平安夢柔話

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紫式部と平安の都

2015-09-21 15:11:54 | 図書室1
 今回は、紫式部と源氏物語に関する本の紹介です。

☆紫式部と平安の都 (人をあるく)
 著者=倉本一宏 発行=吉川弘文館 価格=2160円

内容(「BOOK」データベースより)
 千年の時を超え、世界最高の文学と称えられる『源氏物語』。不遇な学者の女から中宮彰子への出仕に至った作者・紫式部の生涯を追い、物語執筆の謎に迫る。平安京や須磨・明石、宇治を訪ね、物語の舞台に想いを馳せる。

目次
王朝の文化サロンと中宮彰子の後宮(後宮とは何か
「国風文化」について
一条天皇後宮の推移
彰子サロンの空気
後宮への眼差し)
1 紫式部の履歴書(家系と生い立ち
少女時代
源氏物語の執筆
中宮彰子への出仕
三条朝の紫式部と晩年)
2 源氏物語の構想(『源氏物語』の構想
『源氏物語』の構成)
3 源氏物語をあるく(紫式部の遺跡
源氏物語の風景)


 吉川弘文館から発行されている「人をあるく」というシリーズの1冊。
 紫式部の生涯や源氏物語の舞台についてなどが130ページほどでコンパクトにまとめられています。

 まず、後宮の基礎知識や紫式部が生きた時代の後宮についての解説がなされたあと、「紫式部の履歴書」として、紫式部の生涯について解説されています。
 内容は、「紫式部集」「紫式部日記」などをもとに、少女時代、越前への下向、結婚、夫との死別、彰子中宮への出仕などが簡潔にまとめられています。

 読んでいてはっとさせられたのが、「源氏物語」のような長大な物語を書くのには膨大な紙が必要だったということ、貧乏学者の為時(紫式部の父)一家にはとてもこのような膨大な紙の調達は出来なかったのではないか?これには今まで気がつきませんでした。
 紫式部が「源氏物語」を書き始めたのは彰子中宮に出仕する数年前のこと。そこで著者の倉本先生は、「源氏物語は最初から道長の依頼を受け、道長から紙が調達されて執筆されたのではないか」という説を提示されていました。

 次の「源氏物語の構想」では、紫式部がどのように物語を構想したかが考察されていました。
 紫式部はそれまでの女子供の読むようなおとぎ話ではなく、人間の深さを描いた物語を書きたかったのではないか。
 源氏物語は、父帝の后藤壷との密通で生まれた皇子が天皇になるという罪を犯した光源氏が、正妻女三の宮と柏木との密通によって生まれた子を自分の子として育てるという罰を受け、最後に浮舟が出家することでこの罪を償うという構成になっている。 
 なるほど、奥が深いです。

 そして最後の章「源氏物語をあるく」では、
 まず紫式部の邸宅址とされる廬山寺を初め、紫式部が出仕した里内裏、一条院内裏址、紫式部が父と共に下向した越前など、紫式部ゆかりの地が紹介されています。越前の紫式部公園、一度訪ねてみたいと思いました。

 そのあと、源氏物語五十四帖それぞれの大まかなストーリーを紹介しながら、京都から宇治、須磨、明石など物語の舞台となった場所を簡潔に紹介しています。登場人物の邸宅と推定される場所、物語に出てくる寺院のモデルについては最近の研究に基づいているので安心して読むことが出来ました。写真も豊富に掲載されています。

 このようにコンパクトにまとめられた本ですが、内容はなかなか専門的。興味深く読むことが出来た1冊でした。源氏物語と紫式部に興味のある方なら誰でも楽しめる本だと思います。

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