「冷徹な外務官僚」の幼稚なシナリオには笑える

佐藤優氏は「ウチナー評論」<150>で冷徹な外務官僚は、
「仲井間知事にとって、辺野古案を受け入れることは、政治的自殺行為です。それを理解した上で、知事辞任と引き換えに辺野古案を受け入れさせるシナリオを組み立てるべきです。
仲井間氏は通産官僚でした。だから、霞ヶ関(中央官庁)の総意として沖縄に圧力をかければ、それに抗することが沖縄県民の利益を毀損することになると、皮膚感覚で分かる。だから、経済振興と尖閣問題、日米同盟による抑止力など、すべての要因で仲井間知事を包囲するのです。

そして、この状況を突破するには、政治生命を失うことになっても、所与の条件下、辺野古を受け入れることが、唯一の沖縄が生き残る道だと悟らせるのです。
徹底的な圧力、ムチとムチの政策で沖縄に対処すべきです。」

のようなシナリオを外相と首相に提案するという。

でも、このシナリオは以前に自民党政府が名護市長にやったパターンだ。名護市長は辺野古移設を受け入れた責任を取って辞職した。
佐藤氏の描いたシナリオはこれをパクッたものだ。それに自民党時代にはこんなやり方は何度もあった。

さて、佐藤氏の描いたシナリオはうまくいくかというと、全然駄目だ。外務官僚だってこんな現実ばなれした幼稚なシナリオは描かないだろう。

仲井間氏は自民党側の政治家であり、自民党は辺野古移設に尽力し、辺野古移設実現のために名護市長に圧力をかけ、名護市長は辺野古移設を認めるのと引き換えに辞職した。
仲井間知事は自民党が苦労して辺野古移設にこぎつけたことを知っているから、仲井間知事の本音は辺野古移設に賛成である。仲井間知事はぎりぎりまで政府が辺野古移設を決めたのならそれに反対しないということを公言していた。

しかし、それでは県知事選挙に勝てないからと知事選の対策委員長になった那覇市長が説得したので、仲井間知事は渋々「県外移設」を公約にしたのだ。

仲井間知事にとっては、せっかく自民党が実現のめどを立てることができた辺野古移設をぶち壊してしまった民主党に頭にきている。
自民党政府なら辺野古移設に賛成し、実現に頑張るだろうが、自民党と対立している民主党政府のために仲井間知事は努力する気が起こるはずがない。

そんな仲井間知事を脅したり圧力をかけても効果はゼロだ。もし、「冷徹な外務官僚」のつくったシナリオを仲井間知事に仕掛けたら、仲井間知事はこう言うだろう。
「私を脅すのはお門違いだ。辺野古移設絶対反対をしている名護市長に圧力をかけなさい。名護市長が辺野古移設を承諾したら、考えてもいいですよ。でも、『最低でも県外』と放言したことを首相は土下座して謝らないと駄目ですよ。」

民主党政権になったので、辺野古移設は仲井間知事にとって他人事になったのだ。首相にも、「県外移設」を要求したように、辺野古移設実現のために民主党政府に手を貸すつもりはない。仲井間知事は高みの見物をすることにしたのだ。

「冷徹な外務官僚」のつくったシナリオの効果に確信のある佐藤氏は、辺野古移設を阻止するためには、「沖縄が一丸となって(そこには本土や全世界の沖縄関係者が含まれる)、沖縄の民意によって選ばれた仲井間知事が公約を貫くことができるように現実な支援をすることだと筆者は考える。」
としめくくっている。

辺野古移設を阻止するために全世界の沖縄関係者が一丸とならなければならないと述べていることには笑える。普天間基地を辺野古に移設すれば沖縄が消滅するとでもいうのか。そうでなくても沖縄の将来は真っ暗になるというのか。
そうではない。ヘリコプター基地を普天間から辺野古に移すだけのことであり、沖縄全体から見れば大きな変化はない。ただ、基地被害が辺野古に移るという問題なのだ。
辺野古移設は客観的に見れば、それほどたいした問題ではない。それを沖縄が一丸とならなければならないなどとは妄想もはなはだしい。

佐藤氏は現実分析が下手であり、妄想癖が強いようだ。


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