子待望の長編ファンタジー
けっして人に馴れず、また馴らしてもいけない獣とともに生きる、宿命の少女・エリン。
母が指笛を吹き鳴らしたとたん、奇跡が起こった。だが、その奇跡を、母は「大罪」と呼んだ……。
獣ノ医術師の母と暮らす少女、エリン。ある日、戦闘用の獣である闘蛇が何頭も一度に死に、その責任を問われた母は処刑されてしまう。孤児となったエリンは蜂飼いのジョウンに助けられて暮らすうちに、山中で天を翔ける王獣と出合う。その姿に魅了され、王獣の医術師になろうと決心するエリンだったが、そのことが、やがて、王国の運命を左右する立場にエリンを立たせることに……。


ランナー(あさのあつこ)

2007-07-16 22:49:39 | 10:あ行の作家

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ランナー(幻冬舎)
★★★★:80点

あの名作「バッテリー」の著者“あさのあつこ”さんの新作です。
さすがは“あさの”さん、陸上競技を描いた単純なスポーツ小説、青春小説ではないだろうなと思っていましたが、予想以上に奥深い作品でした。

(単行本帯より)
   走る。
   それしか、手立てはない。
   少年の焦燥と躍動する姿を描いた、青春小説の新たなる傑作!

   「おれは走れないんじゃない、走らないだけだ、そう信じたくて、
   逃げちまったんだ」
   長距離走者として将来を嘱望された高校一年生の加納碧李は、複雑な境遇の
   妹を案じ、陸上部を退部することを決意した。
   だがそれは、たった一度レースに負けただけで走ることが恐怖となってしまった
   自分への言い訳だった。

   走ることから、逃げた。逃げたままでは前に進めない。
   碧李は、再びスタートラインを目指そうとする----。

本書の主題は家族の物語(「家族の肖像」?)であり、そこにランナーの美しさ、走ることの喜びと苦しみが絡められ、さらに人を想う切ない心が見事に描かれています。主人公は、高校生で長距離ランナーの加納碧李(かのうあおい)と陸上部のマネジャー・前藤杏子の二人でしょうか。そして、碧李の母・千賀子と妹・杏樹がとても重要な役割を演じています。

義弟夫婦の交通事故死に責任を感じる母・千賀子。娘・杏樹を愛したいのに素直に愛せない苦悩。母に愛されたいのに愛してもらえない杏樹。その悲しみ。そんな母と妹の溝を埋めることに全神経を使わざるを得ない碧李。非常に厳しい側面を抱えた家族です。実は杏子の家でも家族の問題を抱えていた・・・。

優れたランナーの資質を持つ碧李(あおい)だが、一度のレースの敗北で走ることに対する恐怖に縛られてしまう。走ることをやめた安堵感と挫折感の表現が見事。陸上部では唯一ともいえる親友でハードラーの久遠(くどう)信哉。彼には走れなくなることの恐れがつきまっとている。久遠はやがて走れなくなる自分の気持ちを碧李に託そうとする。

生まれながらにして長距離ランナーの資質を持つ加納碧李(かのうあおい)。彼の走りにまっすぐな眼差しを注ぐ東部第一高校陸上競技部監督、箕月衛(みつきまもる)。その箕月の背中を横顔を見つめるマネジャー・前藤杏子。

実は私がこの作品で最も印象に残ったのは、家族の物語でもランニングのシーンでもなく、この3人の微妙な心のふれ合いとすれ違いでした。ことに杏子の視点から描かれるシーンが秀逸。私がふだん読む小説ではあまりこのようなシーンがないので、余計に印象に残ったのかもしれません。女性読者にとってはありきたりのシーンなのかな?でも、あさのさん独特の雰囲気がよく出ていると思います。

以下、********で囲まれた部分は、いいなあと思ったシーンの抜粋です。
私の備忘メモも兼ねているため長々と失礼。


**************************************************

  「もしもし、杏子です」

  さりげなく名前を口にする。
  
杏子です。先生。

  「わたしがマネの仕事をするのは、選手が練習してるのと同じです。
  
好きだからやっている、それだけなんです」
  余計な気遣いなど無用だ。負担をかけるなどと、的外れな気遣いをするより・・・
  杏子は、気取られぬように息を呑み込み、胸を押さえた。
  マネジャーとして気遣うより、わたしを見て。わたしだけを見て。

  「選手ばかりを見るんじゃなくて、そういうとこもちゃんと、見ていてください」
  ちゃんと見てください。
  わたしをわたしだけを見て。

  「おまえ、よく人間がわかってるんだな。おれの十七歳のときなんて、なーんも、
  わかってなかったぞ。ずいぶん、鈍かったよなあ」
  今でも充分、鈍いですよ、監督。なーんも、わかってないです。

  わたしにはわからない。わたしは、ランナーではないのだ。わたしは、ランナーには
  
なれない。
    ・・・
  あの人にも加納くんにも、手が届かない。
  眼球が熱くなる。胸が締めつけられる。淋しくて堪らない。止めようがなかった。
  驚くほど熱い涙が、湧き上がる。嗚咽が漏れる。
  「加納くんが、いけないんだ・・・加納くんが・・・」
  「はい」

  ずっと前から気がついていた?
  ほんとうに、ほんとうに、そうですか、監督。濡れて光る唇の意味を、わたしが
  何を求めているかを、ほんとうに気がついているのですか。

  空気がすっと緊張した。箕月が身じろぎする。
  顔を上げた杏子の前を、加納碧李が過ぎていく。
 
   ・・・
  さっきまで、杏子に向けていた視線とは明らかに違う。いささかもぶれず、鋭く、
  きりきりと絞られている。

  -------------------------------------------

  お杏。
  時折、箕月にそう呼ばれる。呼ばれる度に乳房の奥が鼓動を打つ。たった一声で、
  ほんの一言で、こうも心を乱される。馬鹿みたいだと思いもするけれど、どうにもなら
  ない。

 
 「え?」
  「加納くんに、個人的に惹かれています」
  箕月の目がまともに杏子にぶつかってきた。瞬きもせずに見つめてくる。
  そうよ、そんな目でみつめてよ。マネジャーでも生徒でもなく、あなたの前に立って
  いる
わたしをわたしとして見てよ。
  挑むように顎を上げる。

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  「ミッキーよ。やっぱ、何かと気になるみたい」
  杏子の瞳に柔らかな光がともる。頬が仄かに色づく。恋をする心というものは瞳や
  肌から、本人さえも知らぬ間に染み出してしまうらしい。

  この人は・・・。
  想いを胸にしまったまま去っていくつもりだろうか。それとも、失うことを覚悟の上で、
  全てを告げるのだろうか。

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いやあ、なかなか切ないシーンの連続ですね。なーんもわかっていない箕月監督が秀逸。男なんて所詮そんなものです(?)。いや、碧李は感受性が鋭く、人の心の動きに敏感です。それ故に千賀子と杏樹の間で耳をそばだて、神経をすり減らし、ランナーとしての才能をその中に押し込めていってしまう・・・。

それにしても、この本は続きは書かれないのでしょうか。それが気になりました。

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◎参考ブログ

   そらさんの”日だまりで読書” 2007年10月19日追加)
     親子や家族、児童虐待についての考察が詳しいです。