ロシアが誕生させた日本共産党をロシアが危機に陥らせる

ロシアが誕生させた日本共産党をロシアが危機に陥らせる
 
1917年ロシア革命が起こり、ロシア・ソビエト連邦社会主義共和国が誕生した。共産党一党独裁の社会主義国家が登場したのてある。それからわずか5年後の1922年に日本で共産党が設立された。1922年7月15日、堺利彦、山川均、近藤栄蔵ら8人が、極秘のうちに渋谷の高瀬清の間借り部屋に集まって日本共産党を設立した。設立時の幹部には野坂参三、徳田球一、佐野学、鍋山貞親、赤松克麿らがいる。
徳田球一は沖縄出身である。沖縄出身者が共産党設立社の一人だった。徳田球一のことは小学生の頃に教師から聞いた。徳田の徳と球一の球をとって「とっきゅう」と呼ばれていたという。
共産党を結成した人たちはロシアの社会主義国家は労働者を解放し、労働者を自由で平等にする差別のない理想の国家であると信じていた。米国は議会制民主国家であったが資本主義の社会だった。資本主義社会は資本家が労働者を搾取する社会である。共産党を設立したメンバーは、米国は労働者を搾取するブルジョアジーが支配する国、ソ連は労働者を搾取するブルジョアジーの居ない自由で平等な国であると信じていた。米国など資本主義国家の次の段階の国家がソ連のような社会主義国家であると信じていた。だから、米国を否定し日本もロシアのように社会主義国家を設立するべきと考えていた。共産党のメンバーはマルクスやレーニンの理論を信じ、ソ連では理論通りの理想的な社会に向かっている政治が行われていると信じていた。しかし、現実のソ連の実態は違っていた。共産党設立メンバーが信じている国家ではなかった。ソ連の実態を知らなかったから日本共産党はソ連に憧れ続けたのである。

 社会主義ソ連の実態は共産党が信じている社会主義国家とは全然違う国家であった。ソ連は権力者が労働者を差別して搾取する国家であった。権力者に富は集中し、国民は貧困を強いられた。民間人が経営する企業はなかった。企業はすべては国営であり、経営に専門ではない権力者が経営をした。だからソ連の経済は発展しなかった。国民はますます貧困になった。権力者は富み、農民と労働者は貧しくなっていった。貧富の層がはっきりと分かれていたのがソ連社会主義であった。
 経営の能力のない権力者が経営するから経済は落ち込んだ。ソ連の経済は恐慌状態になった。しかし、経営に無能な権力者は経済を復活させることはできなかった。恐慌状態が続いたソ連は経済が悪化していって1991年に崩壊するのである。ソ連崩壊の原因は政治ではなく経済の破綻であった。
 ソ連が崩壊しても日本共産党は社会主義イデオロギーにしがみついた。米国を労働者を搾取する資本主義国家だと非難し、米国に隷属している日本を批判し続けた共産党である。共産党が目指すのは創立した時からずっと同じである。社会主義国家の実現である。しかし、社会主義国家は崩壊したのである。崩壊の現実を共産党は認識するべきであった。共産党は社会主義の矛盾を解明して社会主義と決別するべきであった。しかし、決別しなかった。
民主主義の次に社会主義というのが共産党の描く政治変革である。しかし、東欧の国々は社会主義から民主主義の国になった。民主主義から社会主義になった国は一つもない。それが現実である。共産党は現実に目を背けたのである。
 
 ソ連が崩壊したということは社会主義の崩壊である。ソ連崩壊を真正面から受け止め、社会主義の矛盾を追及していけば社会主義を否定することができたはずである。 
ソ連崩壊後に社会主義だった東欧の国々は次々と議会制民主主義国家になっていった。東欧の歴史的変化を見れば独裁政治である社会主義の次に民主主義の議会制になることを認識できたはずである。しかし、共産党は社会主義にこだわった。民主主義の次に社会主義になると信じてきた。ロシア革命の虜になっているのが共産党である。
現実に目を背ける共産党を、共産党を誕生させたロシアががたがたにした。それがロシアのウクライナ侵攻である。ウクライナに侵攻したロシアのやっていることこそが社会主義ロシアの本当の姿である。

