『トリック劇場版 ラストステージ』を吉祥寺オデヲンで見ました。
(1)TV版や映画版で見たことがある「トリック」シリーズの最後の作品ということで、映画館に行ってみました(注1)。
本作の冒頭では、“サイキック・ハンター”でもある奇術師フーディーニが、死の訪れを前にして、「死後の世界があるなら、1年後に連絡をとる」と妻に言い残したものの、1年後に彼からの連絡はなかった、というエピソードが紹介されます(注2)。
ついで本編です。
日本科学技術大学の物理学教授・上田次郎(阿部寛)は、講義の中でツングースカ大爆発のことを熱心に語ります(注3)。講義の後、ジムでトレーニングしている上田のところに、貿易商社の社員・加賀美慎一(東山紀之)が訪ねてきて、仕事を依頼します。
さらに上田は貿易商社に出かけて、その詳細を加賀美の上司の有田部長(石丸謙二郎)から聞くのですが、その話とは、自分たちの会社は「赤道スンガイ共和国」でレアアースを採掘しようとしているものの、採掘場周辺にいる原住民らが立ち退かず、おまけにジャングルに住む呪術師から呪いをかけられたというもの。
上田は、2000万円の研究資金の見返りとして呪術師のインチキを見破ってほしい旨を依頼されるものの、今日が期限の呪いをかけられたという有田部長が、上田の目の前で死んでしまうのです。
他方、“天才美人マジシャン”の山田奈緒子(仲間由紀恵)のもとにも、50万円の仕事の依頼が。実に危険な脱出ショーと言われたところ、実際にはTVの「ドッキリ」番組でした。
ギャラをもらえないは、周りから笑いものにされるはで、とても下宿(家賃滞納中)に居られたものではありません。
そこへ上田から「近々海外へ行く用事があるが、君もどうか?」との電話。渡りに船とばかりに、彼女も赤道スンガイ共和国行きに同行することに。
山田は、パスポートを取るために実家に戻り、書道教室を開いている母親の里見(野際陽子)と会ってから(注4)、上田と連れ立って、スンガイ=キン(菅井きん)が「国民の母」として慕われている赤道スンガイ共和国に行き、呪術師ボノイズンミ(水原希子)に出会ったりするのですが、はたして二人はそのインチキを見破ることができるのでしょうか、………?
完結編ということで、マレーシアでロケを敢行したり、また映画のラストで、これまでの作品が早送りで回顧されたりしますが、作品自体のトーン(ゆるーい展開ぶり)はこれまでのものと何ら変わることなく、それでも、大好きな洞穴のシーンがふんだんに出てくるので、クマネズミにとり面白いことは面白かったものの、ラストの作品だからといって取り立てて言うべき点もありません。これで終わりといえば終わりでしょうし、また続編が作られても別にかまわないのではないでしょうか(注5)?
(2)本作については、「トリック」ドラマ第1シリーズ第1話(2000年7月7日放映)を見ないことには話しにならないと書いているレビュー記事を随分と見受けます。
そこで、本作を見た後ながら、第1話を見てみることにしました(注6)。
確かに、第1話の冒頭には、本作と同様に、奇術師フーディーニのエピソードが置かれており(「注2」参照)、また本作の「赤道スンガイ共和国」の「国民の母」であるスンガイ=キンは、第1話に登場する新興宗教「母之泉」の教祖ゴッドマザー・霧島澄子と同じ菅井きんなのです。さらにまた、本作の最後に奈緒子(らしき人物)が見せるマジック(糊付けされた封筒の中から100円玉を取り出す)は(注7)、第1話で、見破れないトリックを見せた者には30万円の賞金を出すという上田教授の前で山田が披露したものと同一のものです。
でも、そんなことを予め知って映画を見るのと、知らないで本作を見るのとで、受ける印象にそれほど違いがあるようには見受けませんでした(まあ、本作のラストが、第1話の冒頭に繋がるというのであれば、円環はそれで閉じることとなり、本作の続編はモウ作られないだろうと思えてきて、感慨深いものを感じるのかもしれませんが)。
さらに、何か関連があるかもしれないと思い、テレビ朝日の「トリック 新作スペシャル3」(1月12日放映)も、録画したものを本作の後に見てみました。
同作は、これまで『劇場版TRICK 霊能力者バトルロイヤル』などで見慣れている世界であり、舞台は「尾古溝村」の「水神家」(注8)。幸代(国生さゆり)、月子(藤田朋子)、華絵(飯島直子)の三姉妹が、先祖が遺した莫大な財宝を探しだそうとやっきになる過程で、次々と変死してしまいます。それを上田と山田のコンビが解明していくわけで、犯人は水神家に恨みを持つお手伝い(朝倉あき)だとわかります。
