今回より不定期に石川ひとみさんのシングル曲のそれぞれについてあれこれ書きます。少しの情報と私見にてかなり勝手なことを書きますので、ファンの方はお気軽に、そうでない方は読み飛ばして下さい。「そうだ!」という意見も「オー、ソレハ違イマース」という意見も、「ふざけた奴だ、一度しばいてやる!」とか「ウフ、抱かれてみたい」という声もすべて謹んでお受けします。(いえ、もちろん聞くだけでしばかれはしませんが)
では、まずデビュー曲の「右向け右」から。彼女はオーディション番組「君こそスターだ」がデビューのきっかけだそうです。ちなみに、朝ドラ「あまちゃん」で小泉今日子演じる天野春子の少女時代を演じた有村架純が(ややこしい…)番組内で出たオーディション番組は「君でもスターだよ」でした。このネタは「君こそスターだ」を知らないと通じませんね。
ちなみに、私の田舎ではこの番組やってなかったので見た事ありませんし、彼女がどんな評価だったかも知りません。石川ひとみという新人アイドルが当時どんな売り出し方だったかも記憶にありませんが、何しろナベプロですから各方面への強力なプッシュはあったでしょう。
資料によると、この曲のリリースは1978年5月25日。当時私は中三。一応受験生でしたが、まだ部活やってた上にキャンディーズが解散して心が燃え尽き「もうアイドルはいいや」と思ってた頃で、ほとんどアイドルシーンには注目してなかったです。当時アイドルではピンクレディーが全盛期で、榊原郁恵が「夏のお嬢さん」の発売直前、石野真子はデビュー直後、前年デビューした高田みづえはもうヒットチャートの常連で、山口百恵は「プレイバックPartⅡ」のあたり。
ちなみに「右向け右」と同じ日に発売されたヒット曲としては西城秀樹の「炎」があり、ジュリーの「ダーリング」は4日前に発売になってました。巷では庄野真代が「飛んでイスタンブール」でブレイクし、渡辺真知子もヒットを飛ばし、アリスがやっとメジャーになったこともあってニューミュージック勢が席巻してた頃です。
この曲は作詞:三浦徳子/作曲:宮川泰/編曲:竜崎孝路という豪華な布陣ですが、宮川泰先生が当時新人アイドルに曲を提供したというのは他にあったのでしょうか。いずれにしても、ナベプロの彼女に対する期待の高さが伺えようというもの。
ちなみに宮川泰先生と言うと芸人のようにしゃべりが面白く、小坂明子の「あなた」を編曲したことについて「あの大ヒット曲を印税契約でなく3万円で引き受けちゃったのが一生の後悔。まぁ弟子に1万円で書かせて2万円ピンハネしましたけどね。」ですって。なので、もしご存命だったとして「右向け右」について「まぁ新人の曲だから弟子に書かせて…」なんて言うかも。
普通「右向け右」というタイトルを見てどういう曲を想像するでしょうか。通常は行進の号令だと思ってしまいますが、それがアイドル歌手の曲だとすると楽しい曲なのか悲しい曲なのかどうなのかと気になります。その辺、タイトルだけで興味をそそるという点で「掴みはOK」ということで、さすが三浦徳子先生はいい仕事してます。
アレンジは竜崎孝路先生ですが、私にとっては初期のキャンディーズの楽曲でもお馴染みですが、この人は必殺シリーズのアレンジでいい仕事してます。あのシリーズの音楽といえば平尾昌晃先生ですが、あの方は基本編曲はなさらないと記憶しておりますので、ほとんど竜崎先生とのコンビだったと思います。「暗闇仕留人」の主題歌「旅愁」(西崎みどり)はもちろん、「助け人走る」の「望郷の旅」(森本太郎とスーパースター)とかも雰囲気のある名アレンジですし、なんと言っても私が一番好きなのは「必殺仕業人」の「さざなみ」(西崎みどり)。あの曲のストリングスのアレンジは印象的です。「右向け右」でもストリングスはもちろん、イントロの12弦ギターがかっこよくて、私は当時アコースティックの12弦持ってたので当然真似しました。余談ですが、Wikiで見ると竜崎孝路先生はペドロ&カプリシャスの初代ピアニストとなってました。不思議な経歴ですね。
そして曲ですが私は大好きで名作だと思います。が、この曲は当時どの程度ヒットしたのでしょう。もちろんベストテンやそれに近いところには入ってないので、力作であればヒットするというわけにはいきません。デビュー曲からこれだけ歌えるというのは驚きですが、地声でDまで行く彼女の音域の広さもアッパレです。ただし、それがかえって「普通の人は歌いにくい」というのがあったかもしれませんね。当時まだカラオケボックスはなかったですが、あったとしてもその辺の女子中高生が気軽に歌える曲ではなかったでしょう。
私がテレビで何回か見たのは確実ですが、右手でマイクを持ち「右向け右」と左手の人差指で右を差し、「左に行く彼追っちゃいけない」と親指で左を差すというのが印象的でした。ただ、当時覚えてたのはその辺だけでサビのメロディーはレコードで聞いてから覚えました。美人で声が綺麗で歌が上手くて曲も良くて大手プロダクションの期待の新人で、ということでしたが、アイドルファンはそういうのを求めてなかったのかもしれません。
当時の歌謡界なら、サビで毎回声がひっくり返るくらいの方が世間一般には受けたのかもしれません。クリス松村さんはその著書「『誰にも書けない』アイドル論」で、当時のアイドルファンの心理として「イモねえちゃんをみがいていく。その過程を楽しむようなところがあったのです。」と書いています。確かに当時ブレイクしそうなアイドルは榊原郁恵、高田みづえ、石野真子など。親しみやすいルックスに意外なほどの巨乳、タレ目で小柄だけどパワフルな歌声、タレ目で足が太いが八重歯がチャームポイント、といずれ劣らぬいもねえちゃんでした。(失礼…) そういう意味では石川ひとみさんの場合、最初から完成されすぎた感じがあったのかも。ただ、こんな事を言えるのも、その後「まちぶせ」の大ヒットで人気歌手の仲間入りをし、ライブ活動も続けたままデビュー40周年を迎えたからこそであって、その喜びは噛みしめたいと思います。
ということで、毎回3~4曲くらいずつ書こうかと思ってたら「右向け右」だけでこんなになってしまいました。「まちぶせ」までたどり着けるか心配ですが、まぁ40周年ですので記念にダラダラ行きましょう。次回は「くるみ割り人形」に行くと見せかけて、「右向け右」のB面「ピピッと第六感」です。こんな記事を毎回最後まで読む人がいるかどうかですが、まぁわかる人だけ読んでいただければ…。