
『アウトレイジ最終章』 北野武監督 ☆☆☆
日本版ブルーレイで鑑賞。うーん、結局こうなってしまったか。前作『アウトレイジ・ビヨンド』はかなり楽しめたので今回も期待したが、残念ながら期待値には届かなかった。予告編で「花菱vs韓国フィクサー」とあったので、おおついに花菱組とチャン会長の激突か、一大抗争勃発キター!と思ったのだが、観てみると全然違った。確かに大友(ビートたけし)はチャン会長に庇護され、そのチャン会長の部下が殺されることが今回の物語の発端だが、結局チャン会長は動かず、もめごとを起こすなと部下や大友(ビートたけし)を諫めるばかり。争いの実態は、要するに花菱の新会長(大杉漣)と若頭・西野(西田敏行)の内紛であり、プラス、若い衆を花菱の花田(ピエール瀧)に殺された大友の個人的な復讐である。
そういう意味では、前作や前々作であった組と組の潰し合いですらなく、スケールがちっちゃい。せっかく「最終章」なのだから、ここは一発花菱組とチャン会長が全力でぶつかり合い、潰し合う一大カタストロフにすればそれだけで画面全体が高揚し、面白くなったと思うのだが、それをやるほどの元気がもう北野監督に残っていなかったのだろうか。
とはいえ、話のスケールはともかく、見どころがないわけじゃない。たとえば前作でド迫力を見せつけた西田敏行と塩見三省。この二人が今回はメインの立場でたっぷり見られるのはやっぱり嬉しい。まあ二人とも歳をとったし、それぞれ脳出血やら何やらで倒れてリハビリしたりということもあり、前作の迫力は目減りしているが、それでもこの二人の達者な芝居は十分観ていて楽しい。前作ではなかったチャン会長とこの二人の絡みがあるのもイイぞ。チャン会長役の金田時男は本職の俳優ではないので大した絡みではないけれども、西野が謝っているのにチャン会長がまったく無視し続けるシーンなど、脚本や演出の面白さでカバーしている。
その一方で、本作のキモとなるべき大友の暴れるシーンが弱い。これもこの映画に元気がない主要な理由の一つである。今回、大友は市川(大森南朋)と行動をともにするが、二人でいきなり飲み屋の木村組組長を射殺するシーンは唐突なだけで芸がなく、出所祝いの会場に乗り込んで全員をマシンガンで射殺するシーンはあまりにも乱暴かつ安直である。たった二人であれはないだろう。コントかと思った。
と、こんな風に今回は細かいところがどうも雑である。北野監督、あんまりやる気がなかったのだろうか。結局大友は西野に利用されて終わりというのもさびしい。花菱を潰すのは無理だとしても、何かしら観客の溜飲を下げるような締めくくりが欲しい。前作のラストシーンみたいに、ちょっとした意外性を見せてくれるだけでいいのである。それに『ソナチネ』や『HANA-BI』の時代を思わせるラストは十分予想できたけれども、これまたストレート過ぎて芸がない。ただ、今回大友と行動を共にした市川が最後死なずに済州島に戻ったのは救いだった。
その他、部分的に良かったところとしては終盤の、野村会長と花田の末路。第一作の殺し方遊びが復活した感じで、特に花田の口爆弾は、この男がそもそもの復讐対象であるだけに痛快だった。前作から続いて登場の名高達男と光石研は見せ場というほどのものはないが、最後の光石研の唐突な下克上も、このシリーズに共通する無常観を漂わせていて悪くなかった。
全体としては、芸達者な役者たちが大勢出てきて、もはや芸と化している恫喝ごっこを繰り広げるのは見ていて楽しい。そういう意味ではもうストーリーはどうでも良くて、限りなく空虚な権謀術数や駆け引きの数々を延々ループさせる悲喜劇的かつバイオレントな作劇、という北野監督の十八番を、ただ職人芸として楽しめばいいのかも知れない。とはいえ、たけし自身を含む主要キャストの高齢化と、アクセントとなるべきバイオレンスシーンの気の抜けた感じが、映画全体のエネルギー低下を招いてしまったことは否めない。
