本日は久しぶりに本の紹介をしたいと思います。
瀬戸内寂聴著 『女人源氏物語』
私がこの本と出会ったのは約15年ほど前です。題名の通り、『源氏物語』に登場する女君やおつきの侍女たちが語るという、全く新しいスタイルの『源氏物語』です。
購入してきてから、あっという間に全5巻を読んでしまいました。
この本の良いところは、とにかくわかりやすくて入りやすい所です。この本を読む前に私は円地文子さん訳と与謝野晶子さん訳の『源氏物語』を読んでいたのですが、登場人物の性格や行動などいまいちわかっていなかったところがありました。そんな私でしたが、瀬戸内さんの『女人源氏物語』を読んで、今までぼんやりとしていた部分がはっきり見えたという気がしました。
例えば藤壺の宮がその良い例です。
藤壺の宮という人は、原文や現代語訳を読んでもなかなか人物像がつかめない人です。唯一、光源氏と二人で六条御息所の娘(後の秋好中宮)の入内について密談する場面で、「やり手でしたたかな女性なんだな」というイメージを受ける程度でしかなかったのでした。
しかし彼女は、光源氏の父桐壺院の女御でありながら物語の最初の方で光源氏と密通し彼の子供を身ごもってしまいます。その皇子は桐壺院の皇子として育てられ、その皇子がやがて帝位につく。その後、光源氏と藤壺の宮はそのことに一生苦しむこととなる。さらに光源氏は晩年、降嫁してきた若い女三の宮を柏木という若い男性に密通され、二人の間に生まれた子供を自分の子として抱かなければならなくなったという因果応報が、『源氏物語』の大きなテーマの一つです。なので、藤壺の宮は重要な登場人物なのですが、物語を読んでいると非常に影が薄く感じられます。
おそらく紫式部は、物語の中でも大変身分が高い藤壺の宮(彼女は先帝の皇女で、後に桐壺院の中宮となります。)という女性に配慮し、わざと影を薄くして描いたのでしょう。
なお、光源氏と藤壺の宮の出会いを綴った「かがやく日の宮」という失われた巻があったという説もあるようですが、詳しいことはわからないというのが現状です。
それはともかくとして、『女人源氏物語』には藤壺の宮の侍女、弁の君の口を通して彼女と光源氏の出会いや心の動きがかなり具体的に描かれています。特に、光源氏が元服して左大臣の娘葵の上と結婚したとき藤壺の宮は、「葵の上さまは私より一つ年下だけなのね。」ということを言ったという記述があります。ここを読んだとき、「そうなんだ!藤壺の宮は葵の上をかなり意識していたのだ」と、まるで目からウロコが落ちるような気がしました。
このように、この『女人源氏物語』は「なるほど!」というエピソードが満載です。現代語訳だけでは『源氏物語』があまりよくわからなかったという方には絶対お薦めの本です。
☆単行本
①女人源氏物語 上〔新装愛蔵版〕 瀬戸内 寂聴 著
1999/06 2,940 小学館
②女人源氏物語 下〔新装愛蔵版〕 瀬戸内 寂聴 著
1999/06 2,940 小学館
☆文庫本
①女人源氏物語 1 瀬戸内 寂聴 著
1992 480 集英社
②女人源氏物語 2 瀬戸内 寂聴 著
1992 480 集英社
③女人源氏物語 3 瀬戸内 寂聴 著
1992 460 集英社
④女人源氏物語 4 瀬戸内 寂聴 著
1992 460 集英社
⑤女人源氏物語 5 瀬戸内 寂聴 著
1992 480 集英社
瀬戸内寂聴著 『女人源氏物語』
私がこの本と出会ったのは約15年ほど前です。題名の通り、『源氏物語』に登場する女君やおつきの侍女たちが語るという、全く新しいスタイルの『源氏物語』です。
購入してきてから、あっという間に全5巻を読んでしまいました。
この本の良いところは、とにかくわかりやすくて入りやすい所です。この本を読む前に私は円地文子さん訳と与謝野晶子さん訳の『源氏物語』を読んでいたのですが、登場人物の性格や行動などいまいちわかっていなかったところがありました。そんな私でしたが、瀬戸内さんの『女人源氏物語』を読んで、今までぼんやりとしていた部分がはっきり見えたという気がしました。
例えば藤壺の宮がその良い例です。
藤壺の宮という人は、原文や現代語訳を読んでもなかなか人物像がつかめない人です。唯一、光源氏と二人で六条御息所の娘(後の秋好中宮)の入内について密談する場面で、「やり手でしたたかな女性なんだな」というイメージを受ける程度でしかなかったのでした。
しかし彼女は、光源氏の父桐壺院の女御でありながら物語の最初の方で光源氏と密通し彼の子供を身ごもってしまいます。その皇子は桐壺院の皇子として育てられ、その皇子がやがて帝位につく。その後、光源氏と藤壺の宮はそのことに一生苦しむこととなる。さらに光源氏は晩年、降嫁してきた若い女三の宮を柏木という若い男性に密通され、二人の間に生まれた子供を自分の子として抱かなければならなくなったという因果応報が、『源氏物語』の大きなテーマの一つです。なので、藤壺の宮は重要な登場人物なのですが、物語を読んでいると非常に影が薄く感じられます。
おそらく紫式部は、物語の中でも大変身分が高い藤壺の宮(彼女は先帝の皇女で、後に桐壺院の中宮となります。)という女性に配慮し、わざと影を薄くして描いたのでしょう。
なお、光源氏と藤壺の宮の出会いを綴った「かがやく日の宮」という失われた巻があったという説もあるようですが、詳しいことはわからないというのが現状です。
それはともかくとして、『女人源氏物語』には藤壺の宮の侍女、弁の君の口を通して彼女と光源氏の出会いや心の動きがかなり具体的に描かれています。特に、光源氏が元服して左大臣の娘葵の上と結婚したとき藤壺の宮は、「葵の上さまは私より一つ年下だけなのね。」ということを言ったという記述があります。ここを読んだとき、「そうなんだ!藤壺の宮は葵の上をかなり意識していたのだ」と、まるで目からウロコが落ちるような気がしました。
このように、この『女人源氏物語』は「なるほど!」というエピソードが満載です。現代語訳だけでは『源氏物語』があまりよくわからなかったという方には絶対お薦めの本です。
☆単行本
①女人源氏物語 上〔新装愛蔵版〕 瀬戸内 寂聴 著
1999/06 2,940 小学館
②女人源氏物語 下〔新装愛蔵版〕 瀬戸内 寂聴 著
1999/06 2,940 小学館
☆文庫本
①女人源氏物語 1 瀬戸内 寂聴 著
1992 480 集英社
②女人源氏物語 2 瀬戸内 寂聴 著
1992 480 集英社
③女人源氏物語 3 瀬戸内 寂聴 著
1992 460 集英社
④女人源氏物語 4 瀬戸内 寂聴 著
1992 460 集英社
⑤女人源氏物語 5 瀬戸内 寂聴 著
1992 480 集英社