『ホワイトハウス・ダウン』をTOHOシネマズ渋谷で見ました。
(1)ことさら暑い今年の夏なのでスカッとするアクション物がいいのではと思い、映画館に行きました。
ホワイトハウスをめぐるアクション映画は、もう一つ『エンド・オブ・ホワイトハウス』も公開されているところ、そちらの主演がジェラルド・バトラーなので敬遠することとし(注1)、チャニング・テイタム主演の方を選んでみました。
両作を比較することはできないものの、クマネズミとしてはまあ正解だったのではと思っています。何しろ大層面白い作品に仕上がっているのですから。
本作は、一方で、ソイヤー大統領(ジェイミー・フォックス)が、ヘリコプターでワシントンDCの上空を飛び、他方で、それを下から少女が見ているところから始まります。
大統領は、ジュネーブで中東和平に関する歴史的な演説を終えてホワイトハウスに戻るところであり、家族はパリに行っています。
他方、少女は、議会警察官のジョン・ケイル(チャニング・テイタム)の娘のエミリー(ジョーイ・キング)で、11歳。

この日は、大統領警護官の面接を受けるために、ジョンはホワイトハウスに入るのですが(注2)、エミリーも同行します。エミリーがホワイトハウスおたくであることを知っているジョンが、事前に2枚の入館許可証を取得していたというわけです(注3)。
ジョンの面接ははかばかしくいかなかったものの(注4)、それが終わると二人は、ホワイトハウス見学ツアーに参加します。
ツアーの一行は、途中でソイヤー大統領と行き交います。エミリーは大胆にも大統領に対しビデオを撮りながらのインタビューを敢行し、大統領も気さくに応じます。

そんな中で、ホワイトハウスの東方にある国会議事堂のドームが、突然爆発します。
それを合図に、ホワイトハウスも、潜入していたテロリストたちに占拠されてしまいます。
さあ、ジョンやエミリー、そして大統領の運命は、……?
もちろん、どんな結末になるのか観客は見る前からわかっています。主人公やエミリー、そしてアメリカ大統領が、ホワイトハウスを占拠するテロリストたちの犠牲になってしまうはずもありません。それでも、主人公たちは危機一髪の状況に次から次へと見舞われ、さらには様々の最新兵器が持ちだされ、挙句は芝生庭園の狭い場所でカーチェイスまでやってのけるのですから、見ている方は終始ハラハラドキドキしてしまいます。
主人公を演じるチャニング・テイタムはあまり知的な感じがしないのが難ながら、若さあふれる風貌が随分と魅力的です(注5)。

また大統領を演じるジェイミー・フォックス(注6)も、やや背が低いのが問題ではと思えるものの、その演技力には脱帽です(注7)。
(2)本作には、むろん様々な問題点があるでしょう。
例えば、最後に明かされる黒幕が謀ったにしては、全体が随分と無茶な計画だなと思えます(注8)。
また、テロリストが、事前に作業員として何人もホワイトハウスの中に潜入できたというのも不思議な気がします(注9)。
さらには、ホワイトハウスを空爆すべく出撃した戦闘機の搭乗員が、地上に女の子を見て独断で爆撃をやめてしまいますが、いくら何でもそんなことがあるでしょうか(注10)。
でも、それらのことは、次々に映しだされるハラハラドキドキの展開の中ではつまらないこととして、あまり気になりません。
(3)誠に些細なことながら、クマネズミが興味をひかれたのは、ホワイトハウスの地下道です。ジョンと大統領が逃げに逃げて、遂に地下道を通って外に出ようということになります。
どうやらホワイトハウスにも、そこから外に抜け出だすことができる地下道が設けられているようなのです(注11)。
これは、『アルゴ』でも、当初、テヘランの米国大使館がイラン民衆に占拠される直前、地下道を通って6人の館員が外に抜け出たのを思い起こさせます。
さらには、『プリンセストヨトミ』で映し出された「真田の抜け穴」(エントリの「注3」をご覧ください)とか、『黒く濁る村』の地下通路〔エントリの(2)をご覧ください〕なども。
尤も、本作の場合、ジョンと別行動をとった大統領がその地下道を進んでいくと、出入口の扉には爆破装置が施されていて、通ることができませんでしたが(注12)。
でも、ジョンやエミリーは、ホワイトハウスというトンネルを辛うじて抜け出したら、そこは素晴らしい新世界が開けていたのではないでしょうか(大統領にしても、この事件を契機に、中東和平の実現に大きく踏み出すことができたようですし)!
