ウクライナ侵攻がフィンランド、スウェーデンのNATO加入を決心させた 民主主義国は連帯する

ウクライナ侵攻がフィンランド、スウェーデンのNATO加入を決心させた 民主主義国は連帯する
 
フィンランドとスウェーデンがNATO加入に意欲を見せた。フィンランドとロシアは1340キロにわたって国境を接している。ウクライナよりも長い。そのフィンランドがNATOに加入するというのである。
 プーチン大統領はウクライナがNATOに加入するのを阻止するためにロシア軍を侵攻させた。ところがウクライナ侵攻を見て、国の安全に危機感を持つようになったのがフィンランドとスウェーデンである。フィンランドはウクライナと同じように国境がロシアと接している。ロシア軍に侵攻される危険性が高い。ロシア侵攻をさせないためにはNATO加入が一番いい方法である。
フィンランドでは、議会に情報機関による安全保障報告が提出される予定である。サンナ・マリン首相は、NATO加盟申請をめぐる政府内の議論を「6月よりも前に終わらせる」予定だと話している。6月にはNATO申請をする可能性が高い。
スウェーデンの与党・社会民主党は伝統的にNATO加盟には反対してきた。しかし、ロシアのウクライナ侵攻を受け、その立場を再考するとしている。同党は声明で、「ロシアのウクライナ侵攻により、スウェーデンの安全保障の立場は根本的に変わった」と述べた。スウェーデンのNATO加入も確実である。

ウクライナ侵攻前、ロシアはNATOにこれ以上の拡大を止めるよう要請していた。ロシアは、NATO拡大の可能性には明確に反対の意を示している。ロシアは、「NATOは平和と安定を保証する同盟ではなく、拡大しても欧州大陸に今以上の安全保障はもたらさない」と述べ、フィンランドとスウェーデンがNATOに加盟した場合には、軍事的・政治的な影響」が待っていると警告している。ということは加盟手続きをしようとしたらウクライナのようにロシア軍を侵攻させると警告していることになる。
ウクライナで戦争をしているロシア軍がフィンランドに侵攻してロシア軍の戦域を拡大することができるだろうか。ロシア軍はウクライナで苦戦している。首都キーウの西側では敗退している。ロシア軍は戦略を変更して東南部に集中することになった。ウクライナだけでも苦戦しているロシア軍がフィンランドに侵攻する戦力はないだろう。警告はするだろうがロシア軍を侵攻させることはできないだろう。
フィンランドは1995年にEUに加入している。しかし、NATOには加入しなかった。
フィンランドはロシア革命で成立したソビエト連邦との戦争を1939年から1945年までやった。戦争で幾らかの土地をソ連に奪われたが、ソ連に併合されたバルト三国とは異なり独立を維持した。
フィンランドは人口や経済規模は小さいが一人当たりGDPでは世界のトップクラスである。、豊かで自由な民主主義の国である。フィンランドは2014年のOECDレビューにおいて「世界でもっとも競争力が高く、かつ市民が生活に満足している国のひとつである」と報告された。フィンランドは収入、雇用と所得、住居、ワークライフバランス、保健状態、教育と技能、社会的結びつき、市民契約、環境の質、個人の安全、主観的幸福の各評価において、全ての点でOECD加盟国平均を上回っている。
外交・安全保障やエネルギー政策を巡り東西の綱引きをしながら中立的外交を上手にやって来たのがフィンランドである。だから、EUには加入したがNATOには加入しなかった。政治・軍事では中立の立場を維持していたのがフィンランドである。
フィンランドがNATO加入に動いたきっかけがロシアのウクライナ侵攻であった。ロシアの目的はウクライナを制圧して大統領や市長などの権力者たちを全て排除して親ロシア派に代えててロシアの支配下にすることである。ロシアのウクライナ侵攻の目的をフィンランドは知った。ウクライナの次にフィンランドに侵攻するかもしれない考えるのは当然である。ロシアの侵攻を防ぐ方法はNATOに加入することである。ウクライナと同じような侵攻をされないためにNATOに加入することをフィンランド政府は決心したのである。
フィンランドの軍高官は、軍用ドローンの購入に新たに1400万ユーロ(約19億円)を投じる計画だ。スウェーデンも、2022年度の軍事費を30億スウェーデンクローナ(約395億円)増額する。
ロシア軍は、フィンランドと合同軍事演習をしていたスウェーデンの領空を爆撃機など4機で侵犯した。同国メディアは、そのうち2機が核兵器を搭載していたと報じた。ロシア機はフィンランド領空にも侵入した。
ロシア軍はフィンランドとの国境に向けてミサイルシステムを含む軍事装備を移動している。NATO加盟を検討するフィンランドを威圧しているロシア軍である。しかし、この行為は逆効果である。両国がNATO加入を考えたのはロシアがウクライナ侵攻をしたからである。侵攻から守るためにはNATOに加入するしかないと思っているフィンランドに侵攻するぞと軍事装備を移動させればますますフィンランドはNATO加入の決心を強くするだけである。ロシアはフィンランドにNATOに早く加入しろと言っているようなものである。
フィンランドのマリン首相は13日、スウェーデンの首都ストックホルムでアンデション首相とロシアによるウクライナ侵攻を受け、両国の安全保障環境などについて協議した。


会談前に歩くスウェーデンのアンデション首相(左)とフィンランドのマリン首相=ストックホルムで2022年4月13日。

マリン首相は記者会見し「北大西洋条約機構(NATO)に加盟しなければ安全の保証が得られない」と述べ、加盟への意欲を表明した。申請の是非を数週間以内に決定するとした。アンデション首相も早急に判断する意向を示した。
フィンランドとスウェーデンは議会制民主主義国家である。自由と民主主義を守るために独裁国家ロシアの侵攻を防がなければならない。NATOは議会制民主主義国が結集する軍事同盟である。NATOは加盟国の領土及び国民を防衛することが最大の責務とする。NATO加盟国は米国、イギリス、ドイツなど30カ国である。フィンランドとスウェーデンが加入すれば32カ国になる。戦争すれば確実に敗北するNATOとの戦争をロシアはしない。だから、フィンランドとスウェーデンは民主主義を守るためにNATOに加入しようとしているのである。
NATOは東のソ連と西の民主主義国家との冷戦が激しくなった1949年に米国や英国、フランスなど12カ国で設立した国際軍事機構である。今では3倍近くの30カ国が加入している。激増した原因は議会制民主主義国家が増えたからである。民主主義国家は増え続け、独裁国家は減り続ける。それが歴史の流れである。
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