アブソリュート・エゴ・レビュー

書籍、映画、音楽、その他もろもろの極私的レビュー。未見の人の参考になればいいなあ。

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事件

2008-01-14 19:30:06 | 映画
『事件』 野村芳太郎監督   ☆☆☆☆★

 『疑惑』が面白かったので松本清張原作、野村芳太郎監督の映画で評判いい奴をまた観たいと思って購入、したらこれは松本清張じゃなかった。大岡昇平だった。もっとちゃんと確認して買いましょう。でも面白かったから結果オーライ。

 法廷もの+青春ものである。法廷ものとしては弁護士・丹波哲郎、検事・芦田伸介、裁判官・佐分利信の強烈な三つ巴を堪能でき、青春ものとしては大竹しのぶ、松坂慶子、永島敏行のまったりした三すくみを賞味できる。なかなかお得な映画である。まあしかし、とにかく注目は丹波哲郎の弁護士。もんのすごい迫力。不敵な声と横柄な態度、突き刺すような視線で証人を責めまくる。「嘘を言っちゃいけない!!」腰ぬかしそうになる。私が証人だったらすぐ涙目になってしまう。

 個人的に青春ものより法廷ものに惹かれるということもあるが、とにかく法廷シーンのリアリズムと緊迫感が見事だった。丹波哲郎と芦田伸介というそれぞれ貫禄ある役者の激突もわくわくする。「異議あり!」みたいなやりとりもテレビドラマ的な安易さはなく、丁寧な演出で堅実だ。ただ芦田伸介が延々と読み上げる冒頭陳述は、一体いつまで続くのかと心配になった。

 それから大竹しのぶがすごい。若くて可愛いのはまあいいとして、あの演技力は確かに天才的だ。何かにとりつかれているとしか思えない。この映画では大竹しのぶと渡瀬恒彦が賞を総なめにしているが、それも当然だろう。渡瀬恒彦は胡散臭いがどこか憎めないチンピラを演じてうまくサポートしている。この二人は基本的に激しくぶつかり合うのだが、ようやく穏やかに会話を交わすラストシーンがしみじみして非常に良い。
 一方、主演の永島敏行は演技が下手。この人はナイーブで内向的で、純朴そうだけどどこか女性をひきつけるような雰囲気があって、そのキャラクターは悪くないと思うが、演技の下手さが時々イタい。まだ新人の頃だから仕方ないのだろうか。でも大竹しのぶも新人だぞ。

 法廷劇ではあるが、殺しは最初から認めてるし、取り立ててどんでん返しがあるわけではない。殺意のあるなしが争点。だから証言を弁護士が微妙にひっくり返していくなど細部はとても楽しめるが、全体的にはミステリというより青春ドラマ、人間ドラマだ。姉(松坂慶子)と妹(大竹しのぶ)が幼馴染の永島敏行を取り合う。その結果、姉が死ぬ。哀しい物語である。「終」の文字が出てきた瞬間じわっ、と何か甘酸っぱいものがこみ上げてくる。妙なノスタルジーを感じる。こういう映画を久しぶりに観たなあ。

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