(4)渡まち子氏は、「占領されたホワイトハウスでテロリストと戦うアクション大作「ホワイトハウス・ダウン」。大統領と落ちこぼれ警備員の格差コンビのバディ・ムービーだ」として60点をつけています。
他方、前田有一氏は、「脚本は冗談みたいなテキトーさで、ご都合主義と細部の整合性不足に満ちている」などとして40点しかつけていません。
(注1)すぐ前に見た『スマイル、アゲイン』で失敗したので。
(注2)ジョンは、議会警察官として下院議長(リチャード・ジェンキンス)の警護をしていますが、年来、大統領警護官になりたいと願っています。
(注3)ジョンは妻と離婚していて、時々娘と合うことになっています。実はジョンは、ある発表会にエミリーが出演するのを見るはずだったところ、失念してすっぽかしてしまい、エミリーの機嫌がよくありません。それで、ホワイトハウス入館証をうまく取得して、エミリーを宥めようとする魂胆もジョンにはありました。
なお、こうした設定は、上記「注1」の『スマイル、アゲイン』でも同じようにとられています。アメリカでは、それだけ離婚が普通に見られる状況だということなのでしょう。
(注4)ジョンを面接したのは、大統領の次席特別警護官のキャロル(マギー・ギレンホール)ですが、なんと彼女は、大学時代ジョンと恋人関係にあったのです。
キャロルの面接試験では不合格ながら、ラストでは、ジョンは大統領直々に特別警護官にしてもらいましたから、ひょっとしたら昔の関係が復活するのかもしれません!
(注5)チャニング・テイタムが出演した作品としては、『親愛なるきみへ』と『陰謀の代償 N.Y.コンフィデンシャル』を見ています(『パブリック・エネミ―ズ』にも出演していたようですが、印象に残っていません)。
なお、彼の実体験に基づく映画『マジック・マイク』も公開中です。
(注6)ジェイミー・フォックスについては、主演作『ジャンゴ』を見ていますが、クマネズミの怠慢によりエントリをアップできませんでした。
(注7)その他、下院議長役のリチャード・ジェンキンスについては、最近では『キャビン』を見ました。
(注8)本作では、黒幕のさらなる背後に軍事産業があるような描き方になっていて、上記(4)で触れる前田有一氏も「テーマである軍産複合体批判」と述べています。
ですが、軍事産業が事件の背後にあるとしても、本作におけるように、全世界を一瞬で壊滅させかねないことを計画するだろうか、という疑問が湧いてきます。というのも、大統領の核ボタンを作動させて核ミサイルを各地に落としたりしたら、その地は壊滅的な状況になるでしょうし、そればかりか、当然に他の国(ロシアや中国など)から核ミサイルが米国に向けて飛んでくるでしょうから、軍事産業を含む米国自体も消滅しかねないからです。
軍事産業は、戦争が各地で引き起こされることは望むでしょうが、核攻撃までは望まないのではないでしょうか?自国も他国も存続していなければ、戦争自体がなくなってしまい、兵器に対する継続的な需要は生み出されないことでしょう!
ただ、ここらあたりのことは、エンタメ映画にとっては全くどうでもいいことかもしれません。何か背後に「X」が存在しているということで十分なのでしょう。なにより、こうしたエンタメ映画に、前田氏のように社会的な「テーマ」を求めてもなんの益もないことでしょうから。
(注9)テロリストと内通して本件の実行部隊を統括する者が、ホワイトハウス内の高官という設定なので、なんでも可能なのかもしれません(ホワイトハウス内に備蓄されている武器を利用できたりもします)。ただ、何段階もの事前チェックがあるはずで、いくらトップダウンだからといって簡単なことではないのではという気がしますが。
(注10)これはエントリの(4)で触れる前田有一氏が指摘する点ながら、空爆機の搭乗員が地上で発見するのは、星条旗を振るエミリーなのですから、空爆ができなかったのも致し方ありません。なにしろ、エミリーは、上記「注3」の発表会では「旗振り」をやることになっていたのですから!
また、同氏は、「懐中時計の伏線も、いくらなんでもそういう形で使うことはないよねと登場時に思った通りのオチ」と述べていますが、これもご愛嬌と思えばいいのではないでしょうか(妻から贈られたものながら、「リーンカーンの懐中時計だ」とソイヤー大統領は言います)。
なお、ソイヤー大統領が、わざわざ「エア・ジョーダン」のシューズを履いていたりするなど、本作にはいろいろ面白い細工が施されています。
(注11)ケネディ大統領が、マリリン・モンローと密会するために使った地下道だとされています。
(注12)最後には、テロリストの一人がそこを通ろうとしてもろともに爆破されてしまいます。自分たちで仕掛けたにもかかわらず、どうして爆発させてしまったのかよくわかりませんが、慌てていたために誤操作をしてしまったのでしょうか?
