平安夢柔話

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紫式部の恋 ~「源氏物語」誕生の謎を解く

2018-06-11 10:50:31 | 図書室2
久しぶりに源氏物語関連の本の紹介です。

☆紫式部の恋 「源氏物語」誕生の謎を解く
 著者=近藤富枝 発行=河出書房新社(河出文庫) 本体価格=780円

要旨 文学史に燦然と輝く名作「源氏物語」。その誕生の裏には、作者・紫式部の知られざる恋人の姿があった…。長年、「源氏」を研究してきた著者が、推理小説のごとくスリリングに作品を読み解いていく。作品合作説から、登場人物の自殺説など、作品に新たな光をあて、さらなる物語の深みへと読者を誘う。

目次
第1章 王風競わず
第2章 作者を考える
第3章 紫式部の恋
第4章 うつりかわり
第5章 物語の構成
第6章 宇治
第7章 残んの香

 この本を初めて読んだのは2000年頃でした。
 「源氏物語」の成立過程や、登場人物のモデルのことなどが興味深く感じて、夢中になって読んだのを思い出します。

 再読は2012年の今頃でした。私はその頃、だんなさんがリハビリのために転院した病院に付き添っていたのですが、個室でバストイレがあり、食事も出して頂けるという、恵まれた環境だったし、だんなさんも快方に向かっていたので、余裕があり、入院中の4週間の間に9冊の本を読了しました。その中の1冊がこの本で、初めて読んだときと同じく、興味深く楽しく読みました。
 で、家に帰ったらブログで紹介しようと思っていたのです。しかし、介護が忙しく、そのような余裕は全くありませんでした。
 そして最近、再々読したので、紹介させて頂くことにしました。

 とにかく、この本、面白いです。
 光源氏のモデルは誰かという話から始まり、作者は誰か、1人で書いたのか合作かという考察、紫式部の生涯、源氏物語に関する考察を、著者の大胆な説も交えてわかりやすく解説されています。

 印象に残った論功について、少し書かせて頂きます。

☆「源氏物語」の主要登場人物には母がいない人物が多い。それに対して、父との結びつきが強い。特に、桐壺帝と光源氏、明石の入道と明石の上、朱雀帝と女三の宮、八の宮と大君・中の君の4組は特にその傾向が強い。また、弟がいる姉も多い。
 これは紫式部の環境と告示しているので、「源氏物語」の主要な作者は紫式部と考えて良いのではないか。

☆紫式部は幼い頃、宮仕えをしていた。その宮仕え先は父為時と親しかった具平親王の千種殿。
☆紫式部はいつの頃からか具平親王を恋するようになり、男女の関係も多少、持ったのではないか?
 そして、宮廷社会のあれこれ、漢籍や文学論などを親王から教授されており、「源氏物語」を書く上での知識となった。
 しかし、具平親王には為平親王女という立派な妻がおり、受領階級の自分は親王の正式な妻にはなれないと考え、悩んだ末、紫式部は越前守となった為時に付き従い、京を離れたのではないか。
☆紫式部は、道長の娘、彰子の許に宮仕えしたことが具平親王を中心とする「千種殿グループ」を裏切ってしまったと考え、自分を恥じていた。

☆「源氏物語」の第1部(桐壺~藤裏歯)は紫の上系と玉鬘系に分けられる。
 玉鬘系に登場する空蝉、夕顔、末摘花、玉鬘は紫の上系には全く登場しないため、最初に紫の上系の巻が書かれ、あとから玉鬘系の巻が書かれた。
そして、紫の上系は紫式部が書き、玉鬘系は合作。男性心理も書かれていることから、弟の惟規が深く関わっていたのではないか。
*惟規については、紫式部の兄説もありますが、この本では弟説を採っていました。私も弟説と考える方が自然ではないかと思っています。

 その他、「宇治の大君は自殺ではないか」とか、女三の宮が降嫁したことで悩む紫の上には、彰子が入内したときの定子が深く映し出されており、体制批判ということで道長の機嫌を損ねたのでは」など、興味深いことがたくさん書かれていました。

 さらに著者の後書きによると、源氏物語が書かれてから数十年後、、具平親王の子孫である堀河天皇が帝位に就いたり、やはり具平親王の子孫の(女原)子が後朱雀天皇の中宮に立ったり、その他にも源氏や王氏の血を引く女性が中宮や皇后に立ったりした。これは「源氏物語」の理想を実現したようなもので、「源氏物語」の魔力が現実の歴史を変えたのではと書かれていて、こちらもなるほどと思いました。

このように「源氏物語」と紫式部についての興味深い論功が満載の1冊です。お薦めです。

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