今日のひとネタ

日常ふと浮かんだことを思いのままに。更新は基本的に毎日。笑っていただければ幸いです。

「昭和と師弟愛 植木等と歩いた43年」/小松政夫

2020年08月22日 21時57分36秒 | ブックレビュー


 小松政夫さんの「昭和と師弟愛 植木等と歩いた43年」という本を読みました。物凄く面白かったです。小松さんといえば、自動車のトップセールスマンが突如植木等さんの付き人になったという逸話を聞いていたのですが、その辺の経緯も全部書いてあって、実際どうだったかというのがよくわかりました。

 そもそも植木等さんが凄くダンディで優しくて素敵な人であり、尊敬する植木さんのために尽した小松さんが師匠の姿を見て真摯に活動したという事です。植木さんが特別な人だったといえばそうなのでしょうが、珍しい師弟関係なのではないかと思います。

 小松さんといえば、私は小学校に入る前くらいから記憶しているでしょうか。あの人の持ちネタとかギャグというと、淀川長治さんの物まね、電線音頭の司会者、しらけ鳥音頭、小松の親分さん、「どうして! どうしてなの! おせーて!」、「ニンドスハッカッカ、マー! ヒジリキホッキョッキョ! 」、「表彰状、あんたはエライ! 以下同文」、「どーかまーひとつ」、「ながーい目で見てください」、「いてーな いてーな」とか、ちょっと考えるだけでも色々出てきます。しかも、「それって小松さんのネタだったの?」という感じのもあって、そういうのはいろんな人が引用してるからであって、それだけ面白かったということでしょう。

 初めて見たというか意識したのは、土曜のお昼にやってたお笑い番組なのですが、完全に番組名忘れてました。が、この本によるとどうやら「お笑いスタジオ」という番組だったようです。他に誰が出てたかも覚えてないのですが、小松政夫さんはよく覚えてます。

 私としてはなんといっても「みごろ!たべごろ!笑いごろ!」での、「悪ガキ一家と鬼かあちゃん」の伊東四朗さんとの絡みが最高で、毎週同じようなことやってるのになんであんなに面白いんだろうと思ってました。あんなに面白い人がいるんだろうかと。

 もっとも、ご本人は相当あちこちで苦労してて、淀川長治さんの物まねも大阪でのクレイジーキャッツのショーの幕間を繋ぐために苦し紛れに出したネタが受けたのだとか。それまで連日違うネタをやってたのがまったく受けず、「やっぱり小松の話じゃなくて休憩にしよう」と言われて、もう1日受けなかったらそれこそ降ろされてたという話も。

 あとは、意外だったのは「前略おふくろ様」の時のショーケンとのエピソードで、萩原健一さんの著書「ショーケン」でも出てこなかった話がありました。あれは意外でした。凄く上手くやってたのかと思ってたら…。

 そんなこんなですが、昭和の芸能の奥底がうかがえる本ではありますし、本当に植木等さんが素敵な人だったというのが行間からも伝わってきます。恐らく小松さんもそれを伝えたかったと思います。

 ちなみに、植木さんの「お呼びでない? こらまた失礼しました~!」というネタは、植木さん本人の談話では「控室で台本読んでるうちに大工の棟梁のかっこさせられて、付き人の小松政夫に『何やってるんですか。生放送だから出て下さい。』って言われて出ていったら全然違うシーンで、それで…」という事になってるそうです。が、実は小松さんは付き人になる前に、既にあのネタをテレビで見て大笑いしてたそうですから、その話は事実ではないと。あれは植木さんが小松さんを話のネタにしようと、後年あちこちでそういう風に語ってるうちに本人もそう思いこんでしまってたのかも…とのことですので、本当に素敵な師弟関係でした。

 ということで、ここ数年で読んだ芸能関係の本では一番面白くて読後感も爽やかな作品でした。興味のある方は是非お読み下さい。ただ、私はこれを図書館から借りてきたので買ったわけではありません。小松の親分さん、すいません…。
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「深海の使者」吉村昭

2020年08月08日 12時52分07秒 | ブックレビュー
 

 私は不勉強だったので、太平洋戦争中に日本の潜水艦がドイツまで行ってたなんて知りませんでした。文庫のカバーにあった「太平洋戦争が勃発して間もない昭和17年4月22日未明、一隻の大型潜水艦がひそかにマレー半島のペナンを出港した。3万キロも彼方のドイツをめざして…。」という紹介文に関心を持ったわけですが、アフリカ大陸の南側を回って行くわけですから、片道に2ヶ月くらいはかかることと、途中で敵艦に発見されて攻撃されてしまう危険も大きく、この本は読んでて驚きの連続であったとともに、あまりにも犠牲者が多く結構辛いものがありました。

 ドイツ側では生ゴムや錫、モリブデン、ボーキサイト等が欲しくて、日本側もドイツの最新のレーダーなど軍事技術情報が欲しいという利害関係が一致し、これが計画されたとか。何回チャレンジしてそのうち成功したのはどれだけだったかというのは、「遣独潜水艦作戦」としてWikipediaに項目もありますから、関心のある人はそちらをご覧いただければわかりやすく記載されています。

 危険なのは敵の攻撃だけじゃなく、喜望峰の沖では海が荒れる大変な難所があるそうで、「潜水艦だから深海に潜れば荒波は関係ないんじゃないの?」と思ったりしてたのですが、そんなことはありません。(当たり前)

 それこそ命がけの作戦ですが、本当に命を落とした人も多かったわけで。明確に相手側の記録により撃沈が確認されたのもあれば、未だにどこで攻撃されたか、単に遭難して沈没したのかもわからないケースもあり。

 この本は、当時の関係者の証言を基に書かれているだけにその苦労が具体的にわかって、「潜水艦というものだけには絶対乗りたくない」と思ってた私の気持ちをより一層強くしました。

