平安夢柔話

いらっしゃいませ(^^)
管理人えりかの趣味のページ。歴史・平安文学・旅行記・音楽、日常などについて書いています。

現在読んでいる本

2008-02-27 21:38:21 | 読書日記
 最近、やりたいこと、やるべきことが多すぎて1日があっという間です。誕生日からもう1ヶ月経ってしまったなんて、時の流れが速すぎる~。

 その中でも、特に夢中になってしまっているのが読書です。最近は図書館で借りることも多いのですが、面白いものが多く、しかも貸出期限中に読まなくてはならないので、自由な時間を読書に費やすことが多いです。そのため、ブログの更新がすっかり滞ってしまって申し訳ありません。

 さて、今読んでいる本…、実は3冊の本をいっぺんに読んでいるのです。読みたい本が多くてこうなってしまったのですよね…。

☆夢熊野 紀和 鏡

 図書館で借りた、600ページ以上もある長い小説です。更新が滞っている最大の理由はこの本を読んでいるからです。

 この小説は、鳥羽院の院生時代から源平合戦、鎌倉幕府成立までの時代を熊野の視点で描いた小説です。熊野は源平合戦に大きな影響を与えましたし、源行家や平忠度などの人物との関係も深いので、以前から関心がありました。なのでとても興味深く読んでいます。もう少しで読み終わるので、「図書室3」で紹介できたらいいなと思っています。

☆女人源氏物語 瀬戸内寂聴

 以前、こちらの記事で紹介したことがある本です。タイトル通り、「源氏物語」に登場する女性たちの語りによって「源氏物語」のストーリーが展開するという、ちょっとユニークな形の「源氏物語」です。

 私は24歳の時にこの本を初めて読み、それまで読んだどの現代語訳よりもわかりやすかったので、すっかり「源氏」の虜になってしまいました。今年が源氏物語千年紀ということもあり、昨年の秋頃から再読し始め、他の本を読みながら少しずつ読み進めています。一編一編が一応独立しているので、一気に読まなくても話が通じるので助かっています。現在ようやく、第3巻の3分の2くらいまでを読み終わりました。「源氏物語」の巻名で言うと、「藤裏葉」までを読み終えたことになります。

 この「女人源氏物語」は、女性たちの語りということで、瀬戸内さんによる創作も所々に織り込まれていて楽しいです。
 例えば、玉鬘と髭黒の大将の恋の手引きをした弁のおもとの姉が紫の上に使えており、そのさえだという女房も髭黒の大将の手引きの手伝いをしていました。もしこのことが光源氏にばれたらさえだにどんなおとがめがあるか恐ろしいので黙っていよう…と紫の上が言っていますが、こうした女房同士のつながりはこの時代よくあったことなので、なるほどと思いました(紫上のかたる「梅枝」)。

 近江の君は、高貴な殿の落としだねということで、少女時代にはしっかりと教育を受けていたという記述も面白かったです。でも、彼女は都では「教養がない」「姫様らしくない」ということでみんなに馬鹿にされてしまうのですよね。(近江の君のかたる「常夏」)。この「常夏」という章は、近江の君の視点で書かれているのでとっても面白いです。

 さて、このあとはいよいよ女三の宮の登場です。二十代の頃は女三の宮がどうしても好きになれませんでしたが、今は結構愛着があるので、これから先も読むのが楽しみです。

☆アメリカ50州を読む地図 浅井信雄

 日本史とも古典とも全く関係のない本です。昨年は、歴史・古典以外の本って1冊も読まなかったのではないかしら。でも今年は、「ちりとてちん」に続いて2冊目です。

 最近、アメリカ大統領選挙の予備選が話題になっているので、「そう言えばこんな本も持っていたのでは…」と思い、本棚の奥から取り出して手に取ってみました。アメリカ合衆国の50の州の一つ一つを取り上げ、その州の地理、歴史などを簡単に解説しています。私は少額高学年から中学時代、アメリカの少女小説を愛読していたので興味深く楽しく読んでいます。たまには違ったジャンルの本を読むのも気分転換になりますね。