★★★★☆
象のロケット:ホワイトハウス・ダウン
(1)ことさら暑い今年の夏なのでスカッとするアクション物がいいのではと思い、映画館に行きました。
ホワイトハウスをめぐるアクション映画は、もう一つ『エンド・オブ・ホワイトハウス』も公開されているところ、そちらの主演がジェラルド・バトラーなので敬遠することとし(注1)、チャニング・テイタム主演の方を選んでみました。
両作を比較することはできないものの、クマネズミとしてはまあ正解だったのではと思っています。何しろ大層面白い作品に仕上がっているのですから。
本作は、一方で、ソイヤー大統領(ジェイミー・フォックス)が、ヘリコプターでワシントンDCの上空を飛び、他方で、それを下から少女が見ているところから始まります。
大統領は、ジュネーブで中東和平に関する歴史的な演説を終えてホワイトハウスに戻るところであり、家族はパリに行っています。
他方、少女は、議会警察官のジョン・ケイル(チャニング・テイタム)の娘のエミリー(ジョーイ・キング)で、11歳。

この日は、大統領警護官の面接を受けるために、ジョンはホワイトハウスに入るのですが(注2)、エミリーも同行します。エミリーがホワイトハウスおたくであることを知っているジョンが、事前に2枚の入館許可証を取得していたというわけです(注3)。
ジョンの面接ははかばかしくいかなかったものの(注4)、それが終わると二人は、ホワイトハウス見学ツアーに参加します。
ツアーの一行は、途中でソイヤー大統領と行き交います。エミリーは大胆にも大統領に対しビデオを撮りながらのインタビューを敢行し、大統領も気さくに応じます。

そんな中で、ホワイトハウスの東方にある国会議事堂のドームが、突然爆発します。
それを合図に、ホワイトハウスも、潜入していたテロリストたちに占拠されてしまいます。
さあ、ジョンやエミリー、そして大統領の運命は、……?
もちろん、どんな結末になるのか観客は見る前からわかっています。主人公やエミリー、そしてアメリカ大統領が、ホワイトハウスを占拠するテロリストたちの犠牲になってしまうはずもありません。それでも、主人公たちは危機一髪の状況に次から次へと見舞われ、さらには様々の最新兵器が持ちだされ、挙句は芝生庭園の狭い場所でカーチェイスまでやってのけるのですから、見ている方は終始ハラハラドキドキしてしまいます。
主人公を演じるチャニング・テイタムはあまり知的な感じがしないのが難ながら、若さあふれる風貌が随分と魅力的です(注5)。

また大統領を演じるジェイミー・フォックス(注6)も、やや背が低いのが問題ではと思えるものの、その演技力には脱帽です(注7)。
(2)本作には、むろん様々な問題点があるでしょう。
例えば、最後に明かされる黒幕が謀ったにしては、全体が随分と無茶な計画だなと思えます(注8)。
また、テロリストが、事前に作業員として何人もホワイトハウスの中に潜入できたというのも不思議な気がします(注9)。
さらには、ホワイトハウスを空爆すべく出撃した戦闘機の搭乗員が、地上に女の子を見て独断で爆撃をやめてしまいますが、いくら何でもそんなことがあるでしょうか(注10)。
でも、それらのことは、次々に映しだされるハラハラドキドキの展開の中ではつまらないこととして、あまり気になりません。
(3)誠に些細なことながら、クマネズミが興味をひかれたのは、ホワイトハウスの地下道です。ジョンと大統領が逃げに逃げて、遂に地下道を通って外に出ようということになります。
どうやらホワイトハウスにも、そこから外に抜け出だすことができる地下道が設けられているようなのです(注11)。
これは、『アルゴ』でも、当初、テヘランの米国大使館がイラン民衆に占拠される直前、地下道を通って6人の館員が外に抜け出たのを思い起こさせます。
さらには、『プリンセストヨトミ』で映し出された「真田の抜け穴」(エントリの「注3」をご覧ください)とか、『黒く濁る村』の地下通路〔エントリの(2)をご覧ください〕なども。
尤も、本作の場合、ジョンと別行動をとった大統領がその地下道を進んでいくと、出入口の扉には爆破装置が施されていて、通ることができませんでしたが(注12)。
でも、ジョンやエミリーは、ホワイトハウスというトンネルを辛うじて抜け出したら、そこは素晴らしい新世界が開けていたのではないでしょうか(大統領にしても、この事件を契機に、中東和平の実現に大きく踏み出すことができたようですし)!