 敵機に発見されないようにと長時間水中航行を続けていると、当然酸欠になるわけで、酸素の消費量を抑えるために運動どころか身体を動かすことも禁じられ、船内で体育座りでじっとしていなければなりません。船内の二酸化炭素濃度が上がってくると、もう頭はガンガン痛くなると。トイレも始末が面倒なのでできるだけ行かないようになり、ほぼみんな便秘。水も大事なので2ヶ月以上風呂には入れず、体は垢だらけで頭も痒いという状況を想像すると、いつでもトイレに行けて、思いっきり空気を吸えて風呂にも好きなだけ入れるという生活がいかに幸せであるかというのを感じます。

 なお、潜水艦では往復4ヶ月くらいかかるので、向こうから持ってきた軍事技術も既に古くなってたりして、そこをなんとかしようと飛行機での往来も検討されたそうです。その話も出てきますが、航続の飛行実験の結果「可能である」という判断の元、要人も乗って出発した第一号機は消息不明。撃墜されたか、乱気流に巻き込まれ空中分解したのかもいまだにわからないということで、恐ろしい話満載ですが、この本は大人なら読んでおかねばと思います。まぁ楽しくはないのですが、知らない話ばかりでした。

 で、実はこの本は図書館から借りてきたのでした。吉村昭先生、ごめんなさい。他の本はいっぱい買ってますのでご勘弁を…。って、今更ここで言ってもどうしようもないのですけど。
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話題の書「女帝 小池百合子」読みました

2020年07月29日 22時40分24秒 | ブックレビュー
 
 先月の初めにこの本の評判を聞いて、都知事選の投票までに読もうと注文したところ、結構売れてたのか届いたのは6月末。投票まで1週間しかなかったので、読み終えるには間に合いませんでした。が、これを読んでから選挙結果を見たら、ムカムカ来て眠れなくなったと思われるので、それでよかったかも。

 ちなみに本のカバーは小池都知事の顔写真ですが、もうまともにこの人の顔は見られなくなったのでカバーは外してます。ただし、本の内容は滅茶苦茶面白いです。構成も良いし、文章も読みやすいので、読み始めると止まらなくなります。

 カバーの言葉は、「女性初の都知事であり、女性初の総理候補とされる小池百合子。「芦屋令嬢」、破天荒な父の存在、謎多きカイロ時代。キャスターから政治の道へ。男性社会にありながら常に「風」を巻き起こし、権力の頂点を目指す彼女。誰にも知られたくなかったその数奇な半生を、つきまとう疑惑を、百人を超える関係者の証言と三年半にわたる綿密な取材のもと描き切った。あなたは一体、何者なのですか-。」というもの。

 小池都知事自体がいっぱい本を出してて、Wikiによると単著11冊、共著9冊、対談等4冊など。この本の著者の石井妙子さんは、インタビュー記事なども含め膨大な資料を読み始めて間もなく手が止まってしまったと。要するに彼女がこれまで書いてきたことは「あまりにも話が出来すぎている。あまりにも話の辻褄が合わない。あまりにも矛盾があり、腑に落ちないことが多すぎる。」のだとか。本人が書いた本や、その時々のインタビューでそれぞれ言っていることが違うこともあれば、毎回同じ話が出てくる場合は出来過ぎたネタで根拠が怪しいとか。

 この本の章立ては

序 章:平成の華
第一章:「芦屋令嬢」
第二章:カイロ大学への留学
第三章:虚飾の階段
第四章:政界のチアリーダー
第五章:大臣の椅子
第六章:復讐
第七章:イカロスの翼
終 章:小池百合子という深淵

というものですが、圧倒的に面白いのは、やはりカイロ留学時代の話。本の表紙でピラミッドの前で一緒に写真に映っている女性は、カイロで小池都知事とルームメイトだった方ですが、著者はその人に直接会って証言を得ただけじゃなく、当時の日記やその人が日本の母親に書き送った手紙などの膨大な資料を手にしたので、そこはすごく詳細です。

 小池都知事は父親が色々と悪評のある人でしたが、そのファミリーヒストリー系が第一章ですが、そこは謎と推測の部分も多くてあんまり興味なく、第四章以降の政治家になってからは一応私もリアルで見てた部分が多いので「ふ~ん」と。ただ、これまであの人の何を見てたのだろうと反省はします。

 気になる「カイロ大学は卒業したのか?」という点ですが、この本では様々な資料を基に綿密に検証されています。その辺知りたい人はこの本を読んで貰うのがいいのですが、日本で暮らす、あるエジプト人女性が語ったという言葉が印象的。「たどたどしい日本語で、『私、東大出たよ。一番だったよ』と言われたら、日本人のあなたは、どう思いますか。東大、バカにするのかって思うでしょ。」と。

 なお、小池都知事本人は、「エジプトの名門校として知られるカイロ大学を、正規の四年で卒業することのできた最初の日本人であり首席だった」と何度となく述べているそうですが、そもそも最初の著書には「一年目は留年して」と本人が書いてると。それで他の資料と合わせると入学年と卒業年が合わなかったり。

 また「首席で卒業した」という一方、「テストではカンニングをしてもアラビア文字が書けないので引き写すことができなかった」と自著で書いてます。その程度の語学力だということで、たまには本当のことも書くような。

 また、あまり知られてませんが、この人はカイロ留学時代に一度結婚してます。自著他で結婚の理由を「第四次中東戦争が始まって心細かった」と語ってるそうですが、結婚生活を始めたのは1973年の2月で、戦争が始まったのはこの年の10月。そして同じ10月にカイロ大学の二年生に編入したのですが、「戦争を体験した」「入学式は匍匐前進だった」というのが言い分。同時期に入学した人に取材したところ、入学式で匍匐前進を習ったという人は一人もおらず、カイロ大学構内で数万人が匍匐前進を習えるような敷地もないと。