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第77代 後白河天皇

2008-02-18 09:44:18 | 系譜から見た平安時代の天皇
☆生没年  1127~1192
☆在位期間 1155~1158
☆両親
 父・鳥羽天皇 母・藤原璋子(藤原公実女)

☆略歴

 名は雅仁。鳥羽天皇の第四皇子。

 久寿二年(1155)、異母弟近衛天皇の崩御によって践祚。

 保元三年(1158)、守仁親王に譲位、上皇となりました。これより中断期間はあったものの三十数年にわたって院政を執り行いました。建久三年(1192)三月十三日崩御、66歳。

 後白河天皇は鳥羽天皇の第四皇子であり、皇位からは遠い存在でした。本人も政治には関心がなく、今様や遊興に夢中になっており、鳥羽天皇からは「天皇の器ではない」と言われていたほどでした。

 しかし、美福門院の融子となっていた守仁親王が成長するまでの期間ということで臨時のような形で皇位についたとたん、政治に夢中になってしまったようです。
 政権を執った三十数年の間、信西入道、藤原信頼、平清盛、源義仲、源義経などを側近として用いました。そして、後白河の院政時代は貴族同士が争ったり、源平の合戦があったりなど、世の中が武士の世に移っていく激動の時代でもありました。彼は、これらの側近と時には妥協、時には対決しながら、、戦乱の世を生き抜いたと言えます。

 その一方、仏教に熱心で日々法華経を読み、熊野に34回御幸したり、蓮華王院を建立したりしています。芸能にも熱心で、御所に一般庶民を集めて芸能を楽しんだと言われています。さらに、自ら今様を集め「梁塵秘抄」を編集しました。


☆父方の親族

祖父・堀河天皇 祖母・藤原苡子(藤原実季女)

主なおじ
 寛暁 最雲法親王

主なおば
 宗子内親王(賀茂斎院 「宗」は実際はりっしんべんに宗という字) 喜子内親王(伊勢斎宮) 


☆母方の親族

祖父・藤原公実 祖母・藤原光子

おじ
 藤原実隆 藤原実行 藤原通季 藤原実能 藤原季成

おば
 女子(源有仁室) 女子(藤原経実室)

主ないとこ
 藤原公教(父は藤原実行)
 藤原公通(父は藤原通季)
 藤原公能・藤原幸子(藤原頼長室)・藤原育子(二条天皇中宮) (以上、父は藤原実能)
 藤原成子(高倉三位 以仁王・式子内親王などの母 父は藤原季成)
 藤原懿子(二条天皇母)・藤原経宗(以上、母は藤原経実室)


☆兄弟姉妹とおい・めい

主な兄弟(○は同母兄弟 *は異母兄弟)
 ○崇徳天皇 ○通仁親王 ○君仁親王 ○本仁親王(覚性法親王) *近衛天皇

主な姉妹(○は同母姉妹 *は異母姉妹)
 ○統子内親王(上西門院) ○禧子内親王 *子内親王(八条院) *(女朱)子内親王(高松院) *妍子内親王(伊勢斎宮) *頌子内親王(賀茂斎院)

主なおい
 重仁親王(父は崇徳天皇)
 海恵(母は(女朱)子内親王)


☆主な后妃と皇子・皇女

 藤原忻子(藤原公能女)

藤原子(藤原公教女) 

 平滋子(建春門院 平時信女)  → 憲仁親王(高倉天皇

 藤原懿子(藤原経実女) → 守仁親王(二条天皇)

 藤原成子(高倉三位 藤原季成女) →守覚法親王 以仁王 亮子内親王(慇富門院) 式子内親王(賀茂斎院)

 高階栄子(丹後局 法印澄雲女) → 観子内親王(宣陽門院)

 坊門局(大江信業女) → 静恵法親王


☆末裔たち

 後白河天皇のあとは、第一皇子の守仁親王が二条天皇として即位し、そのあとは二条天皇の皇子六条天皇が即位します。六条天皇の皇太子には、後白河天皇の皇子憲仁親王が立てられ、六条天皇の退位後、高倉天皇として即位します。こうして、皇位は高倉天皇の子孫によって受け継がれていきました。