社会主義時代にウクライナで起こったことである。ウクライナの1932年の穀物生産は1400万トンであった。前年同様の不作であった。不作の原因は政府が強引に進めた農業の集団化による混乱であった。1932年のウクライナは全ソ連の穀物の27%を収穫した。しかし、政府がウクライナに課した政府調達ノルマは全ソ連の38%であった。独裁国家のロシアは政府が決めたノルマを徹底して守らせる。
政府はノルマ通りに38%を調達しようとした。ウクライナの農民はこの調達に抵抗した。しかし、モスクワの党・政府は強引に調達を進めた。党の活動家は農家から穀物を押収する法的権利を得た。党活動家の一団が都市からやって来て農家の一戸一戸を回り、床を壊すなどして穀物を探した。飢えていない者は食物を隠していると疑われた。食物を隠している者は社会主義財産の窃盗として死刑とする法律が制定された。
ウクライナ農民の政府ノルマによる飢饉が起こった。1933年春に飢饉はピークを迎えた。飢饉はソ連の中ではウクライナだけでなく北カフカスでも起きた。都市住民ではなく食糧を生産する農民が飢えたのである。穀物生産の少ないロシア中心部には飢饉が起こらず、穀物生産する農民の住むウクライナに飢饉が起きたということは異常な事態である。
農場は農民の所有ではなく政府の所有である。だから、生産物は農民のものではなく政府のものである。それが社会主義のルールである。社会主義独裁国家ロシアだから農民に飢饉が起きたのである。都市の住民は満足な食事ができたが、農民はパンがなく、ねずみ、木の皮、葉まで食べた。人肉食いの話も多く伝わっている。村全体が死に絶えたところもあったという。
これが社会主義国家ソ連の実態である。つまり社会主義の実態は国民を差別し虐待し一部の権力者が富者になる独裁国家であったのだ。
ソ連は1991年に崩壊した。経済が崩壊したのであってロシアの独裁政治が崩壊したのではなかった。プーチン大統領は経済を見事に復興させた。経済が復興すると社会主義の独裁政治も復活させた。それがロシア軍のウクライナ侵攻である。
ウクライナに侵攻したロシア軍は都市を破壊し、民間人を無差別に虐殺した。社会主義国家であったロシアでやっていたことを再現したのがウクライナ侵攻である。  
ウクライナ侵攻と同じことが1956年にも起きた。ハンガリー動乱である。ハンガリー動乱でもウクライナと同じように街は破壊され多くの民間人が虐殺された。
労働者を虐殺するのは共産主義に反するとロシア政府批判が広がった。中心となったのが反スターリン主義者である。日本の共産党でも反スターリン主義者がロシアに抗議するように要求したが共産党のリーダーたちは抗議しなかった。反発した反スターリンのメンバーは共産党を脱退した。脱退して結成したのが革マル派と中核派である。革マル派と中核派は元は共産党員だったのだ。
 
 革マルのブログを見た。ロシアのウクライナ侵攻を批判していた。その一部を紹介する。
ウクライナの数百万人民に餓死を強制したスターリン
 ウクライナの軍・民兵と人民は、壮絶な戦いを展開して首都キエフに迫るロシア侵略軍を撃退した。完全包囲下のマリウポリにおいては、いままさに敢然と戦いつづけている。命をかけ団結して戦う彼らの心には〝民族の歴史〟が刻みこまれているにちがいない。在日のウクライナの人々は訴えていた、「ウクライナ人はスターリンとずっとたたかってきた」と。ウクライナ人民はプーチンとスターリンとを重ねあわせ、彼らの祖父母・曽祖父母らにたいするスターリンの抑圧・弾圧にたいする怒りと憎しみとを強く強く燃やしているのだ、と私は感じる。
 ウクライナの人々がスターリンの歴史的犯罪の第一にあげているのは「ホロドモール」、一九三二~三年にウクライナにおいて数百万人もの人民が餓死させられた大事件である。〔ウクライナ語で「ホロド」は飢饉、「モール」は疫病を示す。〕
 私は思う。われわれ反スターリン主義者は、スターリンがウクライナの人民に加えた歴史的大犯罪を、決起したハンガリー労働者にたいする残忍な弾圧などのスターリニストの数多の大罪と重ねあわせて身体的な憎しみをもって弾劾せずにはいられないのだ。われわれはウクライナ人民の怒りと闘志を共有し、彼らと連帯してたたかうのである。
 同時に、プーチンが鼓吹しロシアのスターリニスト残党が唱和しているスターリン神話(重工業化と対独戦勝利によって超大国ソ連を建設したというそれ)の虚偽性をロシアの労働者階級・人民に暴きださなければならない。そのためにも、「ホロドモール」の大犯罪を暴きだすことが不可欠であると私は思う。「革マル派ブログより」
 ロシアについて革マルの評論は色々参考になる。
共産党を設立したメンバーたちはロシア批判には消極的であった。だから、スターリン批判も避けた。共産党は「ソ連を先頭とする社会主義陣営」とスターリン批判が拡大するなかでもロシアを社会主義のリーダーとしていた。

 日本共産党に対するイメージは
〇ロシア革命が原因で誕生した社会主義政党
〇日本の米軍基地撤去
〇自衛隊を解消
〇日米安保破棄
等々である。
共産党は社会主義国家であったロシアとイメージがダブるだろう。ウクライナに侵攻したのはロシアである。ロシア軍がウクライナでやった残虐さは共産党と重なるだろう。共産党のイメージがプーチン独裁のロシア侵攻によって大きくダウンしたに違いない。イメージダウンを防ごうと共産党は自衛隊活用を主張するようになった。 
自衛隊を否定してきた共産党が自衛隊を活用するというのは矛盾している。他の政党やマスメディアは自衛隊活用を批判している。
共産主義・社会主義はロシアを連想する。ロシアはウクライナ侵攻し残酷な虐殺を続けている。ロシアのウクライナ侵攻が共産主義・社会主義の否定につながる。これからの共産党は「共産主義・社会主義」を口にすることは難しくなるだろう。創立100年目の共産党を、共産党を誕生させたロシアが存続危機に陥らせている。
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