『Breakdown』 Jonathan Mostow監督 ☆☆☆★
『The Thing』に続いてカート・ラッセルものをDVDで再見。昔、HBOでやってるのを観たことがある。
これはSFじゃなくてサスペンスものだ。カート・ラッセルはこういうサイコ・サスペンスみたいな映画にいくつか出ているが、キャラクターがいかにもアメリカンな直情径行野郎なので、何かに巻き込まれてだんだんヤバイ状況になっていく「巻き込まれ型」サスペンスにわりとはまる。リアクションがストレートで厭味がない。レイ・リオッタがサイコ警官をやった『不法侵入』はかなり怖かったが、本作も悪くない。個人的には好きである。まあサイコ度は『不法侵入』に劣るし、プロットはB級っぽく、後半はいかにもありがちな展開だが、前半の徐々に亢進していく不安の情緒は愉しめる。
引越しでアリゾナをドライブ中の夫婦、ジェフ(カート・ラッセル)とエミー(キャサリン・クインラン)。なんだか財政上の問題を抱えていそうな微妙な夫婦である。ハイウェイの真ん中で車がエンコし、途方に暮れている時にトラックが通りかかり、その先にある食堂まで送ってくれるという。妻だけ送ってもらうことにし、夫は残る。自力で車を復活させ、ジェフはエミーが待っているはずの店に直行。が、エミーは影も形もない。もっと先に行ってしまったのか?やみくもに走っていると、さっきのトラックを見かける。車を止めて運ちゃんに聞くと、「お前の嫁さんなんて知らん」「お前なんか会ったこともない」と言われてしまう。どーなってんだこりゃ。
アリゾナあたりのハイウェイが舞台ということで『激突』にもちょっと似た雰囲気がある。それにしてもあのあたりを車で走ったことがある人には分かる通り、広大な大地には見渡す限り誰もおらず、ハイウェイといっても自分以外ほとんど誰も走っていない、ごくたまに一台すれ違う程度。ガソリン・スタンドやグローサリー・ストアもジャンクションにぽつんとあるだけ。真昼間からものすごい孤独感で、普段都会で暮らしている人なら独特の不安感と緊張感を感じずにはいられない、そういう場所である。何が起きても誰にも分からない、誰も助けてくれない。ジェフとエミーはボストンから来た夫婦という設定だが、そういう不安感をうまく活かしてある。
全体としてはスケールが小さい事件で、それがこの映画の小粒感にもつながっていると思うが、そのかわりどこかで本当で起きていそうなリアリティがある。日本ではそう思えないかも知れないが、アメリカじゃいかにもありそうだ。普通の田舎のおっちゃんが平気で犯罪やってたりする。警察がまったく役に立たない、回りにいる人間が誰も助けてくれるどころか関心すら持ってくれない、なんて場面も出てきて、物語の不条理感を高めているが、あれはアメリカでは実際ああである。食堂のおやじや客も無愛想で、まったく同情なんかしてくれない。
それから派手なハリウッド映画のようにギャングスターや殺し屋やスパイは出てこないが、ごく普通のおっちゃんが豹変する怖さ。ついさっきは愛想が良く親切だったトラックの運ちゃんが、突然にこりともしない冷たい目で「お前なんか知らん」と言う。これはイヤだ。『不法侵入』ではレイ・リオッタがサイコ警官を演じて非常にイヤだったが、本作のT・J・ウォルシュもなかなかイヤである。こいつがトラックの運ちゃんなのだが、実に憎たらしい。目つきが陰険である。顔を見るだけでふつふつと憎しみがこみ上げてくる。
ごく普通の一般市民カート・ラッセルの必死の反撃も見ものだ。なりふり構わないところに好感が持てる。傑作とは言わないが、とりあえずハラハラドキドキしたい人にはお薦め。
『The Thing』に続いてカート・ラッセルものをDVDで再見。昔、HBOでやってるのを観たことがある。
これはSFじゃなくてサスペンスものだ。カート・ラッセルはこういうサイコ・サスペンスみたいな映画にいくつか出ているが、キャラクターがいかにもアメリカンな直情径行野郎なので、何かに巻き込まれてだんだんヤバイ状況になっていく「巻き込まれ型」サスペンスにわりとはまる。リアクションがストレートで厭味がない。レイ・リオッタがサイコ警官をやった『不法侵入』はかなり怖かったが、本作も悪くない。個人的には好きである。まあサイコ度は『不法侵入』に劣るし、プロットはB級っぽく、後半はいかにもありがちな展開だが、前半の徐々に亢進していく不安の情緒は愉しめる。
引越しでアリゾナをドライブ中の夫婦、ジェフ(カート・ラッセル)とエミー(キャサリン・クインラン)。なんだか財政上の問題を抱えていそうな微妙な夫婦である。ハイウェイの真ん中で車がエンコし、途方に暮れている時にトラックが通りかかり、その先にある食堂まで送ってくれるという。妻だけ送ってもらうことにし、夫は残る。自力で車を復活させ、ジェフはエミーが待っているはずの店に直行。が、エミーは影も形もない。もっと先に行ってしまったのか?やみくもに走っていると、さっきのトラックを見かける。車を止めて運ちゃんに聞くと、「お前の嫁さんなんて知らん」「お前なんか会ったこともない」と言われてしまう。どーなってんだこりゃ。
アリゾナあたりのハイウェイが舞台ということで『激突』にもちょっと似た雰囲気がある。それにしてもあのあたりを車で走ったことがある人には分かる通り、広大な大地には見渡す限り誰もおらず、ハイウェイといっても自分以外ほとんど誰も走っていない、ごくたまに一台すれ違う程度。ガソリン・スタンドやグローサリー・ストアもジャンクションにぽつんとあるだけ。真昼間からものすごい孤独感で、普段都会で暮らしている人なら独特の不安感と緊張感を感じずにはいられない、そういう場所である。何が起きても誰にも分からない、誰も助けてくれない。ジェフとエミーはボストンから来た夫婦という設定だが、そういう不安感をうまく活かしてある。
全体としてはスケールが小さい事件で、それがこの映画の小粒感にもつながっていると思うが、そのかわりどこかで本当で起きていそうなリアリティがある。日本ではそう思えないかも知れないが、アメリカじゃいかにもありそうだ。普通の田舎のおっちゃんが平気で犯罪やってたりする。警察がまったく役に立たない、回りにいる人間が誰も助けてくれるどころか関心すら持ってくれない、なんて場面も出てきて、物語の不条理感を高めているが、あれはアメリカでは実際ああである。食堂のおやじや客も無愛想で、まったく同情なんかしてくれない。
それから派手なハリウッド映画のようにギャングスターや殺し屋やスパイは出てこないが、ごく普通のおっちゃんが豹変する怖さ。ついさっきは愛想が良く親切だったトラックの運ちゃんが、突然にこりともしない冷たい目で「お前なんか知らん」と言う。これはイヤだ。『不法侵入』ではレイ・リオッタがサイコ警官を演じて非常にイヤだったが、本作のT・J・ウォルシュもなかなかイヤである。こいつがトラックの運ちゃんなのだが、実に憎たらしい。目つきが陰険である。顔を見るだけでふつふつと憎しみがこみ上げてくる。
ごく普通の一般市民カート・ラッセルの必死の反撃も見ものだ。なりふり構わないところに好感が持てる。傑作とは言わないが、とりあえずハラハラドキドキしたい人にはお薦め。
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