 一方、後白河天皇が藤原成子との間にもうけた以仁王は親王宣下の機会を逃し、平家討伐に失敗して自刃してしまいましたが、多くの女性と通じ、異腹の宮を多数もうけました。そのうちの一人、長男の北陸宮を紹介いたします。

○北陸宮(1165~1230)
 以仁王の皇子。治承四年(1180)、以仁王の平家討伐計画が露見した後、父王の乳母に伴われて都を脱出、北陸に落ち延びます。幸い、平家討伐の兵を挙げた源義仲に拾われ、越中国にて潜伏することとなります。

 寿永二年(1183)、平家が安徳天皇を奉じて都落ちし、次の天皇を誰にするかを決める際、都入りした義仲に推されますが、後白河上皇の反対にあって位につくことができませんでした。

  文治元年(1185)十一月、帰洛して嵯峨野に居住しました。

 建久~正治の頃(1190~1201)、源姓を賜って臣籍に降下することをしきりに願い出ますが許可されませんでした。

 寛喜二年(1230)七月八日、赤痢のため死去、66歳。

 なお、以仁王の他の皇子たちのほとんどは、父王の平家討伐計画露見の直後に身を隠し、のちに出家をしたようです。

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最近のエリカ

2008-02-13 11:39:02 | 猫のお部屋
 お待たせしました~。約半年ぶりの「猫のお部屋」の更新です。楽しみにして下さっていらっしゃる皆様、長いこと更新できなくてすみませんでした。それで、今回は最近のエリカの写真を一挙3枚公開!させていただきますね。

 では、1枚目をどうぞ。


 


 エリカが靴下をかんで遊んでいます。どうしてエリカはこういう物が好きなのかしら?靴下でエリカの顔が一部隠れていますが、どうかお許しを…。

 では、2枚目です。


 


 エリカが鍋に入った水を飲んでいます。

 この鍋は、元々煮物に使っていた鍋だったのですが、古くなったので、ストーブの上に乗せておくお湯を入れる鍋にしました。ところが、ストーブが消えているとき、エリカが上に乗ってお湯を飲むようになってしまったのです。一度沸騰させたお湯なので、おいしかったのかもしれません。

 ただ、ストーブの上は狭いので、エリカ、結構飲みにくそうにしていたのですよね。そこで、ストーブが消えているときは鍋を下に下ろしておくことにしました。そこでエリカは、これ幸いとばかり、この鍋に入った水をしょっちゅう飲んでいます。

 では、ちょっと違う角度から撮った写真をもう1枚どうぞ。


 


 嬉しそうな顔をしていてニャンともかわいいです。

 さて、エリカの近況ですが……、ますます甘えん坊になっています。今まで、だんなさんの膝の上に乗るのは好きみたいでしたが、私の膝の上に乗ることはめったにありませんでした。ところが最近なぜか、私の膝に飛び乗ってくるようになったのです。膝の上でなでてあげると喜びます。

 その上、しょっちゅう私の足にまとわりついて甘えています。エリカと一緒にいるとやっぱりいやされます。エリカちゃん、これからもパパとママをいやしてね。

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見つかって良かった~

2008-02-10 21:53:50 | えりかの平安な日々 04~09
 昨日は、2週間に一度の病院診察の日。お昼頃から雪になるというので大変!と思い早めに行ってこようと思い、7時15分頃に家を出発しました。静岡駅構内の喫茶店で朝食を食べて病院へ…。8時半開院なのですが私たちが到着したのは結局8時45分頃でした。それでも2番目に診察してもらえました。

 さて、私の体調ですが、一応落ち着いております。それで、いつものように血圧を測ったところ、128/57と、ほとんど正常値でした。これにはびっくりして、「ちりとてちん」の喜代美ちゃんではないけれど、思わず「えっ!」と驚いてしまいましたよ…。でもこれも、薬を飲んでいるおかげなのですよね。先生のお話では、薬が合っているのではということでしたので、これからもしばらく、このまま薬を服用して様子を見ることになりました。

