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ひろの東本西走!?

読書、音楽、映画、建築、まち歩き、ランニング、山歩き、サッカー、グルメ? など好きなことがいっぱい!

バッテリー4、ふたたび(あさのあつこ)

2006-02-05 21:30:00 | 10:あ行の作家

Batteri4 バッテリー4(角川文庫)

久々に再読しましたが面白かったです。

<単行本のときの感想はこちら>

このときは採点していませんでしたが、後からつけると★★★★☆’:85点かな?既に6冊とも読了済みですが、エイヤーの採点は2・3・6が★★★★☆:90点、他は85点くらいです。私にとってこれほどハイレベルのシリーズは小野不由美さんの「十二国記」シリーズと「バッテリー」くらいでしょうか。

*********** 【注意】以下、ネタバレあり ***********

横手中との試合で門脇を三振に打ち取ったものの、それ故に自分たちを見失ってしまった巧と豪。とくに豪の苦悩は深い。そんな豪の後ろ姿を描いた表紙の絵が非常に印象的です。佐藤真紀子さんの絵は絶品。もっとたくさんの人物を描いてバッテリー展を開いて頂きたいものです。

文庫本化に当たって加筆・訂正されたとありましたが、どの程度だったのでしょうか。多少、セリフを含む説明が増えて分かりやすくなったような気もしましたが、これは気のせいなのかもしれません。それにしても、巧は豪にかける言葉が少な過ぎますね。沢たちがそれを指摘し、巧も気付いてはいるもののなかなか思いを口にすることができない。そのもどかしさ。でも、孤高のエースとはそんなものなのかもしれません。

瑞垣vs吉貞の口撃合戦は何度読んでも傑作。ここまでの判定では、先輩を先輩と思わない吉貞が10-9で若干リードか。あさのあつこさん、よくぞこんな二人のキャラを思いつかれたものです。

前の感想でも書いたのですが、三角ベースの野球シーンが非常に素晴らしい。”野球遊び”にみんなを誘った青波の天真爛漫な心がピカイチ(もちろん、兄や豪のことを気づかってということもあるのですが)。本作品は悩める二人の姿を描いているだけにやや暗めの内容なのですが、このシーンで明るい日がさっと差したような気がします。巧から豪のミットめがけて投げられた渾身のバックホームのボールが二人の心をつなぎ止めたような気がします。みんなでサンドイッチを食べ(ここでも瑞垣と吉貞のバトルあり)、東谷と門脇が野球談義をしているシーンも良いです。

文庫本書き下ろし短編の「空を仰いで」。何と3歳の巧と2歳の豪が登場!既に2人は運命的なボールのやりとりをしていた・・・。巧の祖母(洋三の妻)・聖名子の気持ちというか精神力の強さがきっちりと描かれていました。巧は間違いなく祖母の血もひいていますね。あさのさんから読者への嬉しいプレゼントでした。


壬生義士伝、読了

2005-11-08 23:35:56 | 10:あ行の作家
浅田次郎さんの「壬生義士伝」、読了しました。はあ~~。。。

同じ浅田次郎さんの「輪違屋糸里」にも非常に高い点数をつけましたが、本作も素晴らしかったです。2作続けて今年のベストワン級。詳しくは別エントリーで書きますが、会社帰りの電車内で終盤に差しかかり、不覚にも・・・。

それにしても、作家とは凄い職業ですね。こんな物語を紡ぎ出すとは!

実は先に読み始めた山本一力さんの「銭売り賽蔵」をいったん放り出してしまいました。
一力はん、堪忍やで。
次は「だいこん」を読みますさかいに。
「銭売り賽蔵」、どうしようかな?



輪違屋糸里(浅田次郎)

2005-10-26 21:54:00 | 10:あ行の作家
itosato-1itosato-2輪違屋糸里(文藝春秋)
★★★★☆:90点

文句無し。抜群の面白さ。
さながら「女たちの新選組」といった趣がある異色の新選組ものである。

~Amazon 内容(「MARC」データベースより)~
 
  島原の芸妓・糸里は土方歳三に密かに思いを寄せていた。
  二人の仲を裂こうとする芹沢鴨には、近藤派の粛清の夜が迫りつつあった…。
  浅田版新選組異聞。芹沢鴨暗殺を描いた話題作!

**************** 【注意】ストーリーについての言及あり **********************

元々、図書館の予約本待ちの狭間で急きょ借りた本なのだが、読み始めてすぐに夢中になり、どっぷりとつかってしまった。新選組は、司馬遼太郎原作で何度もTV放映された「新選組血風録」や「燃えよ剣」のイメージがあまりにも強かったのだが、作家の描き方の違いによってこれほど異なった小説になることに驚いた。

島原の天神・糸里と吉栄、菱屋の妾(陰の妻)お梅、前川のお勝、八木のおまさ。5人の女と新選組の隊士たちが様々に絡み合い、幕末の混沌とした京都の町にはかなくも美しい人間模様を織りなす。その構成が卓抜。

浅田次郎は、清朝末期の中国を描いた直木賞候補の超大作「蒼穹の昴」では、気宇壮大なスケールの大きな物語を構築してみせた。しかし、そこでは多すぎる登場人物の扱いと史実と虚構のドッキングに失敗したように思う。国・時代・スケールは異なるのであるが、本作では1つの時代の終焉に向かっていく同様の物語で冴えを見せつけてくれた。天晴れである。

