久々に再読しましたが面白かったです。
このときは採点していませんでしたが、後からつけると★★★★☆’:85点かな?既に6冊とも読了済みですが、エイヤーの採点は2・3・6が★★★★☆:90点、他は85点くらいです。私にとってこれほどハイレベルのシリーズは小野不由美さんの「十二国記」シリーズと「バッテリー」くらいでしょうか。
*********** 【注意】以下、ネタバレあり ***********
横手中との試合で門脇を三振に打ち取ったものの、それ故に自分たちを見失ってしまった巧と豪。とくに豪の苦悩は深い。そんな豪の後ろ姿を描いた表紙の絵が非常に印象的です。佐藤真紀子さんの絵は絶品。もっとたくさんの人物を描いてバッテリー展を開いて頂きたいものです。
文庫本化に当たって加筆・訂正されたとありましたが、どの程度だったのでしょうか。多少、セリフを含む説明が増えて分かりやすくなったような気もしましたが、これは気のせいなのかもしれません。それにしても、巧は豪にかける言葉が少な過ぎますね。沢たちがそれを指摘し、巧も気付いてはいるもののなかなか思いを口にすることができない。そのもどかしさ。でも、孤高のエースとはそんなものなのかもしれません。
瑞垣vs吉貞の口撃合戦は何度読んでも傑作。ここまでの判定では、先輩を先輩と思わない吉貞が10-9で若干リードか。あさのあつこさん、よくぞこんな二人のキャラを思いつかれたものです。
前の感想でも書いたのですが、三角ベースの野球シーンが非常に素晴らしい。”野球遊び”にみんなを誘った青波の天真爛漫な心がピカイチ(もちろん、兄や豪のことを気づかってということもあるのですが)。本作品は悩める二人の姿を描いているだけにやや暗めの内容なのですが、このシーンで明るい日がさっと差したような気がします。巧から豪のミットめがけて投げられた渾身のバックホームのボールが二人の心をつなぎ止めたような気がします。みんなでサンドイッチを食べ(ここでも瑞垣と吉貞のバトルあり)、東谷と門脇が野球談義をしているシーンも良いです。
文庫本書き下ろし短編の「空を仰いで」。何と3歳の巧と2歳の豪が登場!既に2人は運命的なボールのやりとりをしていた・・・。巧の祖母(洋三の妻)・聖名子の気持ちというか精神力の強さがきっちりと描かれていました。巧は間違いなく祖母の血もひいていますね。あさのさんから読者への嬉しいプレゼントでした。