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平安夢柔話

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平安朝の母と子

2012-01-23 11:21:59 | 図書室1
 今回は、平安時代を扱った歴史評論の本を紹介します。

平安朝の母と子 貴族と庶民の家族生活史
 著者=服藤早苗 発行=中央公論新社・中公新書1003 価格=861円

☆本の内容
 今日、子育てノイローゼによる子どもの悲劇、夫婦関係のひずみによる母子癒着、そのための家庭内暴力などの子どもの病理等々、子育てによる様々な問題が生じている。親子関係、子育て、子どもの生活は歴史的に変化をしてくるが、本書では「家」の成立途上にある、また女性の男性への従属・子どもの父権への従属が開始される、社会の一大転換期であった王朝時代の貴族と庶民の家族生活史に、これら今日的問題の具体的あり方を探る。

[目次]

 序章 ある母子の話
 第1章 さまざまな結婚のかたち
 第2章 子育ての単位・家の成立
 第3章 生命を賭した出産
 第4章 子育てと生活
 第5章 たくましく生きる子どもたち

 平安時代中期の貴族や庶民の家庭生活について、「大鏡」「栄花物語」「今昔物語」などの古典文学、「小右記」などの貴族の日記からエピソードを引用しながら、主に女性と子供の立場について論じた本です。

 まず冒頭部分に、子供を人質にして盗賊から逃げる母親という、かなりショッキングな内容の話が載っていて、「いったいこの本、どんな内容の話が出てくるのか…」とちょっとどきどきしてしまいました。たしかに、今まで私が知らなかった色々なエピソードが載っていて、「えっ」と驚くような話が満載で、貴族と庶民の家族生活のエピソードが興味深ったです。。印象に残ったものをいくつか紹介します。

☆道長の息子たちのうち、倫子所生の頼通と教通は、結婚の時期も記録に残っており、「栄花物語」等にも「婿取り」という記述が見られるが、明子所生の頼宗と能信は、「婿取り」という記述が見られない、つまり、正式な手順を踏んで婿入りしたかは不明とのこと。特に能信に関しては、結婚の時期さえ不明だそうです。
 ただ、同じ明子所生でも、倫子の養子となっていた長家に関しては、婿入りの記録が残っているそうです。
 娘に関しても、倫子所生の娘たちは、天皇や皇太子に入内していますが、明子所生の娘たちは皇太子を降りた親王や臣下と結婚していますよね。やっぱり、明子所生の子供たちは一段下に見られていたのね。

☆「春記」を著した藤原資房は、舅の三河守源経相に経済的な援助を受けていたが、経相の死後、遺産相続を受けられず、その時の苦悩を日記に書いています。その原因は、経相の妻(後妻で、資房妻の実母ではない)が、遺産を全部持っていってしまったからのようです。
 もちろん資房は、経相の後妻のことを日記でさんざん悪く書いていますが、この女性、経相と協力して家政を取り仕切ったり、従者の統括を行ったりなど、なかなかやり手だったらしい。平安時代の強い女性をまた一人発見したようで、ちょっと嬉しかったです。

☆この時代の出産は命がけ。出産で命を落とした女性を挙げてみますと、天皇の后妃では、藤原安子、藤原定子、藤原嬉子、藤原(女原)子、貴族の妻では藤原教通の妻や藤原行成の妻など、更には「更級日記」の作者の姉もそうですよね。
 特に、藤原教通の妻となった藤原公任女は、十代前半の若さで初産を体験し、そのあと、6~7人の子を産み、最後の子を産んだ直後に亡くなります。肉体的にもかなり負担だったのでしょうね。このような女性、意外と多かったのかもしれません。

☆この時代は、子供も命がけ。経済的な理由から捨て子も多かったそうです。勘当されて一人でたくましく生きていく子供もいたとか…。女童や牛飼い童なども、一人でたくましく生きていった子供たちの良い例ですね。

 この本を読んだ感想は、平安時代の家族も色々な形態があったようで、それがとても興味深かったことと、「この時代の女性や子供たちは大変だったのだなあ」ということ。
 でも、どんな時代に生まれても、人はそれなりに苦労するし、それと同時に喜びや楽しみもあるのだということも感じました。人はそれぞれの時代に順応し、たくましく生きていくことが求められるのかもしれません。

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