 ところで…、だんなさんも少し風邪気味だったので、私と一緒に診察を受けて薬をもらったのですが、ついでに私の薬もだんなさんのかばんに入れてもらいました。私のかばん、小さくて薬がなかなか入らなかったのですよね…。

 それで夜になって薬を飲もうと思い、だんなさんから薬を受け取ったところ、袋の中には錠剤が2種類しか入っていませんでした。私の薬は錠剤3種類と粉の漢方薬1種類のはずなのに…、おかしいと普通、ここで気がつきますよね?でも、私は「あれ?薬が減ったのかしら嬉しいことだわ」と思っただけでコップに水を入れ、薬を飲む準備に取りかかってしまいました。そして小さい方の錠剤を一粒飲みました。夜に飲むことになっている薬は、朝飲むことになっている血圧の薬に比べると粒が小さいのです。

 そのあと、念のために薬の数を数えてみたのですが、20粒しかありません。今回は20日分出されているので2種類としても2×20で40粒ないといけないのに…。ここでようやくおかしいと気がつきました。これは病院で間違えられたか、だんなさんに間違って渡されたかのどちらかです。

 まずだんなさんに確かめてみたとところ、私が渡されたのはだんなさんの薬だったことを発見!だんなさんもちょうど忙しくしていたところだったので、勘違いしてしまったようなのです。つまり、私が飲んだのはだんなさんの風邪薬だったのでした…。でも、私も少し咳が出ることがあるのでいいか…と思いましたが、私の薬がどこにもないのです。10分くらいあちらこちらを探し回り、パソコンの複合コピー機の上にあるのを発見したときはほっとしました。もし見つからなかったら、火曜日にもう一度、病院に行かなくてはならなくなったところなので本当に良かったです。それにしても私ってあわて者です…。普通、飲む前に中身をしっかり確認しますよね。間違って飲んだのがそれほど強くない風邪薬だったので良かったですが、気をつけなくては。

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はまってます、「ちりとてちん」

2008-02-07 10:30:59 | えりかの平安な日々 04~09
 二十代前半で結婚してから、私は毎朝、NHKの朝ドラを見るのが習慣になっていました。ところが、5年前にこちらに引っ越してから生活が変わり、2003年~2004年の「てるてる家族」を最後に、数年間朝ドラから離れていたのです。ところが、現在放映中の「ちりとてちん」にすっかりはまってしまいました。
 このドラマはまず、だんなさんが見始め、「面白いからつき合え」と言われ、私もつき合わされていました。でも、初めはあまり気が乗らなかったのですよね。

 このドラマをご覧になっていらっしゃらない方もいると思いますのでちょっと説明しますと、「ちりとてちん」は、明るい性格なのですが、後ろ向きでマイナス思考で、妄想ばかりしている女の子が、大阪で落語家を目指すという話です。それで、当然、上方落語のことがたくさん出てきます。「私は上方落語なんて興味ないし…」と思いながら、上でも書いたようにあまり気乗りせずにだんなさんにつき合って見ていたのですが、いつの間にかすっかりはまってしまいました。破門されて家出をした徒然亭草々さんを迎えに行った主人公の喜代美ちゃんが、病気で倒れていた草々さんを介抱する場面に感動して涙をぽろぽろ流し、「このドラマを最後までしっかり見届けよう」と決心したのです。

 それから、喜代美ちゃんの両親の結婚に至るまでの話も感動しました。この場面を見て、これまでの話が無性に知りたくなりました。最初から見ていたわけではないし、だんなさんにつき合わされているときもそれほどまじめに見ていたわけではないので、喜代美ちゃんの小浜時代のことや、草若師匠に弟子入りする経緯など、よくわかっていなかったのです。

