文芸小説家の柳美里氏と対談したばかりでノーベル文学賞受賞者が発表された。賞と全く無縁の私にとって賞はただ社会的評価の一つに過ぎないと思うが影響は大きい。日本では日系イギリス人のカズオ・イシグロ(Kazuo Ishiguro)氏が受賞したと大きく報道している。文学に全く関心のない人さえ「日系イギリス人」だということで喜んでいる。なぜであろう。
2年前にBBCの「著者に会う」という番組で偶然に彼の話を聞いてくまざわ書店で見つけた彼の作品を読んだことがある。戦前の思想を持ち続けた日本人を描いたという『浮世の画家』(原題:An Artist of the Floating World)である。面白い発想である。帝国臣民が戦後の状況をどう考えるかに関心があり、印象的であった。
私の机の上には出版社から送られてきたゲラがある。脱稿して3年近くなる。紆余曲折、タイミングを待っていたので、封筒を見て開く勇気さえなかった。編集者の丁寧、完璧に近いゲラを見て頭が下がるだけであった。明日講演を終えて連休には家内と一緒に楽しい苦労の校正の味を満喫したい。