ウクライナ戦争で判明した民主主義が欠落した学者・ジャーナリスト

ウクライナ戦争で判明した民主主義が欠落した学者・ジャーナリスト
 
ウクライナ戦争は民主主義国家ウクライナと独裁国家ロシアとの戦争である。ロシアはウクライナを支配する目的でロシア軍を侵攻させた。ウクライナは自由と民主主義を守るためにロシア軍と戦っている。
 ウクライナ戦争の本質は民主主義と独裁主義の戦争である。民主主義と独裁のどちらを支持するかを念頭に入れてウクライナ戦争について意見を述べるべきである。ところが多くの政治学者やジャーナリストは民主主義の精神が欠落しているようである。ウクライナとロシアを対等に置いて評論を展開している。

国際ジャーナリストの高橋浩祐氏は アメリカ・シカゴ大の国際政治学者、ジョン・ミアシャイマー教授の論文を紹介している。ロシアのウクライナへの軍事侵攻前後にミアシャイマー教授が出演したYouTubeの再生回数が100万回以上に達したという。ミアシャイマー教授の「今回のウクライナ戦争の原因を作ったのは西側諸国、とりわけアメリカだ」の発言が世界的に注目されていると高橋氏は述べている。
世界的に注目されているかもしれないが、ミアシャイマー教授は民主主義が欠落している。ミアシャイマー教授を批判する。
① NATOの東方拡大
ミアシャイマー教授がロシア軍がウクライナに侵攻した1つ目の原因は、北大西洋条約機構(NATO)の東方拡大政策にあるという。
ミアシャイマー教授は、1991年のソ連崩壊後、弱体化したロシアが⒉度にわたって甘んじてNATOの東方拡大を受け入れてきたと指摘する。1度目は1999年の旧ソ連衛星国のポーランド、チェコ、ハンガリーのNATO入り。⒉度目は2004年のバルト⒊国やルーマニアなど7カ国のNATO加盟である。ミアシャイマー教授の指摘は間違っている。ロシアは甘んじて受け入れたのではない。受け入れることも受け入れないこともロシアはできない。それぞれの国は独立国である。NATOに加入するか否かはそれぞれの国が決めることである。ロシアには関係ない。政治専門家なら独立国の選択は独立国の意思で決めることを認識するべきである。
もともとこれらの国々は、西側のNATOに対抗し、ソ連を盟主とした社会主義国であった。東ヨーロッパ諸国が結成した軍事同盟のワルシャワ条約機構のメンバーだったからNATOとは対立していた。しかし、冷戦終結に伴い、1991年に東側のワルシャワ条約機構が解散した後に社会主義国から民主主義国になった。民主主義国家になったからロシアから離れた。
ロシアは甘んじてNATOの東方拡大を受け入れてきたとミアシャイマー教授は指摘しているがそれは間違っている。そもそも「甘んじて」の内容を具体的に説明していない。政治学者として失格である。
ミアシャイマー教授が指摘しているようにソ連は1991年に崩壊した。崩壊した原因はロシアの経済破綻であった。国家の財政危機に陥ったロシアはソ連加盟国を武力で支配することができなくなった。ロシアに支配されていた東欧の国々は次々とロシア支配から離れて民主主義国家になっていった。それを象徴するのがベルリンの壁の崩壊である。
ベルリンの壁崩壊は、1989年11月9日に、それまで東ドイツ市民の大量出国の事態にさらされていた東ドイツ政府が、その対応策として旅行及び国外移住の大幅な規制緩和の政令を「事実上の旅行自由化」と受け取れる表現で発表したことで、その日の夜にベルリンの壁にベルリン市民が殺到し混乱の中で国境検問所が開放され、翌11月10日にベルリンの壁の撤去作業が始まった出来事である。
これにより、1961年8月13日のベルリンの壁着工から28年間にわたる、東西ベルリンが遮断されてきた東西分断の歴史は終結した。東欧の民主革命を象徴する出来事であり、この事件を皮切りに東欧諸国では続々と共産党政府が倒され民主主義国家になった。そして、翌1990年10月3日に、「ドイツ民主共和国に再設置された各州がドイツ連邦共和国に加盟する」という名目(実質的には編入)にて、東西ドイツの統一がなされた。


ミアシャイマー教授はソ連がロシア中心の独裁国家であったこと。東欧の社会主義国家は民主主義国家を目指してロシアから離れていったことを述べていない。政治にとって独裁か民主主義かは非常に重要なことである。ところが民主主義を代表する米国の政治専門家でありながら民主主義と独裁主義を同列に置くのである。ミアシャイマー教授には民主主義の精神が欠落している。