 いちいち挙げるとキリがないですが、対談記事の定番ネタが「飛行機事故を二度回避したという強運物語」。一度目は商社マンの通訳としてリビアに行った際、1日滞在を延ばしたら、元々乗る予定だった飛行機がイスラエルの領空を侵犯したとして戦闘機に撃墜されたと。しかし、その時期にそのような事故は起こっておらず、別の時期にそういう事件はあったが話が適当過ぎると。もう一つはカイロ大学を卒業して帰る際に帰国を延ばしたら、元々乗る予定だった飛行機がバンコクで工場に突っ込み全員死亡したと。この事故は確かにありましたが、前述のルームメイトの人はその時一緒にいて当時その飛行機に乗る予定だったという話を聞いた記憶がないと。この「二回命拾いした」という話は、都知事初当選後にNHKテレビ「あさイチ」に出演した際にも言ってたそうで、NHKも朝から全国にウソを垂れ流してはいけませんね。

 また、小池都知事は「自宅で母を介護し看取った。その経験を政治に活かす」と言ってて、「自宅で親を看取る」という本も出してますが、自宅介護の期間は11日間。まぁこれはウソではありませんが…。

、それにしても、この本を読むとこの人のキャスター時代の湾岸危機の人質事件への関わり方、議員時代の北朝鮮拉致事件への関わり方、環境大臣時代のアスベスト被害者に対する態度など、その辺はちゃんとニュースを見ておくべきだったろうと私も反省してます。もっとも、そのメディアでの取り上げ方も相当問題あったと今ではわかりますが。

 ちなみにその湾岸危機の頃に、月刊テーミスにてエジプト考古学が専門の吉村作治先生は「(小池の)カイロ大学首席卒業はありえない」とコメントしてたとか。その辺の人はみんなわかってたのでしょう。国会議員になり大臣も経験し、今は都知事ですからカイロ大学も口裏を合わせてるのでしょうけど、どこかで滑り落ちたらみんな手のひら返すのではないかと今から注目してます。この人がただの女性タレントなら、経歴詐称しようが話を盛ろうがどうでもいいのですが、国会議員だったし大臣もやったんですよね。政界でも、防衛大臣まで努めた人が実はとんでもないウソツキだった、あのとき任命したのは誰だと言われたくないためにかばってるケースもあるのでしょう。

 と、この本を一生懸命読んだ私は埼玉県民。海は無いけど夢はある、しかし東京都知事選挙の投票権はないというものですので、都民の皆さんにはこの本をちゃんと読んでいただきたいと思う次第です。いや、それにしても面白かったです。膨大な資料を読み込んで、あちこちで断られながら綿密な取材をし、わかりやすくまとめ上げた著者の方にアッパレをあげましょう。
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今年前半の読書記録

2020年07月02日 22時02分35秒 | ブックレビュー
 年初から結構読書がはかどって、3月以降はほぼ週末に出かけられないこともあったので色々読みました。ということで、どういう本を読んだかを公開します。(初)は初めて読んだ本、(再)は前にも読んだことがある本の意味。


逆説の日本史24 明治躍進編/井沢元彦 (初)
ソ連が満州に侵攻した夏/半藤一利 (初)
ばかたれ/奥居香 (再)
「誰にも書けない」アイドル論/クリス松村 (再)
苦役列車/西村賢太 (初)
続 定年バカ/勢古浩爾 (初)
55歳からの時間管理術/斎藤孝 (初)
B面昭和史/半藤一利 (初)
荒馬のように/甲斐よしひろ (再)
江戸の一番長い日 彰義隊始末記/安藤優一郎 (初)
芸能界本日も反省の色なし/ダン池田 (再)
余命三ヶ月のラブレター/鈴木ヒロミツ (初)
維新の肖像/安部龍太郎 (再)
間宮林蔵/吉村昭 (再)
夜また夜の深い夜/桐野夏生 (初)
マルクスの逆襲/三田誠広 (再)
おれたちバブル入行組/池井戸潤 (初)
僕って何/三田誠広 (初)
吉田豪の最狂全女伝説/吉田豪 (再)
あふれる家/中島さなえ (初)
義珍の拳/今野敏 (初)
プロデューサー/酒井政利 (再)
サンチャゴに降る雨/大石直紀 (初)
いっしょに泳ごうよ/石川ひとみ (再)
A面に恋をして 名曲誕生ストーリー/谷口由記 (初)
アマゾン源流生活/高野潤 (初)
末裔/絲山秋子 (再)
ラーマーヤナ(上)(下)/河田清史 (初)

 実はこれら以外にも、ステイホームに備えて2月末くらいにビジネス系の新書を何冊か買ったのですが、あまりにもつまらなかったのでタイトル失念。それらを合わせると半年で約30冊。一昨年は年間で41冊だったのが、昨年は21冊。半年で昨年の読書量を上回ったわけで、久しぶりに年間50冊を達成できるかもしれません。

 まずまず順調に来たのは、一つはステイホームの影響、もう一つは新しい連続ドラマが始まらないのでテレビ見る時間が減ったこと、あとはハズキルーペを買ったので夜に寝床で読むときに見やすくなってちょっと読書が楽しくなったこともあります。最近は老眼をこじらせたので(?)、電車に乗った時も本はあっても老眼鏡持ってなければ読めませんし。まぁ老眼鏡とハズキルーペは用途が若干違うのですが、多少文字の小さい本でも私はハズキルーペだけで十分です。(別に回し者ではありません。あくまでも私の事情)