 それで、ネットで検索して色々なページを見てみたのですが、どうも話がつながらない。放映中のドラマなので再放送なんかしていないし、もちろんDVDも出ていない。ただ、ドラマの小説本の上巻が出ていることを知り即購入。一気に読んでしまいました。本を読んだおかげで、知りたかった喜代美ちゃんのこれまでのことや徒然亭一門のことがすごくよくわかり、登場人物一人一人にますます愛着がわいてきました。喜代美ちゃんが草々さんとの勝山行きをすっぽかして順子ちゃんの所に行ってしまった理由も納得。いつでも心の支えになってくれていた順子ちゃんが心配でたまらなかったのよね。上方落語にも興味が出てきました。

 更に、私と喜代美ちゃん、物事を悪い方に考えて妄想するところや、お調子者なところ、すぐに「えっ!」と驚くところなど、すごくよく似ているのです。だんなさんに言わせると「一緒」とのこと。それもあって私をこのドラマにつき合わせていたのねと納得しました。

 現在は、草若師匠が病気になってしまい、余命が短いといった悲しい場面が放映されていますが、笑いあり涙ありの変化に富んだ素敵なドラマです。これからの展開がすごく楽しみです。これだけはまったドラマは久しぶりだわ~。

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七姫幻想

2008-02-04 09:58:10 | 図書室3
 今回は、最近読んだ連作歴史ミステリーを紹介します。

☆七姫幻想
 著者=森谷明子 発行=双葉社 税込み価格=1680円

☆本の内容紹介
 寵姫の閨でなぜ大王は死んだのか――?遥か昔から罪の匂いをまとってきた美しい女たちがいる。時代を経てなお様々に伝わる織女伝説をモチーフに、和歌を絡めながら描く七編の連作ミステリー。鮎川哲也賞受賞作『千年の黙』で注目を浴びた作家の最傑作。

*図書館で借りた本なので画像はありません。ご了承下さい。

 以前、紹介文にもあります同じ著者の「千年の黙 異本源氏物語」(こちらの記事で少し紹介しています)を読んだことがあり、とても面白かったので、図書館でこの本を借りてみました。こちらの本もストーリーが面白く、すっかり引き込まれてしまいました。しかも読みやすい文章だったのであっという間に読み終えてしまいました。

 この「七姫幻想」は、七夕の七姫(織姫の別名。朝顔姫(あさがおひめ)・梶の葉姫(かじのはひめ)・糸織姫(いとおりひめ)・蜘蛛姫(ささがにひめ)・秋去姫(あきさりひめ)・薫物姫(たきものひめ)・百子姫(ももこひめ)の七姫をモチーフにした姫たちを主人公にした歴史ミステリーです。吉野の奥でひっそり暮らし、機織りを職業としていたある一族の女性たちと、その女性たちに関わった人たちの古代から江戸時代にわたる歴史が、七編の連作小説によって語られます。

 この小説はフィクションという色の濃い物語だと思いますが、歴史上の人物や史実もところどころに登場するので、歴史好きにとってはたまりません。登場する歴史上の人物は、兄弟で愛し合った軽皇子と軽郎女、万葉歌人の大伴家持、清少納言の父の清原元輔、後朱雀天皇女御の藤原生子など……、ね、ちょっとわくわくしませんか?

 特に私が心引かれたのは、四番目に収められている「朝顔斎王」という話でした。なんとこの話、娟子内親王と源俊房のお話なんですよ!それで、簡単にあらすじを書いてみますね。

 この話の時代設定は、娟子内親王が斎院を退下してから数年経った頃だと思われます。

 閑院での暮らしが息苦しくなった娟子内親王は、下鴨神社近くの離宮に移り住むのですが、動物の死骸を投げ込まれたり、庭の朝顔の花を折られたり、あげくの果てに離宮を放火されてしまいます。

 そんな娟子内親王を身を挺して守ったのが、幼なじみの源俊房と、女房の少納言でした。では、娟子内親王に嫌がらせをしているのはいったい誰?物語のラストで証される事件の思いがけない真相には驚かされます。そして、少納言によって娟子内親王が気づかされる真実の愛には感動させられました。独立した1編の物語として読んでも読み応えがあると思います。この「朝顔斎王」、ネット上の書評でもとても評判が良かったです。

