教公二法と八重山教科書問題














 写真は1967年2月24日立法院を取り巻いている沖縄の教師たちである。大衆ではなく教師たちである。教公二法とは教師の政治活動を禁じたものである。復帰前の沖縄は教師が政治活動を自由にできた。革新系の立候補者が学校の職員室にやってきて、支持を訴えて握手するのは見慣れた風景だった。教職員たちは教公二法を阻止しようと立法院を取り巻いた。見ての通りものすごい人数である。

 沈痛な面持ちでハンガーストライキをしている屋良朝苗氏は沖縄教職員会長であり、初代の公選選挙主席であり、初代沖縄県知事である。屋良氏は社会党や共産党系ではなく戦後の沖縄の教育に情熱を傾けた人である。「祖国復帰して本土並みの環境になれば沖縄の学力も本土並みになる」と信じていた人間であった。その信念で復帰前は沖縄の教育環境を改善するために全国を周って教育資金集めに尽力した。彼の努力で日本政府を動かし政府からの援助も実現した。

 屋良氏たちのハンガーストライキの効果はなく、民主党(自民党系)は教公二法案の成立への手続きは進んでいった。危機を感じた教職員は10割年休闘争を決定して写真のように立法院を取り巻いた。そして、1967年2月24日、民主党が教公二法を強行採決しようとした時、教職員は警護している警察管をごぼう抜きにして立法院に突入して実力で教公二法の議決を阻止した。一部の議員はアメリカ軍のヘリコプターで脱出したという。
 教公二法闘争は教職員の政治力の強さを証明した事件であった。
 60~70年代の教員組織は沖縄の政治を主導した。あの頃活躍した若き教員たちが現在の60~70年代の教諭OBである。

 USCAR文書は興味深い。当時の新聞は教職員側の報道だけであり、警察や高等弁務官の話が報道されることはなかった。
 アンガー高等弁務官は「教公二法案を可決することは沖縄における民主主義がかかっています。民主主義や多数決のルールに従うのか、それとも暴徒のルールに従うかです。教師の政治活動や子供への影響の問題も重要なことですが、より深刻なのは、果たしてこの島で民主主義が生き残れるかということです」と心配している。

 革新系政治家や知識人から植民地支配をしていると言われているアメリカのアンガー高等弁務官は「果たしてこの島で民主主義が生き残れるか」と教職員の運動を民主主義を破壊する存在とみなしている。そして、アメリカは沖縄の民主主義を守る側にあると認識している。アメリカが沖縄を民主主義社会にしようとしていたことが窺える。

 アンガー高等弁務官は、対立が沖縄人同士であるという理由で琉球政府からの琉球政府からの米軍の直接介入の要請を断っている。沖縄に三権分立の制度をつくったのはアメリカである。主席は民政府が任命したが、アメリカ軍の存在を除外すれば、沖縄は民主主義国家であった。沖縄人同士は民主的な関係であったのだ。アメリカ人が経営しているのはほとんどなかった。戦前までは武士階層や旧薩摩藩系が沖縄の経済を支配していたが、戦後のアメリカ民政府時代は戦前の特権階級の経営者はいなくなり、沖縄の庶民が自由に商売ができるようになった。平和通りは戦後に発展した自由市場である。たばこや酒は自由に販売できた。
沖縄経済はアメリカ流の自由貿易であり、外国人の投資も自由であったから、台湾人、フィリピン人、韓国人だけでなくインド人などの中東の人間も沖縄で商売をしていた。

 日本に復帰すると、外国人が急激に減っていった。フィリピンバーは嘉手納町、石川市、沖縄市の中の町などいたる所にあったが、今はなくなった。復帰後に残ったのは沖教祖や自治労の強力な政治力である。

 八重山教科書問題を冷静に考えれば、中学三年生の公民ひとつの教科書問題である。教科書は国が検定したものでありちっぽけな問題であるのに、沖教祖や教員OBや革新系知識人が育鵬社の教科書を採択したら軍国主義国家にもどるなどと妄想でしかない噂を振りまいて沖縄中を大騒ぎせた。いや、沖縄中が大騒きしたというのは疑問だ。新聞が大騒ぎしただけかもしれない。

 八重山教科書問題は教科書採択に重大な問題があるのではなく、1967年に警官隊さえ排除して教公二法の決議を阻止した教職員の絶大なる力が2011年でも健在であり、自分たちのテリトリーに侵入してきた育鵬社の教科書を排除しようと自分たちの組織を最大動員して多くの集会を開催したり、署名を集めたりして実力行使をしたということだ。

 生徒や親たちとは関係のない大騒ぎだ。
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