 上に挙げた本はどれも結構面白かったです。やはり幕末物とタレント本が多いのですが、初めて読んだ本で特に面白かったのは、「B面昭和史」「余命三ヶ月のラブレター」「夜また夜の深い夜」「アマゾン源流生活」、再度読んだ本では「維新の肖像」「間宮林蔵」「末裔」がやはりいい本だなぁと。そんな中でもベストを選ぶと、やはり「B面昭和史」。買ったのは昨年のGWなのですが、何しろごついので昨年末から読み始めてやっと読めたと。

 あたらしい本では、中島さなえさんの「あふれる家」がありますが、この人は中島らも先生の娘さん。私はらも先生の本はほとんど読んでますし、奥さんが書いた「らも」や友人の鈴木創士さんが書いた評伝も読んでるのでこの世界はスムーズに受け入れられたのですが、いきなりこの本を読んだ人はどんな感じでしょう。ある意味実際の家庭での話に近いというのは、信じられない人もいるかも。

 そして絲山秋子先生の「末裔」は、先月図書館から借りてきて「面白い!」と思いながら読んだのですが、「もしかして…」と自分のブログを検索したらなんと5年前に一度読んでました。ストーリーは完全に忘れてたのですが、そういえばなんか読んだようなと。まぁそういう読書の仕方も素敵ですよね。(と、無理やり締めくくる)

 今は「女帝 小池百合子」を読み始めましたが、買ったけど読んでない本があと3冊、図書館から借りて来週返さねばならないのも1冊、頑張って読まねば。そういえば、久しぶりに黒岩涙香の「鉄仮面」も読みたいし。
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小説「サンチェゴに降る雨」大石直紀

2020年06月11日 21時37分32秒 | ブックレビュー
 1973年9月11日のチリ・クーデターの事を知りたくて、「サンチャゴに雨が降る」という映画を見たかったのですがDVDは手に入らず、「サンチェゴに降る雨」というよく似たタイトルの小説を買ったのでした。

 オビの言葉としては「<サンチャゴに雨が降っています> 1973年9月晴天の朝、南米・チリのラジオからアナウンサーの声が流れたとき、すべてのドラマが始まった!」というもの。ポリティカルサスペンスということでドキュメンタリーではなく、「面白いのかなぁ」と思って読み始めたのですが、これは傑作です。

 クーデター軍との銃撃戦の末に自殺したアジェンデ大統領や、そのクーデター軍を率いたピノチェト将軍など実在の人物は出てくるものの、主役は架空の人物でありこれはフィクション。「んな、アホな」とか「やりすぎだ」と思う場面もあるのですが、何しろ元々のテーマであるクーデターとその後の左翼狩り自体が過酷なものであるので、それもありかと。

 この作者はまったく知らなかったのですが、「パレスチナから来た少女」という作品もあるそうで、そういうところをテーマにしている方なのかも。調べてみると、この方は数々の受賞歴がありますね。これが面白かったので、他の作品にも興味があります。この本は2000年の出版ですが、当時ヒットしたのでしょうか。

 ただ、私が知りたいのは、クーデターに至るまでのアジェンデ大統領の政権当時のこと、クーデター当日のあれこれ、クーデター後の左翼狩り、軍事独裁政権への他国の評価やアメリカとの関係、などなど。それについては、この本の巻末に参考文献がいくつか出てて岩波新書のもあったので、まずはそれらを読んでみようかと思います。難しそうだけど買うのはお手軽ですし。

 ちなみに「プリンプリン物語」のアクタ共和国はこのチリをモデルとしていると言われ、ルチ将軍はもちろんピノチェト将軍、クーデターで倒れた国王アッテンジャーIII世はアジェンデ大統領をモチーフにしていると言われています。ちなみに上記の小説には軍曹は出てこないでございますですよ。

 なんにしても、大人としてはチリ・クーデターもプリンプリン物語も一般常識として知っておきたいところですね。なお、プリンプリン物語は古代インドの叙事詩「ラーマーヤナ」をモチーフにしているそうです。ん~、前から「ラーマーヤナ」を読むと言ってまだ手を出してません。前にお勧めの図書も教えてもらってたのでそちらも読んでみねば。
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「義珍の拳」/今野敏

2020年05月22日 23時05分55秒 | ブックレビュー
 

 今野敏さんの小説です。義珍とはもちろん船越義珍の事ですから、大人の基礎知識としてはほとんどの人がおわかりかと思います。なので、いちいち解説はしません。

 実は私が初めて今野敏さんの本を読んだのは「琉球空手、ばか一代」でした。これは自伝エッセイなので、「面白い本を書く空手家」という認識だったのですが、そのエッセイが発売された2008年にはもう相当な人気作家だったんですね。もっともその後、「隠蔽捜査」シリーズを何冊か読んだので、もう今はわかります。

 船越義珍は、Wikipediaによると「沖縄県出身の空手家。初めて空手を本土に紹介した一人であり、松濤館流の事実上の開祖。本土での空手普及に功績がある。」とのことです。私は松濤館を作った人という認識だけだったのですが、そもそもいま国内で世間に広まっている空手の開祖のような方です。

 この本はその船越義珍の生涯を小説にしたものですが、Wikipediaを見てもほとんどそのままなので、そこは忠実にしてあるのでしょう。20数年前は私も格闘技バカだったので、「格闘技通信」と「ゴング格闘技」を毎月読んでました。しかも総合格闘技だけにしておけばいいものの、空手からキックボクシングまで色々ビデオ買ったりしてたくらいで。その時、伝統派空手の四大流派も覚えたのですが、「ん? 松濤館? 日本空手協会?」とか思ってたのですが、今回そこの関係もよくわかりました。

 それで、これまで「空手の型って練習する意味あるの?」とか思ってたのですが、この本を読んでなんだか習ってみたくなりました。船越義珍は生涯にわたって空手が競技化することも、そもそも組手をすることにも否定的で、「空手の本質は型にある」というのが持論だったのですね。いろんな型をさらっとやるだけではなく、一つの型を何年にも渡って体の使い方を考えながら習得し、それができたら次はまた別の型をやるとか、素敵です。とはいえ、その辺はこの本を読んでみねばわからないでしょう。

