6次産業提唱の東大名誉教授を批判する


今村氏は農業の6次産業を提唱している人である。
六次産業とは、農畜産物、水産物の生産だけでなく、食品加工(第二次産業)、流通、販売(第三次産業)にも農業者が主体的かつ総合的に関わることによって、加工賃や流通マージンなどの今まで第二次・第三次産業の事業者が得ていた付加価値を、農業者自身が得ることによって農業を活性化させようというものである。

東京大学名誉教授(社)JA総合研究所研究所長 今村奈良臣の6次産業理論

「6次産業」の理論的背景

「6次産業という概念は、農業・農村の活性化をねらいとして私が考え出し、世の中に提唱してきたキーワードであるが『6次産業の理論的根拠は何かあるのですか?』という質問を時々受けることがある。実にもっともな質問で、理論的背景をしっかり押さえておいた方が、仕事や活動のエネルギーの源泉にもなるので、この質問に答えておきたい。6次産業というのは、決して単なる言葉遊びや語呂合せではない。

<ペティの法則について>
かつて著名な経済学者であるコーリン・クラーク(Colin G.Clark)はペティの法則を説いた。その主著である『経済進歩の諸条件』(大川一司他訳、“The Conditions of Economic Progress”1940)において、コーリン・クラークは世界各国の国民所得水準の比較研究を通じて、国民所得の増大とその諸条件を明らかにしようとした。彼はその中で、産業を第1次・第2次・第3次の三部門に分け、

1 一国の所得が第1次産業から第2次産業へ、さらに第2次産業から第3次産業へと増大していく。
2 一国の就業人口も同様に第1次産業から第2次産業へ、さらに第3次産業へと増大していく。
3 その結果、第1次産業と第2次産業、第3次産業との間に所得格差が拡大していく。ということを明らかにし、それが経済進歩である。


6次産業とは

女性起業の定義は「農村在住の女性が中心となって行う農林漁業関連の起業活動であり

1使用素材は主に地域産物であること、
2女性が主たる経営を担っているもの、
3女性の収入につながる経済活動であるもの」となっている。
つまり、私の提唱してきた6次産業の推進主体が女性であることに着目した活動の躍進ぶりを示したものである。この女性起業の活動の若い女性が少なく、中高年齢層の女性が中心となっていることが分る。
活動の中心年齢
(1)高齢化が進み若い女性の参加、補充が充分でないこと、
(2)経営規模も全体として見れば零細なものが多いこと、
(3)しかし、多様な農産物の加工・販売を目指し、「農業の6次産業化」を合言葉に農業・農村に常に新風を吹き込んでいる

地産地消、安全・安心な農産物を食卓へというようなスローガンを掲げた農産物直売所が全国各地を覆うような勢いで伸びてきた。「農業の6次産業化」の申し子であり、トップランナーであると言ってもよいであろう。自らの地域で生産した農畜産物(場合によっては水産物、林産物も含めて)、あるいはそのまま、あるいは加工して、生産者が直売所に持ち寄り、生産者が自ら価格や生産履歴を表示し、消費者に買ってもらい、食卓をにぎわわせようという活動である。



今村氏への批判

6次産業は農家のグループ化である。女性の料理の能力を生かして商品を作り、小さな商店を作って売るというやりかたである。いわゆる小規模農家の少量に生産した野菜などを加工して商品化して収入を増やすのを目的にしている。

今村氏は地産地消の農産物直売所が6次産業の理想と述べている。農産物直売所はバーコードで個人別に商品登録できることによって、零細農家も商品を自由に出品できるようになった。今までお金にすることができなかった少量の野菜も換金できるようになり農家の収入が増えた。
しかし、農家の収入は小遣いが増えた程度であり、大金を手にするのはJAである。昔から続いている零細農家をかき集めてJAが主導権を握り儲けるというシステムに変わりはないし、JAの新たな儲け手段が増えたということになる。
6次産業も結局は農家がJAの配下に置かれるパターンであり、小規模農業の延長であるから農業の老齢化は避けることができないし、農家の自立経営にはほど遠い。

野菜も生産物であれば自動車もやテレビも生産物である。生産物は商品として消費者に売って価値が出る。
生産物は質がよく、安いのが売れる。だから、自動車会社にしろテレビ会社にしろ質がよく安いものを生産する努力を怠らない。そして、より多く売る追求もする。
会社は社長を頂点に、直接生産する者、開発する者、営業する者、情報収集する者、指導する者など分業して働いている。分業化することによって会社の経営は発展していく。

農業なら、直接野菜を作る者、品種改良をする者、野菜販売拡大の営業をする者がそれぞれ仕事を分けてやるということになる。第二、三産業のようなやり方を農業が実行するには、農業も第二、三産業のように会社化をしなければならない。農業を大規模化して、会社経営にすると農業従事者は会社に雇用されて給料をもらう労働者になる。労働者は就職するのも辞めるのも自由だから、若い農業従事者が増える。

農家の高齢化の最大の原因は畑を所有している人間しか農業ができないことにある。個人所有の畑を株にするなどの工夫をして農業を会社化すれば農業の高齢化が解決できる。また、新しく農業を始めるには畑を持たなければならない。それは若い人には大きな負担であるし、農業を始めたら労働者のように簡単に辞めることができないから、若い人が農業するのを敬遠する。会社化すればそういう問題も解決できる。

日本の農業が小規模農業である限り、農家の高齢化は解決できないし、農業の発展もない。今村氏の六次産業論も零細農家を支配下に置いて儲けているJAの手伝いをしているにすぎない。

今村氏の6次産業は2次産業と3次産業の方法を取り入れるという面は農家の経営発展の可能性を示しているようにみえるが、零細農家をそのまま固定するのを前提としているのが今村氏の6次産業であり、経済が拡大発展していくシステムの2次産業、3次産業を本当に取り込んではいない。今村氏の6次産業は三次産業に徹しているJAに丸め込まれる農家を増やすだけだ。

日本の農業は大規模の会社経営にしない限り将来はない。
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