電脳筆写『 心超臨界 』

神はどこにでも存在するというわけにはいかない
そこで母をつくられた
( ユダヤのことわざ )

◆一般市民大虐殺の思想はイギリスとアメリカの発明である

2024-06-01 | 05-真相・背景・経緯
◆一般市民大虐殺の思想はイギリスとアメリカの発明である


それまでの日本人の通念によれば、爆弾自体が貴重なのであり、狙って軍事施設に落とすものだった。民間家屋に落としては価格的にも間尺に合わないし、第一、絨毯爆撃するほど豊富に爆弾はなかったのである。それに、民間人を組織的に殺すという発想は日本人には欠けていた。しかし、それまでの世界の知らなかった生産力をフルに働かせたアメリカと、そこから豊かな援助を受けたイギリスは、空から民間人を大量に、組織的に殺すことを考えつき、それを実行したのである。


『日本史から見た日本人 昭和編』
( 渡部昇一、祥伝社 (2000/02)、p375 )

サイパンが落ちてから日本への大空襲が始まるが、硫黄島が落ちてからは、さらに本格的になった。日本の大都市は、東京をはじめとして、ほとんど残らず破壊しつくされ、焼きつくされる。これはカーチス・ルメイの戦略爆撃によるものである。これに使われた爆撃機B29は新兵器と言ってもよいほど大型のものであり、戦略爆撃というのも新思想であった。

はじめから軍事目的を限定せず、爆撃の対象が市民であるということは、第二次大戦中にイギリスとアメリカが始めたものである。個々の飛行士のやった民間住宅攻撃は、どちら側にもありうることであったが、意図的に大仕掛けにやったのはイギリスであり、アメリカであったことに間違いない。ヒトラーも、はじめはロンドン市街地空襲を禁じていたぐらいである。

イギリス空軍は、1942年(昭和17)3月に、ドイツのリューベックを2百数十機で空襲して焼き払った。ここには軍事目標がないのに、それを知ったうえで、ドイツ人の戦意を失わせるという目的で、無防備の歴史的文化都市を攻撃したのである(ヒトラーはもちろん報復した)。

ケルンやその他、似た例はいくらもあるが、1945年(昭和20)2月13日のドレスデンに対するイギリスとアメリカの空軍の空襲は、歴史に残るものであろう。おそらく、世界で最も素晴らしいバロック建築の多く残っているこの都市を徹底的に爆撃した。イギリスは第1波が2百数十機、第2波が5百数十機で市街地を爆撃し、さらにアメリカの450機のB29が、65万個といわれる焼夷弾を落とし、そのうえ戦闘機が機銃掃射をやった。このため死者は13万5000人でたという。

やられたのはドイツの町だけではない。イタリアでも、ベネディクト会修道会発生の地であるモンテカッシノの修道院が、イギリス軍空軍のために破壊しつくされ、中にいた修道士と避難民数百人が死んだ。

ところが、ここにいたドイツ軍の司令官は、修道院の貴重な文献などの疎開を行ない、しかも、ドイツ兵は修道院の周辺に近寄ることを許さなかったのである。

ドイツ軍がそこを陣地にするのは廃墟にされてからのことである。どちら側の軍隊が文明的であったかを示す一例である。歴史家アーノルド・トインビーが、戦後ここを訪れた時、自分の国の飛行機が西欧文明の母とも言うべきこの大修道院を破壊し、多くの修道士らを殺したことを知って、ショックを受けたと書き記している。

ユダヤ人大虐殺の思想がヒトラーの発明であるとすれば、一般市民大虐殺の思想はイギリスとアメリカの発明である。

それまでの日本人の通念によれば、爆弾自体が貴重なのであり、狙って軍事施設に落とすものだった。民間家屋に落としては価格的にも間尺に合わないし、第一、絨毯爆撃するほど豊富に爆弾はなかったのである。それに、民間人を組織的に殺すという発想は日本人には欠けていた。

しかし、それまでの世界の知らなかった生産力をフルに働かせたアメリカと、そこから豊かな援助を受けたイギリスは、空から民間人を大量に、組織的に殺すことを考えつき、それを実行したのである。

昭和20年(1945)3月10日の東京に対する絨毯爆撃にはじまって、長崎への原爆投下に至る空襲の思想は、目標は軍事施設でなく、一般市民、特に老人と女・子どもを主とする日本人を殺しつくすことであった。(健全な男の多くは出征していて、町に残っているのは主として女・子どもであることぐらいは分かっていたはずである。ドレスデンに集まった人の多くが、東部からの避難民であることを知っていたように。
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