 この本の文庫版のあとがきは押井守さんが書いてるのですが、面白い話がありました。今野敏さんは、ときには冗談のように「空手は格闘技ですか? 武道ですか?」と聞かれるときがあるそうですが、その時には「空手は伝統芸です」と答えるそうです。ただし「伝統芸もちょっと強いよ」というそうで、かっこいいですね。

 昔、マンガ雑誌のページの隅に「空手 君の手が手刀になる」という、通信教育の広告がありました。いとうせいこう氏が本当にそれをやってたそうですが、当時は教本を見て覚えた型の写真を撮って送るという形式だったとか。今だともちろんDVDも動画配信もあるので、型ならできるかなぁとか。

 実は私も小学生の頃に1年だけ空手教室に通ってて、立ち方とか突きとか前蹴りは一応習いました。段位があればかっこいいのですが、昇級試験を一度受けただけなので八級まで。さすがに空手家とは名乗れんなぁ。

 とにかく、この本は面白いので船越義珍LOVEの人は今すぐお買い求め下さい。ちょっと泣けます。「生きているものは変わるんだよ」というセリフが素敵ですし。大河ドラマにもできなくはないという気もしてます。
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「荒馬のように 凄春のメッセージ」甲斐よしひろ

2020年03月14日 22時57分37秒 | ブックレビュー
 


 甲斐バンドでお馴染みの甲斐よしひろさんの本で1979年11月の発売ということは、「HERO」が大ヒットした年で「安奈」を発売した頃ですね。発売当時は甲斐バンドの大ファンの友人に借りて読んだ記憶があり、今手元にあるのは20年以上前に中古で買った記憶。第2刷となってますが、発売1ヶ月もしないうちに重版されてるのでよく売れたのでしょう。

 これは書いたのか語り下ろしかわかりませんが、「HERO」大ヒット後で全国各地でコンサートを、またレコーディングも行っていた事を考えると全部文章で書いたのがそのまま本になっているとは考えにくいのですが、詳しいことはわかりません。とはいえあれだけ作詞する人だから、常に文章書けるように用意して旅先で書いてたのかもしれませんね。

 甲斐さんのエッセイでは「九州少年」という本もあって、子供の頃からのエピソードはほぼ重なってますがそちらの方が内容は詳しいです。両方読むとこの本に書いてあることも実際に見た事、体験したことばっかりだというのがわかりますが、曲作りやバンド活動に関する率直な思いはこの「荒馬のように」の方が熱くて、それこそほとばしるようなものを感じます。

 内容は色々興味深いのですが、甲斐バンドのファンとしてはウルッと来る箇所があります。元々一緒にやるはずだったドラマーと殴り合いのけんかの末決別し、メンバーが決まらず悶々としていた頃、松藤さんに会ったところ。以下、その引用。

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 「甲斐さん、いっしょに行っていいかなぁ」
 その言葉を聞いて、一瞬ギクッとなってふりむくと、ちょっと照れながら笑顔の松藤が立っていた。視線が合っても、口から言葉は出なかった。


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 バンド解散後に活動は別々にしていたものの、また再結成しラジオまで一緒にやっている二人の関係を見ているだけに、ここを読むと涙が出そう。この本は文庫にもなっていませんが、いろいろな状況を考えるとこれはこのまま封印なんでしょうね。発売当時の定価は780円だったそうです。ふ~む。
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新書も探せばいろいろと

2020年02月08日 23時52分49秒 | ブックレビュー
 5年ほど前まで、新書というものは普段本を読まない人が読書した気になれる、中身がスカスカな本だと思って敬遠してました。おまけに「国家の品格」がウケたからと言って「○○の品格」という本を乱発するあたり節操ないなぁと思ったり。(「国家の品格」は良い本でしたが) また、「できる人の○○術」とか「××するだけで簡単に△△できる」とかいう本は本当に中身がないと思ったり。

 それが「新書も探せば良いものがある」と気づいたきっかけはマルクスというか資本論。ちょっとしたきっかけで、マルクスの思想や資本論について調べてみたいと思ったときに、書店に行って最初は専門書を探したのですがやたらと敷居が高くて、「ここはお手軽な新書に頼ろう」と思って探したのが三田誠広さんの「マルクスの逆襲」という本。

 その本がすごく良かったので、それ以来大手書店の新書コーナーを時折チェックするようになりました。そして、そんな中で見つけたのは以下のような感じ。

朝日新書「南沙織がいたころ」 永井良和
文春新書「僕らが作ったギターの名器」 椎野秀聰
集英社新書「ちばてつやが語る『ちばてつや』」 ちばてつや
小学館新書「『誰にも書けない』アイドル論」 クリス松村
集英社新書「マルクスの逆襲」 三田誠広
中公新書「ある明治人の記録」 石光真人編著

 基本的に本はキャッチ&リリースというか、置き場所に困るので1冊読み終わったらそれを売って次のを買うということが多いです。そんな中でこれらを残してあるということは、結構気に入っている証明。他には「ザ・タイガース 世界はボクらを待っていた」というのも凄く気に入ったのですが、本棚に見たらないということは売っちゃったんですね。

 今は大きい書店の新書コーナーにたまに行ってじっくりチェックするということをやってます。もちろん気になる本はそこで買いますが、玉石混交というか(まぁほとんど石。偉そうにいいますが)、良さそうなのを探すのは結構大変。ある程度大人買いすると、またある程度の期間経たないと良いのが見つからないですしね。

 ということでしばらく新書チェックしてないし、明日は休みなので久しぶりに探しに行くかなぁ。
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2019年 今年読んだ本