 この他の話も、悲恋あり、ちょっとオカルトっぽいものありとなかなか味わい深かったです。皇子を生むことを強いられた後宮女性たちの悲哀も感じられて切なくもありますが…。基本的にはどの話もミステリーですので、謎解きの面白さもあります。お互いの話に関連性もありますので、それを楽しむのも一興ではないでしょうか。お薦めです。

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紫式部伝 その生涯と「源氏物語」

2008-02-01 10:13:07 | 図書室1
 2週間ほど前に読み終わった角田文衞先生著の「紫式部伝 その生涯と源氏物語」を紹介いたします。

☆源氏物語千年紀記念出版 紫式部伝 その生涯と「源氏物語」
 著者=角田文衞 発行=法蔵館 価格=9200円

☆もくじ
 第一章 紫式部の境涯
   紫式部の本名
   若き日の紫式部
   越路の紫式部
   紫式部の結婚
   紫式部と常陸国
   紫式部の居宅
   土御門殿と紫式部
   紫式部の歿年
   紫式部の墓
   紫式部の子孫

 第二章 紫式部をめぐる人びと
   紫式部の伯母と従姉
   源典侍と紫式部
   ある夜の紫式部
   実資と紫式部
   道長と紫式部
   紫式部と藤原保昌
   紫式部と清少納言

 第三章 紫式部と『源氏物語』
   若紫の君
   源氏の物語
   北山の『なにがし寺』
   大雲寺と観音院
   『雨夜の品定め』をめぐって
   夕顔の宿
   夕顔の死
   源氏物語後宮世界の復原
   紫野斎院の所在地
   源氏物語の遺跡
   秋のけはひたつままに

結語にかえて
   紫式部の影響と研究の歴史 
   『大島本源氏物語』の由来

紫式部略年譜・系図
あとがき


 一言で言うと、この本すごいです。9200円は決して無駄ではありませんでした。角田先生のご著書全般に言えることなのですが、とにかく斬新で面白いです。また、専門書にしてはわかりやすい文章だと思います。そして、今まで私の知らなかった「えっ」という話が満載でした。

 もくじをご覧頂いておわかりのように、第一章では、紫式部の生涯について、ほぼ年代順に述べられています。

 紫式部が彰子中宮のもとに初めて出仕した日について角田先生は、寛弘二(1005)年十二月二十九日と推定されていますが、実はその前日の藤原行成の日記「権記」に、「ある女性を命婦に任じた」と推定できる記事があるそうです。実はこの女性こそ紫式部であるとのこと。また、「源氏物語」に出てくる常陸国や肥前国は、紫式部と縁続きの人たちの多くが受領として赴任した国なのだそうです。そのほか、「めぐり逢ひての歌の贈答の相手は藤原実方の女である」「紫式部の没年は長元四(1031)年である」など、興味深い話が集録されていました。

 第二章では、紫式部の周りの人たち、関わった人たちについて述べられています。

 「源氏物語」で色好みのおばあさんとして登場する源典侍のモデルは、宣孝の兄、説孝の妻であった源明子であること、彼女は源典侍と呼ばれていたやり手の女官であったこと、また、彼女の思いがけない出自についても述べられていました。しかし、私が一番驚いたのは、後に和泉式部の夫となった藤原保昌が、一時紫式部と恋仲だったということです。

 第三章では、「源氏物語」を主として地理・歴史的に考察しています。

 夕顔の宿や、夕顔が憤死したなにがしの院の位置をはじめ、光源氏が紫の上を見いだした「北山のなにがし寺」のモデルとされる大雲寺の歴史は読み応えがあります。また、「源氏物語」の内容と当時の歴史事項の関連についても少し述べられていて、興味深かったです。こうした地理的・歴史的背景がわかると、「源氏物語」を読むのがいっそう楽しくなりそうです。

 この他にも、興味深い論考が満載です。源氏物語千年紀に当たる今年に、この本を読むことができたことを嬉しく思いました。

 お値段はかなり高めですが、源氏物語や紫式部に興味がある方、平安時代の歴史が好きな方には自信を持ってお薦めしたい一冊です。

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