司馬新選組の影響か悪役のイメージの強い芹沢鴨が、ここでは真の武士として、また憂国の闘士として好意的に描かれている。元々が武士である「神道無念流」 の芹沢鴨。百姓の出である「天然理心流」の近藤勇。二人は案外気が合うようなのだが、芹沢を取り巻く新見錦、平山五郎らと近藤を取り巻く土方歳三、沖田総司、斉藤一、藤堂平助、山南敬助、井上源三郎らは決して心許して交わることはない。双方に関係の深い永倉新八はそれ故に微妙な立場に置かれる。そして、新選組は当然のように血なまぐさい分裂の道へと進んでいく。

新選組隊士の中では、芹沢が永倉が土方が語り部となるのであるが、同じ事件でも言い分が異なり、誰の言葉が真実であるのか分からない。これも絶妙。まるで、黒澤明の「羅生門」(原作は芥川龍之介の「藪の中」)である。

そんな中で芹沢・新見・平山らに心ひかれたのは、浅田次郎の魔力に見事にはまったせいだろう。

  ”フォーサイス、見てきたような嘘を書き” とすると
  ”次郎はん、見てきはったような話書き” だろうか。

しかし、心地よいのである。芹沢と運命を共にしたお梅の哀れさ、平山に「おゆき」と言ってもらえた吉栄の喜びと悲しみが胸をうつ。女性たちについては、実はいくら書いても書き尽くせない。皆、生きることに懸命で、ひたむきで、隊士たちには憎しみと親愛という相反する感情を抱いている。新選組と共に、あるいは新選組に反発して泣き、笑い、怒る。

女性陣を代表して糸里について少しだけ。

「男はんはええなあ」「もいちど生まれ変われるのやったら、どないしても男がええ。おなごに生まれて得なことなど、何ひとつもあらへん」と考えていた糸里。だが、吉栄と新しい生命の行く末を会津の殿様に約束させた糸里は、それと引き替えるかのように土方と決別し、島原の大夫として歩む決心をする。
「輪違屋桜木大夫、逢状うけたまわりまして、ただいままかり越しますえ」

エピローグ的な終章はしみじみとした味わいと生き抜く覚悟を決めた女の強さが見事に表れていた。ある程度予測できた内容かもしれないが、輪廻転生も感じさせる素晴らしい終幕であった。



バッテリー(あさのあつこ)・個人賞選定

2005-01-14 00:11:00 | 10:あ行の作家

「バッテリーⅥ」はまだ読んでおられない方も多数おられますので、感想などが書きにくいですね。
そこで、ちょっと趣を変えて個人賞を考えてみました。

◎主演男優賞:原田巧、永倉豪

  これは二人同時受賞で文句なし。
  なにせ「バッテリー」ですから。

◎主演女優賞:残念ながら該当なし

◎助演男優賞:

  これは有力候補が目白押しですね。
  第一次ノミネートは
    東谷、沢口、吉貞、海音寺、展西、野々村、
    高槻、菊野、門脇、瑞垣、オトムライ、校長、
    青波、洋三
  ですが、配役バランスも考えた上でヒガシやサワ達には
  ちょっと我慢してもらって最終ノミネートは
 
    海音寺、展西、吉貞、瑞垣、オトムライの5名に。

  そして、晴れの受賞は・・・

  尻上がりに存在感が増した 瑞垣俊二 に決定!
※まだご存じない方がおられるかも。
  次点は僅差で海音寺一希。

◎助演女優賞:小野”小町”薫子先生

  これも文句なしの受賞です。
  矢島さん、伊藤さんにもちょっと惹かれたのですが・・・。
  小町先生、ええことゆうてはりましたよ。
  むちゃくちゃかっこよかったです。

◎新人賞:原田青波
  
  これはこじつけですが、初めての試合でナイスキャッチした
  青波にぜひ。
  全編を通じての敢闘賞でもあります。
  もうちょっと出番が多ければなあ。。。 

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☆参考ブログ:straycatさんの”straycatの人間観察”(2007-1-29追加)


バッテリーⅥ(その1)(あさのあつこ)

2005-01-11 22:22:00 | 10:あ行の作家
asanoatuko-6バッテリーⅥ(バッテリー6)
(教育画劇)

バッテリー、遂に完結!

この本については書きたいことが山ほどあるので、今日はまず”その1”ということで。

最後は静かなところで読むぞ!と決めていたのに、読み始めると止まらず、会社帰りの電車内で読了してしまいました。
読み終えるのに1時間30分くらいかかったでしょうか。
まわりがやや騒々しかったので、ラストの余韻にひたるにはちょっと難ありだったなあ。でも途中で本を閉じることはできなかったし。。。

思えば僕が「バッテリー」を知って初めて読んだのはわずか1ケ月前。それから1ケ月間、Ⅰ~Ⅵまでを一気に読んで至福の時間を過ごしました。
単行本の刊行順に何年もかけて読んだ場合と6冊を短期間に読んだ場合では感銘度などに違いがあるのかもしれませんが、色々な記憶が鮮明なうちに読むことができたのは良かったと思います。
おそらく読者は小学生から、僕のように巧や豪の数倍の年数を生きてきた者まで実に幅広いと思いますが、その誰もが夢中になったことでしょう。そしてバッテリーのことを語り出すとみんな止まらないのでは?とにかく凄い本でした。
あさのあつこさんと佐藤真紀子さんに感謝!

Ⅵについて少しだけ。
Ⅳ・Ⅴとやや内容の重さが気になっていたのですが、次第にまた野球をやる純粋な喜びが甦ってきて良かったです。
ラストシーンは映画のストップモーションを思わせました。素直に感動。