2019年12月29日 20時28分31秒 | ブックレビュー
 年末恒例の読書記録公開ですが、今年は以下の通り。ほとんどタレント本しか読んでないような年だったのでお恥ずかしい限りです。昨年末に兄から「一刀斎夢録」を貰ったので、「よし、今年は時代小説だ!」と思ったのですがそれを読み始めたのが3月だったという…。

 ということで、一覧は以下の通りです。

逆説の日本史23/井沢元彦(初)
ヒットソングを創った男たち 歌謡曲黄金時代の仕掛人/濱口英樹(初)
南沙織のいた頃/永井良和
書評集/小泉今日子(初)
バンドライフ/吉田豪
マルベル堂のプロマイド/マルベル堂
一刀斎夢録/浅田次郎(初)
ショーケン最終章/萩原健一(初)
らも―中島らもとの三十五年/中島美代子
スパイダースありがとう/井上尭之
実話芸人/コラアゲンはいごうまん(初)
芳野藤丸自伝/芳野藤丸
明治維新とは何だったのか/半藤一利(初)
蒼い時/山口百恵(初)
騎士団長殺し/村上春樹(初)
甲斐バンド40周年「嵐の季節」/石田伸也
ポップコーンをほおばって 甲斐バンドストーリー/田家秀樹
元気です/春一番
読みたいことを書けばいい/田中泰延(初)
いっしょに泳ごうよ 愛が支えたB型肝炎克服記/石川ひとみ
ヒット曲の料理人 編曲家・萩田光雄の時代/萩田光雄(初)


 ということで、なんと21冊。昨年は41冊だったので半減。記録によると10年前は81冊でした。どおりで最近頭の中がスカスカだと思ったら、そもそもインプットがないんですね。

 上記では(初)と書いてあるのが初めて読んだ本ですが、「ポップコーンをほおばって」「嵐の季節」「スパイダースありがとう」などはほぼ毎年読んでますね。

 初めて読んだ本の中では「ヒットソングを創った男たち」が抜群に読み応えあって、これはJ-POPというか日本の流行歌が好きな人なら必読というか家に1冊は置いておかねばなりません。

 山口百恵さんの「蒼い時」は、当時読んでなくて今年になって初めて。ご本人がどのくらい書いたのかはわからないのですが、すごく力強いメッセージの伝わってくる部分と当たり障りのないエッセイのような部分が極端でした。実は私はこの人を歌手というかアイドルとしては嫌いでしたが、これを読んでちょっと興味を持ったり。(アイドルは明るく楽しく…と思ってますので)

 あとは村上春樹先生の「騎士団長殺し」はさすがに読ませるというか、やはり文章の表現そのものがレベルが違うという感じはします。これは諸君らもちゃんと読んでおかねば世間の話題についていけなくなるのであらない。(と、読んだ人だけに通じるネタ)

 また、石川ひとみさんの「いっしょに泳ごうよ 愛が支えたB型肝炎克服記」は、発売当時買ったのですが、久しぶりに読もうとしたら度重なる引っ越しのためか本棚で見つからず、また中古で買いました。20数年ぶりに読みましたが、新たな発見はいろいろありますね。ご本人の写真がほとんどないので、これは一般のタレント本とはあきらかに違います。これはB型肝炎への理解を深める上で、すべての日本国民が読むべき本だと思いますので再版を願います。

 ということで、来年はもっといろんな本を読んで脳みそを鍛えたいと思います。目標は50冊。最近出版された幕末、維新もののお勧めの小説があれば情報を求めます。ちなみに司馬遼太郎先生、吉村昭先生の幕末ものはほぼ全部読みました。海音寺潮五郎先生は文章自体があまり好みではありません。(と、偉そうに)
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「騎士団長殺し」読みました(ネタバレなし)

2019年09月01日 15時01分05秒 | ブックレビュー

 遅ればせながら村上春樹先生の「騎士団長殺し」を読みました。結構面白かったです。私は特にファンというかハルキストというわけではなく、長編で読んだのは「ノルウェイの森」「海辺のカフカ」「1Q84」「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」くらい。

 この人の場合は新作が発売されればものすごく売れるわけで、私のように別にファンではないけど読んでみるという人は多いことでしょう。長編とはいえ読み始めて途中で挫折した作品は今のところないので、どれも面白いというのはさすがです。

 それで今回の作品は油絵とか肖像画とかの話があれこれ出てくるし、主人公の住む家とかご近所さんのお屋敷も実際どんな感じか気になるので、映像で見たいと思いました。これはWOWOWあたりでドラマにしていただけないものだろうかと。もちろん私の頭の中でも想像してますが、他の人はどんな風なのを思い描いているのだろうかと興味もありますので。

 そうなるとキャストはどうするかというと、主役は山本耕史か向井理、その友人の雨田政彦には高橋一生、その父親で高名な画家の雨田具彦には田中泯、免色さんには吉田鋼太郎が思い浮かびますが、得体のしれない人物として三上博史でもいいかも。ただし身体を鍛えてそうというとやはり吉田鋼太郎でしょうか。あとは、ドラマの雰囲気を出すには若いころの雨田具彦も是非登場させて欲しいと思いそこは長谷川博己ではどうでしょうか。

 一方の女優陣ですが、あまり明るいタイプの女性が出てこないのでちょっと迷うところ。主人公の妻の柚には蒼井優、免色さんの元彼女には栗山千明、秋川笙子が唯一多少明るいタイプでもいいかと思い菅野美穂で、絵画教室の生徒であり例の人妻には吉田羊と。子役はさっぱりわからないのでそこはおまかせで。

 と、そんなことを考えてるとちょっと楽しいです。なお、毎年ノーベル文学賞の頃になるとハルキストの方々がカフェに集まって、村上作品を朗読しながら発表を待つというのが恒例になってるようです。今回の作品もワッチコンのシーンが多いので、その辺作品と読む個所は考慮されてるのでしょうか。何気なく「1Q84」を読み始めて「勃起は完璧だった」とかいうのが出てくるとドキっとしますし。

