琉球新報「ひずみの構造」批判 2


沖縄のアメリカ軍による土地の接収を問題にする時、アメリカ軍が土地を接収した原因については追求しないのが普通である。政治家、知識人、そしてマスコミの全てがそうである。だから、ほとんどの県民はアメリカが沖縄の土地を接収した原因を知るには自分で調べなければならない。

島洋子氏が書いている「ひずみの構造」も例外ではなく、アメリカ軍の「銃剣とブルドーザー」よる強引な土地接収については書いているが、なぜアメリカ軍は強引な土地接収をしたかについては書いていない。

アメリカは終戦当時は沖縄に軍事基地を築く積もりはなかったはずである。アメリカが一番恐れたのは日本が再び軍国主義国家になることであり、その対策してアメリカは平和憲法を作り、議会制民主主義国家にする努力をした。
ところがアメリカが予想していなかったことが突如として起こった。朝鮮戦争である。1950年に突然北朝鮮が国連で決めた南北朝鮮の国境線である38度線を破って成立したばかりの大韓民国に侵攻したのだ。そして、朝鮮半島の95%を制圧した。
予想もしていなかった北朝鮮の侵略に驚いたアメリカは大韓民国をまもるために25万人の兵士を投入した。最初は苦戦をしていたが攻勢に転じて逆に北朝鮮を追い込み、朝鮮戦争は1953年7月27日に休戦した。
1949年には中国共産党によって中華人民共和国が建国されていたし、戦後は資本主義国と社会主義国の対立が高まっていって、朝鮮戦争が起こり、アジア大陸の多くは社会主義国家に変貌した。
アメリカが沖縄に軍事基地をつくった原因は社会主義国家の拡大を防ぐためだった。注目すべきは軍隊を使って勢力拡大を図ったのは社会主義国家であり、アメリカは国連で決めた国境線を守ろうしたことである。
もしアメリカ軍が日本・沖縄に駐留していなかったら沖縄は中国に侵略されていただろう。そして、日本軍が中国で行った残虐行為の影響で悲惨な目にあっていた可能性が高い。

沖縄のアメリカ軍駐留を問題にするなら、中国、北朝鮮等の社会主義国家について追求しなければ意味がないし、共産主義、社会主義、民主主義について真剣に考えなければならない。そして、共産主義思想を支持するか、それとも民主主義思想を支持するか自分自身の態度を明確にする必要もある。沖縄の反基地運動は共産党や社会大衆党などの反資本主義・反米主義を主流に発展したきた。だから表面的な反戦平和主義運動と同じではない。

沢岻さんはインドシナ戦線に参戦している。沖縄の人の多くは南方に出兵しているようだが、日本軍は南方を武力で制圧し、土地を奪い植民地にした。植民地には多くの沖縄の人間が移住して農業をやった。沖縄人も含めた日本は南方ではなんの罪もない人々を殺し土地を取り上げたのだ。沢岻さんはアメリカ軍に土地を奪われたことに「立ち直れないほどの衝撃」を受けても、南方で武力で現地人から土地を奪ったことの反省は全然ない。沢岻さんだけでなく、沖縄の知識人、政治家、マスコミは沖縄の人々が南方に移住したのは日本軍が武力で植民地した場所であったことや、沖縄出身の兵士の多くが南方の植民地化に参加したことを無視している。サイパンなどの南方への慰霊団の口から南方を植民地にしたことを現地の人々に謝るのを聞いたことがない。残念なことである。

島洋子氏は「人々の生産基盤であった土地は軍用地のみを生み出す場に変質し」と書いて、沖縄の畑のほとんどがアメリカ軍基地になったような印象を持たせているが、果たしてそうだろうか。読谷の軍用地のほとんどが黙認耕作地となり、さとうきびやさつまいもを育てるには大きな影響はなかった。沖縄で一番大きい平地で畑作に適している那覇以南の土地は軍用地に接収されることもなく農業に影響を与えていない。
そもそも沖縄は島国であり灌漑施設は貧弱で、土は農業に適さない赤土である。だから沖縄ではやせた畑でも育つさつまいもの栽培が主流であったし、灌漑施設がなくても育つ暴風にも強いさとうきびが換金作物として栽培されたのだ。沖縄では伊佐浜のように恵まれた畑はすくないのであり、沖縄の畑が伊佐浜と同じであると考えるのは間違いだ。

島洋子氏は、「沖縄の土地が軍用地料のみを生み出す場にし、戦後の沖縄の経済構造を変えていく」という発想で沖縄経済を考えているのならとんでもない間違いをする。

沖縄の人口密度は東京都なみである。沖縄のような赤土の島国が大都会東京と同じ人口密度の高いところは世界のどこにもない。もし、沖縄の生産が農業を主流にしているならば沖縄の人口は現在の半分以下であるだろう。つまり半分の人間は餓死するということだ。

なぜ。沖縄の人口密度は東京なみに高いのか。それはアメリカ軍基地経済と密接に関係している。

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