アブソリュート・エゴ・レビュー

書籍、映画、音楽、その他もろもろの極私的レビュー。未見の人の参考になればいいなあ。

ずっとお城で暮らしてる

2015-01-10 17:22:16 | 
『ずっとお城で暮らしてる』 シャーリィ・ジャクスン   ☆☆☆  恐怖小説の書き手として有名な女流作家シャーリィ・ジャクスンを初めて読んだ。実は、有名な「くじ」すらいまだに読んだことがない。  超自然的な怪談も得意らしいシャーリィ・ジャクスンだが、本書には超自然的な要素は一切ない。心理的な怖さを狙った小説である。長編といっても大して長いわけではなく、一日か二日であっという間に読める。語り手は少 . . . 本文を読む

Private Parts and Pieces X : Soiree

2015-01-08 21:32:06 | 音楽
『Private Parts and Pieces X : Soiree』 Anthony Phillips   ☆☆☆☆  ちょっと変わったアルバムを紹介したい。これはジェネシスの初代ギタリストだったアンソニー・フィリップスの「Private Parts and Pieces」シリーズの10作目で、「ソワレ」というタイトルがついている。全20曲、大部分が2、3分の短いピアノ曲だけで構成されてい . . . 本文を読む

ジーキル博士とハイド氏

2015-01-06 23:15:36 | 
『ジーキル博士とハイド氏』 スティーヴンソン   ☆☆☆☆☆  再読。スティーヴンソンといえば『宝島』と言われるが、私にとっては『ジーキル博士とハイド氏』である。子供の頃、私はこの本を布団にくるまって読んでとてつもない恐怖を味わされた。それは衝撃以上、まさに魂を震撼させられたと言っても過言ではない。  この物語は厳密に言えば怪談やホラーではなく、怪奇譚やゴシック譚という範疇だろう。しかし怪談と . . . 本文を読む

ラスト、コーション

2015-01-04 18:56:13 | 映画
『ラスト、コーション』 アン・リー監督   ☆☆☆☆★  『いつか晴れた日に』『恋人たちの食卓』に続いてアン・リー監督の『ラスト、コーション』を日本版ブルーレイで鑑賞。タイトルは「最後の警告」の意味かと思っていたらそうではなく、ラストは色欲のlustで、原題は「色、戒」だという。つまり色欲と戒め、という二つを並列したタイトルなのであり、だから間に入っているのが中黒でなく読点なのだった。  そう . . . 本文を読む

ウッツ男爵: ある蒐集家の物語

2015-01-02 16:56:49 | 
『ウッツ男爵: ある蒐集家の物語』 ブルース・チャトウィン   ☆☆☆☆☆  あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願い致します。  ~ ~ ~ ~  『パタゴニア』のブルース・チャトウィンが書いた最後の長編小説。「ある蒐集家の物語」とあるように、ナチス・ドイツの時代を生きたマイセン磁器の蒐集家・ウッツ男爵の物語である。舞台はプラハ。Amazonの紹介文には「冷戦下のプラハ、マイセ . . . 本文を読む