唐松林の中に小屋を建て、晴れた日には畑を耕し雨の日にはセロを弾いて暮したい、そんな郷秋の気ままな独り言。
郷秋<Gauche>の独り言
「考える人」2008年秋号
考えてもみれば、発売から一カ月以上も経った雑誌について書くなんぞは、まったく考えていない者のすることである。が、その雑誌が年に4回しか刊行されない季刊雑誌であるなれば、今号発売から一カ月と云うことは次号の発売まであと二カ月あるということになる訳であるから、まぁ許される範囲だろうと、自己弁護してみる。10月29日に発売になった『考える人』2008年秋号の話である。
2008年秋号の特集は「堀江俊幸と歩く パリとその周辺」。郷秋的には「カルチェラタンのピアノ工房。記憶の中の音色。」が一番印象的だった。「パリ左岸」でも、もはや少なくなった云うピアノ再生工房を取材した記事である。道具と名のつくものであればなんであれ、修理しながらでも長く使うことが好きな郷秋だから、興味深く読むことができたのかも知れないが。
レギュラーの記事では、やり今森光彦氏の「琵琶湖水系の旅」だ。琵琶湖を知り尽くした今森氏だからこそ活写できる、さりげない琵琶湖をめぐる数葉である。郷秋のフィールドたる恩田の森も琵琶湖の大きさと多様性とを持っていたならば、郷秋の写真ももう少し良いものになるだろうとは、自分の感性と技術とを棚に上げての戯言である。
いまひとつとあげるならばこれもまた毎回楽しみにしている、さげさかのりこ氏の「娘と私」である。氏の娘であるハナちゃんの「あ~きょうはたのしかった。もう一回、さいしょからやりたい」とは、何と真理を突く奥の深い一言であることか。楽しい事だけを繰る返すことができるのならば、郷秋だって、してみたい。
原 武史氏(明治学院大学教授、日本政治思想史)の新規連載「西武と郊外の戦後思想史」の第一回「ひばりヶ丘前史」は、西武線およびその沿線についてほとんど何も知らない郷秋にもなかなか面白内容であった。ただ、この連載が今後どのように展開し「戦後政治思想史」を検証することになるのか、本文内容よりも今後の論理展開の仕方が大いに気になる郷秋である。
刊誌「考える人」2008年秋号 発売中 新潮社
B5判 定価1,400円(税込み)