ドラマの最後で、山田が上田に「次は南の島だな」などと言うところが本作との関連性をうかがわせるとはいえ、その他に繋がりめいた点はあまり感じられませんでした。
それより何より、様々な「小ネタ」はアチコチにふんだんにばらまかれているとはいえ、同作のドラマとしての緊密な作り方に感心してしまいました。著名な推理小説を下敷きにしているからとも思われますが、やはり「トリック」シリーズは国内の村を舞台にした方が見る方も簡単にドラマの中に入って行きやすいのではないかとも思ったところです。
(3)渡まち子氏は、「人気シリーズの14年間の集大成「TRICK トリック 劇場版 ラストステージ」。初の海外ロケでもユルユルの空気はそのまま」として55点をつけています。
(注1)『劇場版TRICK 霊能力者バトルロイヤル』については、このエントリを御覧ください。
(注2)劇場用パンフレット掲載の「トリックを読み解く4つのキーワード」の「1.フーディーニ」によれば、彼に関するエピソードは、「トリック」ドラマ第1シリーズ第1話と『劇場版TRICK 霊能力者バトルロイヤル』においても紹介されているとのこと。
(注3)大学の講義の中で、自分のサンダルを掲げて「サンダルは正義だ」と上田が語りますが、「サンデルの白熱教室」を掛けていて吹き出してしまいます。
(注4)その際に、母親・里見と父親・剛三(岡田真澄)との駆け落ちの経緯が語られますが、それがいわれている「山田奈緒子の出生の秘密」に関わることなのでしょうか?
そういえば、本作で、これまでの「トリック」シリーズで仕掛けられていた様々な謎が全て解明された訳のものでもないような気がします(例えば、「奈子は霊能者に殺されるという予言」)。ということは「ラストステージ」の続編もありうるということでしょうか?
(注5)最近では、本作に出演する阿部寛については『カラスの親指』で、また仲間由紀恵については『武士の家計簿』で、それぞれ見ています。
(注6)このサイトで見ました。
(注7)劇場用パンフレット掲載に監督インタビューにおいて、堤幸彦監督は、この場合の「奈緒子はこの14年間くらいの近過去を失ってしまい、上田のことは覚えていませんが、手品など、もっと昔からやっていたことは記憶しているんです」と述べています。
(注8)2つとも横溝正史の『犬神家の一族』のパロディでしょう。
★★★☆☆☆
象のロケット:トリック劇場版 ラストステージ
(1)TV版や映画版で見たことがある「トリック」シリーズの最後の作品ということで、映画館に行ってみました(注1)。
本作の冒頭では、“サイキック・ハンター”でもある奇術師フーディーニが、死の訪れを前にして、「死後の世界があるなら、1年後に連絡をとる」と妻に言い残したものの、1年後に彼からの連絡はなかった、というエピソードが紹介されます(注2)。
ついで本編です。
日本科学技術大学の物理学教授・上田次郎(阿部寛)は、講義の中でツングースカ大爆発のことを熱心に語ります(注3)。講義の後、ジムでトレーニングしている上田のところに、貿易商社の社員・加賀美慎一(東山紀之)が訪ねてきて、仕事を依頼します。
さらに上田は貿易商社に出かけて、その詳細を加賀美の上司の有田部長(石丸謙二郎)から聞くのですが、その話とは、自分たちの会社は「赤道スンガイ共和国」でレアアースを採掘しようとしているものの、採掘場周辺にいる原住民らが立ち退かず、おまけにジャングルに住む呪術師から呪いをかけられたというもの。
上田は、2000万円の研究資金の見返りとして呪術師のインチキを見破ってほしい旨を依頼されるものの、今日が期限の呪いをかけられたという有田部長が、上田の目の前で死んでしまうのです。
他方、“天才美人マジシャン”の山田奈緒子(仲間由紀恵)のもとにも、50万円の仕事の依頼が。実に危険な脱出ショーと言われたところ、実際にはTVの「ドッキリ」番組でした。
ギャラをもらえないは、周りから笑いものにされるはで、とても下宿(家賃滞納中)に居られたものではありません。
そこへ上田から「近々海外へ行く用事があるが、君もどうか?」との電話。渡りに船とばかりに、彼女も赤道スンガイ共和国行きに同行することに。
山田は、パスポートを取るために実家に戻り、書道教室を開いている母親の里見(野際陽子)と会ってから(注4)、上田と連れ立って、スンガイ=キン(菅井きん)が「国民の母」として慕われている赤道スンガイ共和国に行き、呪術師ボノイズンミ(水原希子)に出会ったりするのですが、はたして二人はそのインチキを見破ることができるのでしょうか、………?
