『パラダイスの夕暮れ』 アキ・カウリスマキ監督 ☆☆☆☆☆
カウリスマキ・ブルーレイ・ボックスの第二巻を購入した。大好きな『浮き雲』『過去のない男』『街のあかり』を美しい画質で観たかったからだが、これらを堪能した後、初見の『パラダイスの夕暮れ』を鑑賞。これも素晴らしかった。『浮き雲』『過去のない男』と並んで、カウリスマキ作品中私のフェイバリット作品となった。
公開は1986年。カウリスマキ長編三作目であり、『真夜中の虹』『マッチ工場の少女』へと続く「敗者三部作」の一作目である。これまで私が観たカウリスマキ映画の中でもっとも古い。が、カウリスマキのスタイルはすでに完成している。マッティ・ペロンパーとカティ・オウティネンというカウリスマキ映画のエッセンスを体現する2人の俳優が初めて顔を合わせた映画でもあるが、2人ともまだ若く、カティ・オウティネンなど長い髪をカールさせて結構イケてる感じだ。妙に嬉しくなる。
さて、物語はスーパーのレジ係の女とゴミ収集人のラブストーリーである。いやあ、実にカウリスマキらしい。出会って、つきあって、別れて、またよりを戻すという、まあ言ってみればそれだけ。他は例によってオフビートでとりとめのないエピソードの羅列であり、ペロンパーとオウティネン、そしてその他の俳優たちが無表情演技とぶっきらぼうなセリフの数々を繰り出し、例によってえもいわれぬカウリスマキ・ワールドを形作っていく。それにしても主演のふたりをはじめカウリスマキ映画にはイケメン・美女など一人も出て来ず、全員がなんとも個性的で味がある顔の役者ばかり。やっぱり映画はこうじゃないと。
オフビートなエピソードというのはたとえばゴミ収集人の先輩から独立を誘われた後その先輩が突然死してしまう、ニカンデルが監獄で知り合った男(これもカウリスマキ映画の常連サカリ・クオスマネン、『過去のない男』のがめつい警官役の人)に仕事を紹介する、デートでビンゴに行く、イロナがクビになりはらいせに金庫を盗む、モーテルに泊まったあとニカンデルが金庫を返す、イロナ警察への連行され釈放される、ニカンデルとイロナ同棲する、ダブルデートをイロナすっぽかす、イロナ出て行く、ニカンデルチンピラに暴行される、などである。特につながるわけでもなくバラバラだ。イロナが金庫を盗んだりするのでははあここから逃亡劇になるか、と思ったらそうでもない。が、このとりとめのないエピソードの連鎖が妙に心地よい。
そして最後はニカンデルがイロナにプロポーズするが、プロポーズの場面でさえ2人は無表情である。セリフにもさほど抑揚の変化はない。が、それでも感動する。とことんオフビートでポーカーフェイスであるが故に、センチメンタリスムを排した純粋な感動を覚える。
これはもう、ひたすらセンス命の映画としかいいようがない。映像のセンス、エピソード配置のセンス、オフビート・コメディのセンス、キャスティングのセンス。そしてもちろん、音楽のセンス。カウリスマキ映画の例にもれず、これは素晴らしい音楽映画でもある。いとおしくも哀切な曲の数々に彩られたカウリスマキ流ラブストーリー。大傑作。
カウリスマキ・ブルーレイ・ボックスの第二巻を購入した。大好きな『浮き雲』『過去のない男』『街のあかり』を美しい画質で観たかったからだが、これらを堪能した後、初見の『パラダイスの夕暮れ』を鑑賞。これも素晴らしかった。『浮き雲』『過去のない男』と並んで、カウリスマキ作品中私のフェイバリット作品となった。
公開は1986年。カウリスマキ長編三作目であり、『真夜中の虹』『マッチ工場の少女』へと続く「敗者三部作」の一作目である。これまで私が観たカウリスマキ映画の中でもっとも古い。が、カウリスマキのスタイルはすでに完成している。マッティ・ペロンパーとカティ・オウティネンというカウリスマキ映画のエッセンスを体現する2人の俳優が初めて顔を合わせた映画でもあるが、2人ともまだ若く、カティ・オウティネンなど長い髪をカールさせて結構イケてる感じだ。妙に嬉しくなる。
さて、物語はスーパーのレジ係の女とゴミ収集人のラブストーリーである。いやあ、実にカウリスマキらしい。出会って、つきあって、別れて、またよりを戻すという、まあ言ってみればそれだけ。他は例によってオフビートでとりとめのないエピソードの羅列であり、ペロンパーとオウティネン、そしてその他の俳優たちが無表情演技とぶっきらぼうなセリフの数々を繰り出し、例によってえもいわれぬカウリスマキ・ワールドを形作っていく。それにしても主演のふたりをはじめカウリスマキ映画にはイケメン・美女など一人も出て来ず、全員がなんとも個性的で味がある顔の役者ばかり。やっぱり映画はこうじゃないと。
オフビートなエピソードというのはたとえばゴミ収集人の先輩から独立を誘われた後その先輩が突然死してしまう、ニカンデルが監獄で知り合った男(これもカウリスマキ映画の常連サカリ・クオスマネン、『過去のない男』のがめつい警官役の人)に仕事を紹介する、デートでビンゴに行く、イロナがクビになりはらいせに金庫を盗む、モーテルに泊まったあとニカンデルが金庫を返す、イロナ警察への連行され釈放される、ニカンデルとイロナ同棲する、ダブルデートをイロナすっぽかす、イロナ出て行く、ニカンデルチンピラに暴行される、などである。特につながるわけでもなくバラバラだ。イロナが金庫を盗んだりするのでははあここから逃亡劇になるか、と思ったらそうでもない。が、このとりとめのないエピソードの連鎖が妙に心地よい。
そして最後はニカンデルがイロナにプロポーズするが、プロポーズの場面でさえ2人は無表情である。セリフにもさほど抑揚の変化はない。が、それでも感動する。とことんオフビートでポーカーフェイスであるが故に、センチメンタリスムを排した純粋な感動を覚える。
これはもう、ひたすらセンス命の映画としかいいようがない。映像のセンス、エピソード配置のセンス、オフビート・コメディのセンス、キャスティングのセンス。そしてもちろん、音楽のセンス。カウリスマキ映画の例にもれず、これは素晴らしい音楽映画でもある。いとおしくも哀切な曲の数々に彩られたカウリスマキ流ラブストーリー。大傑作。
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