 ちなみに今回の本は図書館で借りてきました。村上先生すいません…。

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マルベル堂のプロマイド

2019年02月24日 15時33分54秒 | ブックレビュー

 「マルベル堂のプロマイド」という本を読みました。表紙からしてスターのプロマイドが並んでますが、本文中にも物凄い数の写真が並んでます。(ちなみに全部白黒)

 もっとも写真だけではなく、マルベル堂のプロマイドの歴史や歴代のランキングなどについて語られています。女優さんやアイドルはもちろんのこと、怖いイメージもあったダウンタウンブギウギバンドもプロマイドがあったのを見て、芸能界の奥深さを感じてニンマリしてしまいました。

 なお、我らがひっちゃんこと石川ひとみさんについては小さい写真ともうちょっと大きい写真の2枚が掲載されていますが、彼女については「ひどい近眼なので『目線をレンズに』というと、いったん目を細めてからクリンと見開きました。」のだそうです。可愛いですね。

 なお、ブロマイドかプロマイドかということですが、この本によると「臭化銀を用いた印画紙の名前がブロマイドであり、ブロマイドという紙で焼いた写真がプロマイド」なのだそうです。

 前にみうらじゅん氏がグラビアについて語ってたことがあります。そもそも「グラビア」というのは印刷法のことであり、水着写真とかヌード写真とかという意味ではないとか。雑誌のグラビアと呼ばれているページも、今ではオフセット印刷されているのが実際だそうで、そういう意味からその印刷法と区別する意味で「グラビア~ン」という概念を提唱しているとか。ブロマイドとプロマイドもそんな感じでしょうか。まぁレコード屋といいつつCDしか売ってなかったりすることもありますし。(って、ちょっと違う)

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すごく勉強になります>「南沙織がいたころ」

2019年02月23日 23時30分28秒 | ブックレビュー

 ニュースでは毎日沖縄の話が出る昨今なので、久しぶりにこの本を読んでみました。何回か話題にしてますが、朝日新書の「南沙織がいたころ」(永井良和著)です。著者は関係者ではなくファンの方で現在は大学の社会学部教授なのですが、当時の雑誌記事や関連書籍、ファンクラブの会報、近年の南沙織さんのインタビュー記事などを基に執筆されたものです。あとがきによると、資料に関しては大宅壮一文庫、国立国会図書館、京都府立図書館、京都ノートルダム女子大学学術情報センター図書館、東京大学情報学図書室、関西大学図書館などのお世話になったそうです。巻末の参考文献・資料一覧には、本だけでも70冊くらいの書籍が並んでます。

 で、勉強になる点の一つは当時の沖縄の事情。南沙織さんが通ったのが沖縄の「アメリカン・スクール」だったとされることがよくあり、私もそう思ってました。が、実際にはインターナショナルスクールであり、米軍基地で働くフィリピン人が中心となって1953年に設立されたカトリックの学校だそうです。

 以下この本からの引用です。「1940年代後半から1950年代にかけて、フィリピンで採用され沖縄の米軍基地で働くようになった男性たちのなかに、沖縄の女性と結婚して家庭を築く人があらわれました。しかし、フィリピン国籍の子供たちは米軍の学校にかよえません。」ということで、カプチン会の神父に頼んで学校を作ってもらったそうです。この学校の評判がよくなるにつれ、基地内の学校に通っていた米国軍人の子供たちも転校してきたそうですが、なんか勝手な話で「米国軍人ならなんでも許されるのか」という気もします。

 南沙織さんは、母親がフィリピン系の方と結婚したため、ご本人は両親とも日本人ですが妹さんや弟さんはハーフということになります。フィリピン系の子供はアメリカンスクールにも日本の学校にも通うことが難しく、その受け皿としての私立の学校に兄弟みんな通っていたということですね。そんな事情は知りませんでした。ちなみに家庭内では母親とは日本語で、父親や妹さん、弟さんとは英語で会話していたそうです。おかげで、私なんぞは当時の沖縄の人はみんな英語をそこそこしゃべれるのかと思ってたくらいで、いかに沖縄のことを知らなかったかと。お恥ずかしい…。

 ちなみに、南沙織さんもお父さんがフィリピン系だったり通っていた学校のことで沖縄では差別を受けたことがあるのかもしれませんが、後年もそういう話はほとんど語っていないそうです。故郷を悪く言うのは控えたいという遠慮があったのかも、とも記されています。あとは、デビュー当時は「父親はフィリピン人、母親は日本人なのでハーフ」とされた上に、生まれは「奄美大島」だったり「鹿児島県」だったりという情報でした。奄美大島はお母さんがそちらの方面の出身ではないかという今になっての情報ですが、当時沖縄はまだアメリカだったので、ハーフはOKでも沖縄生まれはNGだったのかという不思議な感じ。売り出し方にはいろいろ謎が多いです。

 もう一点勉強になるのは当時の芸能プロダクション事情。1970年当時は今のようにメディア戦略をじっくり練って本人の成長過程も含めてスターを作り出すようなことはなく、芸能人はプロダクションの「所有物」と考えらえていたのだとか。それを撮影やステージなどの現場に送り込み、興行主と組んで公演の売り上げから取り分を得るような商売をしていたと。

 なので、「住まいを用意する」「学校にもちゃんと行かせる」という約束で沖縄から連れてきたのに、実際はホテル住まいや社長宅の居候、忙しくなると仕事を詰め込み学校にはほとんど行けず試験も受けられず、体調が悪くてドクターストップがかかっても仕事を強行させ結果入院する事態になってようやく休業、そのあげくに「引退したい」という発言が出たと。

