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レベル4の沈黙


■旧暦2月22日、土曜日、


(写真)窓・人生

春期講習も始まったので、いろいろと、忙しくなってきた。翻訳も、執筆も進めなければ、と焦るこの頃である。

「3.11」は、いまだ、現在進行中の問題だが、ぼくにとっては、二つの矛盾した気分を強くさせるものになった。一つは、自分のしたいことをして死んでいこうという気分である。地震や放射能に直面して、いままでになく死を具体的なもの、リアルなものとして感じた。これは、肉親も含めて、他者の死ではなく、「自分の死」として、地震と放射能を感じた、ということである。それが、したいことをして死んでいこうという気分につながっている。これは、いわば、「今の自分」に関与しようという話だが、もう一つの気分は、これと、矛盾するようだが、「今の自分にだけ関与していてはダメだ」という気分である。「未来に関与したい」という気分である。普通、これは、自分の子どもに対してうっすらと感じるものだが、原発問題を経験して、未来の社会(あるいは、人間に限らないので、未来の地球と言うべきかもしれない)に関与したいと感じるようになった。具体的に、こうした気分が、どういう形をとるのか、今は見えないが、二つの気分が、自分の中に渦巻いている。そして、はっきりしているのは、この二つの気分は、現存社会の全体構造に対する「怒り」にルーツをもっているということである。「怒り」は反復・持続させなければならない...。



今から、12年前の初秋、東海村で起きたレベル4の臨界事故を覚えているだろうか。この事故で、667名の被爆者と死者2名を出した。この事故に衝撃を受けて書いた、拙い詩をここに掲載しておくことも、何か、意味があるかもしれない。俳句との出会い以前の詩は、すべて封印したつもりだったが...。




レベル4の沈黙




鏡に映った
影のように沈黙して
たえず誰かを促しながら
われわれはなぜ黙っているのだろう
スイッチを切った後の
深夜テレビのように
空虚なことばにあふれたこの部屋で

善との距離は年とともに遠く
一月の凍った風に
それを閉じ込めてきたままだ

明け方に降った
白い灰のように沈黙して
たえず何かを促しながら
われわれはなにを待っているのだろう
幕の下りた舞台で繰り返される
モノクロ仮面の無言劇を演じながら

ふいに冬の青空を見た気がした
― 青い光を見た者は
  すべてを失わなければならない

誰もいなくなった
避暑地の秋のように
沈黙してしまいたい
たえず見えない視線に促され
われわれは何をしゃべっているのだろう

伝えたいのはこれじゃない
語り合いたいのはそれじゃない
なぜおまえは促すのか
ことばよ

自分との距離は年とともに遠く
明け方に見る夢の中に
それを忘れてきたままだ

眼があったときの
好きな女の微笑のように
時を止めてしまいたい
たえず見えない気配に促され
われわれはなにを演じているのだろう
望みたいのはこれじゃない
憎みたいのはそれじゃない
なぜおまえは促すのか
身体の他者よ

指先で震える経済システムは街を沈黙させ
暗い目つきをした政治学は愛を沈黙させる
何をどう怒るべきなのか、人はことばを失う

「われわれは仕事をしただけだ」(アドルフ・アイヒマン)
そう、いつでもわれわれは仕事をしただけだ

窓から飛び降りる人の
背中を押しているかもしれないのに
地球の裏側で
飢えた子どもを泣かしているかもしれないのに


初出『COAL SACK 37号』(2000年8月)


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3月25日(金)のつぶやき

09:24 from web
Thank you all for RTs. @msb2005 @jshb32 @haiku_shelf @tiniaden
15:30 from web
Thank you @LuisaNievesIna for kind words. spring day// horses running along / the sea #haiku #poetry
21:25 from goo
シュラウドからの手紙 #goo_delfini2 http://blog.goo.ne.jp/delfini2/e/0c214325abbce0cd00bbaf5404a5e1c3
22:45 from web
Thank you Angelika for #FF. @haiku_shelf Water and vegetables start getting polluted. I check out the data every morning. Anger beyond words
22:46 from web
Thank you both for RTs. @IF_Wolf @haikudatabase
22:47 from web
spring evening// a word, / reading a paper #haiku #poetry #fhaiku
22:48 from web
a shadow/ following me// spring moon #haiku #poetry #fhaiku
22:56 from web
a half-full / white cup// spring #haiku #poetry #fhaiku
by delfini_ttm on Twitter
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一日一句(65)






春深き海の底より余震くる









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