朝日新聞の「野党一本化なら」仮定の愚かさ

朝日新聞の「野党一本化なら」仮定の愚かさ

朝日新聞は、今回の衆院選は、政権批判票の受け皿となる野党が分散したのが大きな特徴てあり、それが原因で自民党が大勝したと報じている。
自民党が大勝したのは複数の野党候補(野党系無所属を含む)が競合した「野党分裂型」226選挙区のうち、約8割の183選挙区で与党候補が勝利をおさめたからだと述べた朝日は、各野党候補の得票を単純合算した試算を出した。すると、3割超の63選挙区で勝敗が逆転した。そのことを根拠にして野党の分散は与党側に有利に働いたと朝日は述べている。

朝日は与党対野党にこだわっている。野党政党の理念や政策の違いや保守系、左系の区別はしていない。
朝日は、野党が分散した最大の原因は、民進党の分裂だと言い、民進の前原誠司代表が衆院選前に小池百合子・東京都知事率いる希望の党への合流を表明。民進で立候補を予定していた人は希望、立憲民主党、無所属に3分裂したと述べている。しかし、朝日は分裂した事実を報じるだけで、分裂した原因を説明していない。
民進の前原代表が衆院選前に希望の党への合流を表明したのは、民進党の共産党との共闘を嫌ったからである。共産党との共闘を避けると同時に共産党と共闘をしようとしているリベラル派を排除する目的があって希望の党への合流を前原代表は目指したのである。
小池代表が憲法改正、安保法案賛成ではない民進党議員は排除すると宣言した時から、民進党は保守と左翼のリベラル派に分裂した。だから、希望の党と立憲民主党が共闘するのはあり得ないことである。二つの党の選挙共闘は最初からなかった。そして、希望の党と共産党や社民党との共闘の可能性も最初からなかった。

民進党の3分裂は野党一本化の崩壊の始まりであった。
維新の党に続き希望の党が誕生したことによって野党が保守政党と左系政党にはっきりと別れた。だから野党統一はなくなったのである。民進党の3分裂の原因を認識すれば朝日の「野党一本化」を仮定することはできない。そうであるのに「野党一本化」を仮定した朝日は愚かである。

民進党が保守と左翼が混在し、野党であるがゆえに保守の安倍政権批判に徹することで民進党は次第に左系化していき、左翼のリヘラル派が民進党の主導権を握っていった。そして、共産党との共闘を実現させたのである。
共産党、民進党、社民党の左翼三党の共闘をマスコミは野党共闘と呼んできたが、民進党が保守系の希望の党、左系の立憲民主党に分裂することによって、共産党、立憲民主党、社民党の左翼三党の共闘を野党共闘と呼ぶことはできなくなった。三党以外に希望の党と維新の党が存在するからだ。
野党が保守と左翼に分裂することによってこれからの朝日は与党対野党の対立構図を設定して、野党=反与党の記事を書くことが難しくなるだろう。

朝日は反自民であり、安倍政権批判に徹しているが、朝日の記事に便乗して安倍政権を批判してきたのが民進党、共産党、社民党の野党三党であった。加計学園問題では朝日と野党三党のコンビで安倍政権を窮地に追いやった。しかし、希望の党の誕生によって朝日と野党三党のコンビは崩れた。これからは加計学園のような仕掛けは難しくなっていくだろう。

野党が保守政党希望の党、維新の党と左系政党共産党、立憲民主党、社民党に別れたことで朝日は与党対野党の対立構図を設定することが難しくなっていくだろう。共産党は、希望の党は自民党の補完勢力だと決めつけている。共産党が自民党の補完勢力であると決めつけている希望の党と共闘することはない。今まで野党共闘を率先してきた共産党が野党の一本化はできなくなっていく。共産党と共闘するのを嫌った民進党議員が集まった希望の党であるから共産党との共闘は希望の党でお断りであるが、共産党も希望の党との共闘はお断りである。
全ての野党が共闘することはこれからはあり得ないことである。

朝日は今度の衆議院選挙で「野党一本化」の仮定をしたが、一本化ができないのに無理に一本化したのであり、朝日の一本化の仮定は最初から成り立たないものであり、なんの意味もない。
一本化の仮定によって3割超の63選挙区で勝敗が逆転の試算が出たといっても、それは非現実的な試算であり、虚しい試算である。野党が一本化することはあり得ないことであり「野党が一本化していたなら」は成り立たない仮定である。

立憲民主党の長妻代表代行は
「多くの選挙区で(与野党)一騎打ちになっていなかった。今後、野党共闘の道と、圧倒的に強い野党で政権をうかがう二つの方法がある。これから議論したい」
と述べたが、野党共闘の道は閉ざされた。今後は保守野党の共闘と左系野党の共闘の二つに分かれた共闘が展開されていくだろう。
立憲民主党の玉木氏は自民党の圧勝について「野党が割れたことに尽きる」と野党候補の乱立が主要因だとの認識を強調したが、その指摘は間違っている。自民党が圧勝したのは野党に自民党に勝る政策をアピールした政党がなかったからである。
政策で自民党と真っ向から闘える政党が登場しない限り、自民党の圧勝は続くだろう。立憲民主党が政権を握りたいなら保守系政党と左系政党の勢力を客観的に視るべきである。

保守系政党
自民党、希望の党、維新の会 
342議席
    公明党+なら371議席
左系政党
共産党、社民党、立憲民主党
          65議席
左系政党が共闘してもわずか65議席である。政権ははるかに遠い。左系政党の立憲民主党が政権を握るのは遥かかなたの夢である。
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