 まだ返還前だった沖縄からパスポートを持って「来日」した少女が、プライバシーもなく、学校での友達もできず、話し相手も信用できる大人にも恵まれず、という状況におかれよく精神を病まなかったものだと。そこは相当芯が強かったのでしょうね。あとは、最初のプロダクションはクソでしたが、幸いなことにレコード会社(CBSソニー)では名プロデューサーとして知られる酒井政利さんや、作曲家の筒見京平先生、結果的に「南沙織」の名付け親になった作詞家の有馬美恵子先生らのスタッフに恵まれたことが良かったのでしょう。

 というような話があれこれ出てきて、これらはほんのさわりだけですが、読むたびに目からウロコが千枚くらい落ちるというこれは本当に素晴らしい本です。南沙織さんのファンだけじゃなくて、アイドルとか歌謡界、果ては沖縄問題に関心のある人にも読んでいただきたいと。どーですか、お客さん。

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キョンキョンの書評集

2019年02月21日 23時05分51秒 | ブックレビュー

 先日も話題にしたキョンキョンこと小泉今日子さんの「書評集」という本ですが、全部読みました。最初は「どんなもんでしょう」と軽い気持ちで読み始めたのですが、なかなかどうしてたいしたものです。特に小説の場合、内容に踏み込みつつネタばらしをせずに紹介するのは難しいと思うのですが、そこを短い文章でまとめているのは偉いですね。

 最初は読んだことがある本を彼女がどう紹介してるか興味があったのですが、読み進めるうちに「知らない本を教えて欲しい」と思うようになりました。結果として、本屋さんに探しに行こうとメモしたのは8冊。彼女が紹介した本は翌日から飛ぶように売れたという話も特に大げさではないのかも。

 いやそれにしても、キョンキョンのお世話になる日が来ようとは。世の中わからないものです。

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キョンキョンの書評集をば

2019年01月19日 22時32分38秒 | ブックレビュー

 小泉今日子さんは読売新聞の読書委員を10年努めてたそうで、日曜版に書評を書いてたのだとか。その書評を集めた「小泉今日子 書評集」を読んでみてます。聞くところによると、彼女が書いた書評本は翌日から飛ぶように売れるという話があるんですって。

 この本では2005年から2014年にかけての97本の書評が掲載されています。ちなみにここにある書評本のうち、私が読んだことあるのは3冊のみ。どういう本かというと
「ワルボロ」ゲッツ板谷
「悼む人」天童荒太
「小さいおうち」中島京子
など。

 紹介されてる本は上記以外にも「野ブタ、をプロデュース」「東京タワー オカンとボクと、時々、オトン」「鹿男あをによし」「桐島、部活やめるってよ」など当時話題になったのもありますが、知らない本も結構多いですね。

 調べてみると彼女は月に小説5冊、エッセイ3~4冊を読破するらしいので、私よりは確実に読書量は多いですね。ちなみにキョンキョンはレコードもCDも1枚も持っておらず、ファンではありません。電車で隣の人が読んでる本は面白そうに見えたり、知り合いが喜んでる本はチェックしてみたくなるという現象を利用しようとして、これを読もうと思った次第。ちなみに図書館で借りてきました。まぁ売れてそうな本だからいいかなと。

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話題の本を買いました>「ヒットソングを創った男たち 歌謡曲黄金時代の仕掛人」

2019年01月12日 23時22分20秒 | ブックレビュー

 最近巷で話題の本を買いました。濱口英樹氏著の「ヒットソングを創った男たち 歌謡曲黄金時代の仕掛人」という本で、帯の言葉としては「あのヒット曲を生んだ名物ディレクターが今こそ語る!」で、登場するディレクターとヒット曲としては、草野浩二「恋の奴隷」ほか、酒井政利「魅せられて」ほか、本城和治「また逢う日まで」ほか、東元晃「喝采」ほか、塩崎喬「わたしの城下町」ほか、小栗俊雄「17才」ほか、川瀬泰雄「横須賀ストーリー」ほか、若松宗雄「赤いスイートピー」ほか、木崎賢治「勝手にしやがれ」ほか、髙橋隆「ダンシング・ヒーロー」ほか、島田雄三「セカンド・ラブ」ほか、田村充義「なんてったってアイドル」ほか、長岡和弘「卒業」ほか、吉田格「話しかけたかった」ほか、など。

 ディレクターと書いてますが、有名な酒井政利さんをはじめプロデューサーの人もいますね。とはいえ、実際プロデューサーとディレクターの役割の違いが私はよくわかってないのですが。野球の監督とコーチのようなものかとも思ってたのですが、実際ディレクターがもっと権限持ってるような。

 で、私は第十三章の長岡和弘さんの部分から読みました。ご存じ甲斐バンドのベーシストとしてデビューし、5年間在籍した後脱退してポニーキャニオンのディレクターになった方です。上記のヒット曲として斉藤由貴さんの「卒業」が書いてありますが、石川ひとみさんの「まちぶせ」もこの人の担当で、その他に谷山浩子さん、中島みゆきさん、BABE等も手掛けてたそうです。

 インタビューの詳細は実際に買って読んで貰うとして、内容はかなり充実してました。レコード会社のディレクターがどういう仕事をしているかというのが垣間見えて面白いです。この人はミュージシャンとしての経験があるので、ディレクターにどう接してほしいかという思いもあったあたりで、アーティスト寄りの仕事ができたのでしょう。甲斐バンドではベースでしたが、元々マルチプレイヤーだったんですね。たしかにレコーディングでは「かりそめのスイング」とか「そばかすの天使」でギターも弾いてました。

 そういう、甲斐バンドファンの私も今まで知らなかった話もいろいろありますので、その方面の方も是非どうぞ。面白い本です。とはいえ、私はまだ長岡さんのところしか読んでないですが。

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