ソ連は社会主義国家と見られていたが実態は独裁国家であった。独裁支配から解放されたいとソ連時代にも労働者、市民の民主主義運動は起こった。しかし、ロシアによって徹底して弾圧された。今のロシアのように。
ロシアによる民主主義弾圧で有名なのがハンガリー動乱である。ハンガリーの首都ブダペストで1956年10月23日、民主化やソ連軍撤退を要求する学生や労働者のデモが発生。ソ連は軍を出動させ、市民と衝突した。事態はいったん正常化に向かったものの、ナジ首相がワルシャワ条約機構からの脱退とハンガリーの中立を宣言したのをきっかけに、ソ連軍が新たに越境。11月4日にブタペスト市内へ突入すると、ハンガリー軍、市民義勇軍と市街戦を展開した。
優勢なソ連軍にハンガリー軍と市民義勇軍は頑強に抵抗したが、同日中にはソ連を後ろ盾とするカダル政権の誕生が宣言され、国内の抵抗もおよそ1週間で鎮圧された。ナジ首相は国家転覆罪に問われ、2年後に処刑された。この動乱での死者は2700人に達し、約20万人のハンガリー市民が西側に逃れたといわれる。
これはウクライナの写真ではない。ハンガリーの写真である。



ロシア軍は昔から住宅を破壊し民間人を虐殺していたのである。

ミアシャイマー教授はハンガリー弾圧には触れない。東欧の国々がロシアから離れて民主主義国家になっていったことも無視するのである。
東欧の国々はロシアの支配を嫌って民主主義国になったから民主主義国の軍事同盟であるNATOに加盟したのである。ところがミアシャイマー教授は冷戦後、唯一の超大国となったアメリカが1990年代後半にNATOの東方拡大を本格化させたからNATOに加入したというのである。嘘である。ロシア支配から解放された東欧の国が次々と民主主義国家になり、同じ民主主義の西欧の国々と交流を深めていった。民主主義国家になったことを嫌っている独裁国家ロシアの介入を恐れた東欧の国々だったからNATOに加入したのである。NATO加入は東欧の国々が望んだのであってアメリカの東方拡大計画があったからではない。東欧に民主主義国家が次々と誕生したからである。東欧の民主主義国家であるフィンランドとスウェーデンは加盟していない。国民が加盟に賛成しなかったので加盟しなかった。しかし、ロシアのウクライナ侵攻が原因で加盟支持者が増えているという。過半数の賛成があれば加盟を申し込むだろう。

2008年4月にルーマニアの首都ブカレストで開かれた会議で、ブッシュ・アメリカ大統領が旧ソ連のウクライナとジョージア(旧グルジア)のNATO加盟を提案しウクライナとジョージアもNATO加盟を明確に表明したと思っているミアシャイマー教授は「ロシアはこの時、明確にウクライナとジョージアのNATO入りはロシアの国の存亡に関わる脅威であり、受け入れられないと主張した」と指摘し、今回のウクライナ戦争の起源だと言い切っている。なぜ、ロシアの存亡に関わる脅威であるかをミアシャイマー教授は説明しない。
社会主義が崩壊したロシアは資本主義になり、大統領、議員を選挙で選ぶ議会制民主主義国家になった。ロシアは米国と同じ国家になったのである。NATOと同じ民主主義国家であるならウクライナとジョウジアがNATOに加盟しても問題はない。ロシアもNATOに加盟すればいい。しかし、プーチン大統領は2国のNATO加盟に脅威を感じ、受け入れることができないと主張した。なぜか。理由は明確である。プーチン大統領はロシア独裁国家の再生を目指していたからである。ロシア独裁国家にとって東欧の国の民主主義国家のNATO加盟は脅威であったのだ。プーチン大統領が米国と同じ民主主義国家を目指していたなら脅威を感じることはなかった。

米国は大統領は2期までで3期はない。それは独裁国家になることを避けるためである。ロシアも米国に習って大統領は2期までとなっていた。ところがロシアの憲法には抜け道があった。3期連続で大統領にはなれないが大統領を辞めてから4年後に立候補することができた。プーチンは2期務めた後、子飼いのメドベージェフに大統領をさせ、自分は首相になった。そして、4年後に立候補して再び大統領になった。プーチン氏は着々とプーチン独裁国家を築いていったのだ。大統領が長機関居座れば独裁国家になるという米国の考えはプーチン大統領が証明した。
ソ連に加入していた時の東欧の国々は独裁国家であった。だから東欧の国々は独裁者プーチン大統領と同じようにNATOは敵であり脅威を感じていた。しかし、国民は立ち上がり独裁者を屈服させて民主主義国家になった。民主主義国家になるとNATOと親しくなった。ロシアも民主主義国家になっていたらNATOと親しい関係になっていただろう。プーチン大統領がロシアを独裁国家にしたからNATOに脅威を感じるのである。
2014年のロシア軍によるクリミア侵攻について、ミアシャイマー教授は「クリミア半島にはセバストポリという。重要な海軍基地がある。ロシアにとってNATOの基地にさせることは考えられない。これがロシアがクリミアを奪った主な理由だ」と主張する。クリミヤがNATOの基地になると思ったのはロシアがプーチン独裁国家だったからである。民主主義国家であったならNATOの基地になるとは思わなかっただろうし、ウクライナの領土を奪うことはしなかっただろう。独裁国家だからクリミヤを奪ったのである。
アシャイマー教授は米国の政治学者でありながら民主主義と独裁の違いを理解していない。
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