日本版ブルーレイで鑑賞。うーん、結局こうなってしまったか。前作『アウトレイジ・ビヨンド』はかなり楽しめたので今回も期待したが、残念ながら期待値には届かなかった。予告編で「花菱vs韓国フィクサー」とあったので、おおついに花菱組とチャン会長の激突か、一大抗争勃発キター!と思ったのだが、観てみると全然違った。確かに大友(ビートたけし)はチャン会長に庇護され、そのチャン会長の部下が殺されることが今回の物語の発端だが、結局チャン会長は動かず、もめごとを起こすなと部下や大友(ビートたけし)を諫めるばかり。争いの実態は、要するに花菱の新会長(大杉漣)と若頭・西野(西田敏行)の内紛であり、プラス、若い衆を花菱の花田(ピエール瀧)に殺された大友の個人的な復讐である。
そういう意味では、前作や前々作であった組と組の潰し合いですらなく、スケールがちっちゃい。せっかく「最終章」なのだから、ここは一発花菱組とチャン会長が全力でぶつかり合い、潰し合う一大カタストロフにすればそれだけで画面全体が高揚し、面白くなったと思うのだが、それをやるほどの元気がもう北野監督に残っていなかったのだろうか。
とはいえ、話のスケールはともかく、見どころがないわけじゃない。たとえば前作でド迫力を見せつけた西田敏行と塩見三省。この二人が今回はメインの立場でたっぷり見られるのはやっぱり嬉しい。まあ二人とも歳をとったし、それぞれ脳出血やら何やらで倒れてリハビリしたりということもあり、前作の迫力は目減りしているが、それでもこの二人の達者な芝居は十分観ていて楽しい。前作ではなかったチャン会長とこの二人の絡みがあるのもイイぞ。チャン会長役の金田時男は本職の俳優ではないので大した絡みではないけれども、西野が謝っているのにチャン会長がまったく無視し続けるシーンなど、脚本や演出の面白さでカバーしている。
その一方で、本作のキモとなるべき大友の暴れるシーンが弱い。これもこの映画に元気がない主要な理由の一つである。今回、大友は市川(大森南朋)と行動をともにするが、二人でいきなり飲み屋の木村組組長を射殺するシーンは唐突なだけで芸がなく、出所祝いの会場に乗り込んで全員をマシンガンで射殺するシーンはあまりにも乱暴かつ安直である。たった二人であれはないだろう。コントかと思った。
と、こんな風に今回は細かいところがどうも雑である。北野監督、あんまりやる気がなかったのだろうか。結局大友は西野に利用されて終わりというのもさびしい。花菱を潰すのは無理だとしても、何かしら観客の溜飲を下げるような締めくくりが欲しい。前作のラストシーンみたいに、ちょっとした意外性を見せてくれるだけでいいのである。それに『ソナチネ』や『HANA-BI』の時代を思わせるラストは十分予想できたけれども、これまたストレート過ぎて芸がない。ただ、今回大友と行動を共にした市川が最後死なずに済州島に戻ったのは救いだった。
その他、部分的に良かったところとしては終盤の、野村会長と花田の末路。第一作の殺し方遊びが復活した感じで、特に花田の口爆弾は、この男がそもそもの復讐対象であるだけに痛快だった。前作から続いて登場の名高達男と光石研は見せ場というほどのものはないが、最後の光石研の唐突な下克上も、このシリーズに共通する無常観を漂わせていて悪くなかった。
全体としては、芸達者な役者たちが大勢出てきて、もはや芸と化している恫喝ごっこを繰り広げるのは見ていて楽しい。そういう意味ではもうストーリーはどうでも良くて、限りなく空虚な権謀術数や駆け引きの数々を延々ループさせる悲喜劇的かつバイオレントな作劇、という北野監督の十八番を、ただ職人芸として楽しめばいいのかも知れない。とはいえ、たけし自身を含む主要キャストの高齢化と、アクセントとなるべきバイオレンスシーンの気の抜けた感じが、映画全体のエネルギー低下を招いてしまったことは否めない。
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