主張の裏にはJAの利益優先がある





私の父は昔気質の農民だった。鍬と鎌だけで数千坪の畑にさとうきびを植え、山奥には田んぼもやっていた。豚とやぎを飼い、早朝から陽が沈むまで働き続けた。あんなに父は働いたのに私の家は貧乏だった。アメリカ軍基地や会社や商店などで仕事をしている親の家庭は普通の生活を送っていたのに、なぜ農民の親を持つ私の家は貧乏なのか。中学から高校生の頃には私悩み、農家の貧乏の原因はどこにあるのかを真剣に考えた。そして、父のような鍬と鎌だけの農業では駄目で、農家が普通の生活をするには機械を使った大規模農業をやるか、ビニールハウスを利用した値段の高いを野菜をつくる方法しかないと私は結論した。
私の父のように鍬と鎌だけでの農業は現代社会には通用しない。さとうきび栽培でまともな生活をするには最低五、六千坪は必要であるだろう。いや、もっと必要かもしれない。
現在の法律では遺産相続は兄弟が分配するから、一人の所有する農地は小さくなっていくようになっている。これでは農業を専業とするのはますます困難であり、農業が衰退していくのははっきりしている。

私の父のような貧しい専業農家や会社勤めをしながら小遣い稼ぎとして農業をしている兼業農家が多い沖縄で、農家をお客にして儲けたのが農協だ。

JA沖縄中央会長小那覇安優氏の意見は小規模農家をお客にして儲けるJA体質まるだしの意見である。
小那覇氏のいう農家とは小規模農家のことであり、大規模農家や企業経営の農業は対象としていない。そして、特に注目してほしいのはJAは直接農業する気が全然ないことである。いわゆる農業のリスクを取らないのを前提にしてJAは経営しているのだ。

農業を大規模化して経費を下げ、販売網を拡大して利益をあげるようにすれば、農家が受け取る交付金は減少させることができる。地域産業の維持は重要であるが、農業だけが産業ではないし小規模農業にこだわればむしろ地域の過疎化は進むだけである。観光業、民宿や加工業などの開発を進め、小規模でも採算の取れる野菜を開発しなければ地域の農業は消滅するしかない。

「島で数人の農家だけに農地を集約すれば、人口再生力のある人口構成が失われ、地域社会が崩壊する。」と小那覇氏は主張するが数人の農家で採算が取れるのなら、数人の農家でやるのがいい。採算の取れない小規模農業をしているから畑を放棄して地域から出て行く人が増え、地域の過疎化が進んでいるのだ。
小規模農業主義が地域を支えているというのは間違いであり、面積が小さい日本でありながら放棄地が増えているのが現状であり、その原因は小規模農業であるからだ。大規模農業であるなら、少なくても畑だけは放棄されなかっただろう。私も畑地を所有しているが放棄している。

小那覇氏は輸出国が輸出を止めたら困ると主張するが、それは安い輸入野菜がなくなるということであり、輸入野菜がなくなれば国内で生産した高い野菜が売れるようになる。すると国内での野菜つくりが盛んになるから日本の農業は発達する。輸入野菜がストップするということは国民の食料がなくなるということではなく国内の農業が盛んになるということである。
小那覇氏はなんの予告もなく突然輸入がストップするような印象を与えているが、そんなことはありえない。現在の情報化時代では国々の政情は分かるし、どの国が輸出をストップする可能性があるかどうかも前もって把握できる。だから前もって対応することができる。中国の野菜が農薬濃度が高い理由で突然中国からの野菜の輸入をストップしたのは数年前のことだ。その時、野菜は高騰はしたがパニックなるよう野菜不足はなかった。

日本の農業問題は他国の野菜より日本の野菜が高いことである。もし、他国の野菜と同じ値段なら日本の農業もどんどん生産することができる。穀物市場で日本が"買い負けするということは穀物の値段が高くなるということであり、日本の農家にとって歓迎するべきことである。
小那覇氏の主張する不安は的外れの不安である。

小規模農業を前提とした小那覇氏の主張は、小規模農家が多ければ多いほど儲けるJA側の主張である。TPPとは関係なく、日本の小規模農業主義は農業の停滞を生み出し、畑の放棄地を増やしている。

大規模農業と企業参加の農業に転換しないと、TPPとは関係なく日本の農業は高齢化が進み衰退していく。政府は農業の政策転換を早くするべきだ。JAには直接農業をさせるべきである。そうすればJAのほうが大規模農業の推進者の第一人者になるだろう。
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