完結編ということで、マレーシアでロケを敢行したり、また映画のラストで、これまでの作品が早送りで回顧されたりしますが、作品自体のトーン(ゆるーい展開ぶり)はこれまでのものと何ら変わることなく、それでも、大好きな洞穴のシーンがふんだんに出てくるので、クマネズミにとり面白いことは面白かったものの、ラストの作品だからといって取り立てて言うべき点もありません。これで終わりといえば終わりでしょうし、また続編が作られても別にかまわないのではないでしょうか(注5)?
(2)本作については、「トリック」ドラマ第1シリーズ第1話(2000年7月7日放映)を見ないことには話しにならないと書いているレビュー記事を随分と見受けます。
そこで、本作を見た後ながら、第1話を見てみることにしました(注6)。
確かに、第1話の冒頭には、本作と同様に、奇術師フーディーニのエピソードが置かれており(「注2」参照)、また本作の「赤道スンガイ共和国」の「国民の母」であるスンガイ=キンは、第1話に登場する新興宗教「母之泉」の教祖ゴッドマザー・霧島澄子と同じ菅井きんなのです。さらにまた、本作の最後に奈緒子(らしき人物)が見せるマジック(糊付けされた封筒の中から100円玉を取り出す)は(注7)、第1話で、見破れないトリックを見せた者には30万円の賞金を出すという上田教授の前で山田が披露したものと同一のものです。
でも、そんなことを予め知って映画を見るのと、知らないで本作を見るのとで、受ける印象にそれほど違いがあるようには見受けませんでした(まあ、本作のラストが、第1話の冒頭に繋がるというのであれば、円環はそれで閉じることとなり、本作の続編はモウ作られないだろうと思えてきて、感慨深いものを感じるのかもしれませんが)。
さらに、何か関連があるかもしれないと思い、テレビ朝日の「トリック 新作スペシャル3」(1月12日放映)も、録画したものを本作の後に見てみました。
同作は、これまで『劇場版TRICK 霊能力者バトルロイヤル』などで見慣れている世界であり、舞台は「尾古溝村」の「水神家」(注8)。幸代(国生さゆり)、月子(藤田朋子)、華絵(飯島直子)の三姉妹が、先祖が遺した莫大な財宝を探しだそうとやっきになる過程で、次々と変死してしまいます。それを上田と山田のコンビが解明していくわけで、犯人は水神家に恨みを持つお手伝い(朝倉あき)だとわかります。
ドラマの最後で、山田が上田に「次は南の島だな」などと言うところが本作との関連性をうかがわせるとはいえ、その他に繋がりめいた点はあまり感じられませんでした。
それより何より、様々な「小ネタ」はアチコチにふんだんにばらまかれているとはいえ、同作のドラマとしての緊密な作り方に感心してしまいました。著名な推理小説を下敷きにしているからとも思われますが、やはり「トリック」シリーズは国内の村を舞台にした方が見る方も簡単にドラマの中に入って行きやすいのではないかとも思ったところです。
(3)渡まち子氏は、「人気シリーズの14年間の集大成「TRICK トリック 劇場版 ラストステージ」。初の海外ロケでもユルユルの空気はそのまま」として55点をつけています。
(注1)『劇場版TRICK 霊能力者バトルロイヤル』については、このエントリを御覧ください。
(注2)劇場用パンフレット掲載の「トリックを読み解く4つのキーワード」の「1.フーディーニ」によれば、彼に関するエピソードは、「トリック」ドラマ第1シリーズ第1話と『劇場版TRICK 霊能力者バトルロイヤル』においても紹介されているとのこと。
(注3)大学の講義の中で、自分のサンダルを掲げて「サンダルは正義だ」と上田が語りますが、「サンデルの白熱教室」を掛けていて吹き出してしまいます。
(注4)その際に、母親・里見と父親・剛三(岡田真澄)との駆け落ちの経緯が語られますが、それがいわれている「山田奈緒子の出生の秘密」に関わることなのでしょうか?
そういえば、本作で、これまでの「トリック」シリーズで仕掛けられていた様々な謎が全て解明された訳のものでもないような気がします(例えば、「奈子は霊能者に殺されるという予言」)。ということは「ラストステージ」の続編もありうるということでしょうか?
(注5)最近では、本作に出演する阿部寛については『カラスの親指』で、また仲間由紀恵については『武士の家計簿』で、それぞれ見ています。
(注6)このサイトで見ました。
(注7)劇場用パンフレット掲載に監督インタビューにおいて、堤幸彦監督は、この場合の「奈緒子はこの14年間くらいの近過去を失ってしまい、上田のことは覚えていませんが、手品など、もっと昔からやっていたことは記憶しているんです」と述べています。
(注8)2つとも横溝正史の『犬神家の一族』のパロディでしょう。
★★★☆☆☆
象のロケット:トリック劇場版 ラストステージ