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映画「漂流」(原作:吉村昭)

2022年02月07日 | 映画

 「漂流」は吉村昭先生の長編小説ですが、私は10年くらい前に読みました。Wikipediaによると「天明年間に船の難破で伊豆諸島の鳥島へ漂着し、12年に及ぶ無人島生活の後に故郷へ帰還した土佐の船乗り・長平の史実を基にした物語」とのこと。基本的に実話なのですね。

 天明年間というと1780年くらいですから、もちろん江戸時代で鎖国の頃。漂流して無人島に流れ着く話はあれこれありますが、この時代の事ですので生活はかなり悲惨です。仲間と一緒に流れ着いたものの、恐らく壊血病と思われる病気でみんなバタバタ倒れ、一人だけ生き残って…ということで読んでいる間はかなり気分も暗くなりました。食料は基本的に鳥で、冬場も保存食とした鳥肉の干物で生き延びたり。

 この作品が映画になっていたのは今回見て初めて知りました。1981年6月公開で配給は東宝だったそうですが、当時私は高3。世間では石川ひとみさんの「まちぶせ」がヒットの兆しを見せ始めた頃です。(すいません、そういう事でしか時代を語れませんので。)

 その映画ですが、主演は北大路欣也。共演は坂上二郎、高橋長英、水島涼太、岸田森、渡瀬恒彦…って本当に男ばっかり。最初に流れ着いた時の仲間と、数年後にまた流れ着いた別の船の人たちが全員男なので。

 しかも、何しろ漂流の果ての生活ですので衣装はほとんど褌のみ。髪も伸び放題なので、まあこれだけ色気のない映画も珍しい。一応、故郷にいた頃を回想するシーンで女性は出てきますが、そうでもしないと女優の出番はありません。

 高校生の頃にこの映画を知っていたとしても、半裸のむさ苦しい男ばっか出てくる作品を見ようとは思わなかったでしょう。今回は小説で読んだ世界を結構イメージできたという事は良かったのですが、さすがに過酷な生活なので見てて辛いですね。幸か不幸か、主人公の長平は土佐にいた頃も身分が低く、妻や子を待たせてたという事はなかったので、帰国してから洋画の「キャスト・アウェイ」のようなエピソードはなかったようです。

 吉村昭作品では、他に「海の祭礼」「アメリカ彦蔵」「大黒屋光太夫」など漂流ものがありますが、文章だけであれだけハラハラさせるのはさすが。この映画も力作ではありますが、彼女をデートに誘うのに「北大路欣也が漂流して、ふんどしいっちょで鳥ばっかり食う映画を見に行かないか。」と言っても誰もついてこないでしょうから、そこはマイナスですね。


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