(4)渡まち子氏は、「占領されたホワイトハウスでテロリストと戦うアクション大作「ホワイトハウス・ダウン」。大統領と落ちこぼれ警備員の格差コンビのバディ・ムービーだ」として60点をつけています。
他方、前田有一氏は、「脚本は冗談みたいなテキトーさで、ご都合主義と細部の整合性不足に満ちている」などとして40点しかつけていません。
(注1)すぐ前に見た『スマイル、アゲイン』で失敗したので。
(注2)ジョンは、議会警察官として下院議長(リチャード・ジェンキンス)の警護をしていますが、年来、大統領警護官になりたいと願っています。
(注3)ジョンは妻と離婚していて、時々娘と合うことになっています。実はジョンは、ある発表会にエミリーが出演するのを見るはずだったところ、失念してすっぽかしてしまい、エミリーの機嫌がよくありません。それで、ホワイトハウス入館証をうまく取得して、エミリーを宥めようとする魂胆もジョンにはありました。
なお、こうした設定は、上記「注1」の『スマイル、アゲイン』でも同じようにとられています。アメリカでは、それだけ離婚が普通に見られる状況だということなのでしょう。
(注4)ジョンを面接したのは、大統領の次席特別警護官のキャロル(マギー・ギレンホール)ですが、なんと彼女は、大学時代ジョンと恋人関係にあったのです。
キャロルの面接試験では不合格ながら、ラストでは、ジョンは大統領直々に特別警護官にしてもらいましたから、ひょっとしたら昔の関係が復活するのかもしれません!
(注5)チャニング・テイタムが出演した作品としては、『親愛なるきみへ』と『陰謀の代償 N.Y.コンフィデンシャル』を見ています(『パブリック・エネミ―ズ』にも出演していたようですが、印象に残っていません)。
なお、彼の実体験に基づく映画『マジック・マイク』も公開中です。
(注6)ジェイミー・フォックスについては、主演作『ジャンゴ』を見ていますが、クマネズミの怠慢によりエントリをアップできませんでした。
(注7)その他、下院議長役のリチャード・ジェンキンスについては、最近では『キャビン』を見ました。
(注8)本作では、黒幕のさらなる背後に軍事産業があるような描き方になっていて、上記(4)で触れる前田有一氏も「テーマである軍産複合体批判」と述べています。
ですが、軍事産業が事件の背後にあるとしても、本作におけるように、全世界を一瞬で壊滅させかねないことを計画するだろうか、という疑問が湧いてきます。というのも、大統領の核ボタンを作動させて核ミサイルを各地に落としたりしたら、その地は壊滅的な状況になるでしょうし、そればかりか、当然に他の国(ロシアや中国など)から核ミサイルが米国に向けて飛んでくるでしょうから、軍事産業を含む米国自体も消滅しかねないからです。
軍事産業は、戦争が各地で引き起こされることは望むでしょうが、核攻撃までは望まないのではないでしょうか?自国も他国も存続していなければ、戦争自体がなくなってしまい、兵器に対する継続的な需要は生み出されないことでしょう!
ただ、ここらあたりのことは、エンタメ映画にとっては全くどうでもいいことかもしれません。何か背後に「X」が存在しているということで十分なのでしょう。なにより、こうしたエンタメ映画に、前田氏のように社会的な「テーマ」を求めてもなんの益もないことでしょうから。
(注9)テロリストと内通して本件の実行部隊を統括する者が、ホワイトハウス内の高官という設定なので、なんでも可能なのかもしれません(ホワイトハウス内に備蓄されている武器を利用できたりもします)。ただ、何段階もの事前チェックがあるはずで、いくらトップダウンだからといって簡単なことではないのではという気がしますが。
(注10)これはエントリの(4)で触れる前田有一氏が指摘する点ながら、空爆機の搭乗員が地上で発見するのは、星条旗を振るエミリーなのですから、空爆ができなかったのも致し方ありません。なにしろ、エミリーは、上記「注3」の発表会では「旗振り」をやることになっていたのですから!
また、同氏は、「懐中時計の伏線も、いくらなんでもそういう形で使うことはないよねと登場時に思った通りのオチ」と述べていますが、これもご愛嬌と思えばいいのではないでしょうか(妻から贈られたものながら、「リーンカーンの懐中時計だ」とソイヤー大統領は言います)。
なお、ソイヤー大統領が、わざわざ「エア・ジョーダン」のシューズを履いていたりするなど、本作にはいろいろ面白い細工が施されています。
(注11)ケネディ大統領が、マリリン・モンローと密会するために使った地下道だとされています。
(注12)最後には、テロリストの一人がそこを通ろうとしてもろともに爆破されてしまいます。自分たちで仕掛けたにもかかわらず、どうして爆発させてしまったのかよくわかりませんが、慌てていたために誤操作をしてしまったのでしょうか?
★★★★☆
象のロケット:ホワイトハウス・ダウン