きっと痛快無比な映画に違いないという予感がして、『ロビン・フッド』を見に、TOHOシネマズ日劇に行ってきました。こうした冒険活劇を見るなら、大画面を備えた劇場に限ると思ったものですから。
(1)『ロビン・フッド』というからには、シャーウッドの森の奥に隠れ住んでいながらも、リトル・ジョンなどの仲間らとともに、悪行の限りを尽くす時の権力者を懲らしめるヒーローの物語であり、それをおなじみのラッセル・クロウが演じるものだとばかり思い込んでいました。
ですが、実際には、この映画は、その前史というべきものなのです。
すなわち、第3回目の十字軍遠征の帰途、ロビン・フッド(ラッセル・クロウ)が、瀕死のノッティンガム領主の息子の依頼で、その剣を届けに父親の元に出向いたところ、領主から息子の身代わりになるように求められます。どこと言って行く当てのない身、ロビンはすぐに了承しますが、妻(ケイト・ブランシェット)は、当然のことながら、とてもすぐには受け入れてくれません。
でも、ロビンの誠実さが通じたのか、次第に馬が合ってきます。そして、そうこうするうちに様々な出来事が起こり、ついには、ジョン王の下でフランス王の侵略を阻止してしまうという、とても考えられない活躍をしてしまうのです!
そんなことなら、ジョン王の右腕となってさらなる飛躍がと思われたところ、マグナカルタへの署名をジョン王に強制したというトガで、逆にジョン王に追われる身となってしまうのです。
そのため、シャーウッドの森に仲間たちと逃げ込んで、その後はよく知られた活躍をするという次第。
いってみれば、映画『ゲゲゲの女房』が、これから水木しげるの漫画が大いに売れだす直前で、映画『ノーウェアボーイ』がジョン・レノンらがハンブルグ行きが決まったところでジ・エンドとなってしまうのに似ているかもしれません!
とはいえ、これら2作では、主人公たちはこれ以降世の人に知ってもらうことになるのに対して『ロビン・フッド』は、これからは世の中から隠れることになるという点で、180度違っているとも言えるかもしれません。
でも、世の人がロビン・フッドに喝采を浴びせかけるのは、これからの活躍によってなのですが!
それでも、いくら領主が彼の父親を知っているからと言っても、石工の息子にすぎないロビン・フッドが、直ちに領主の息子の身代わりとなるなんて、それも貴族の集会での演説によって、皆の心を一つにまとめあげてしまうなんて、という気にもなります。ですが、ロビン・フッドにまつわる話は元々全て伝説なのでしょうから、どんなことが起きても不思議ではないのでしょう。すべては歴史ファンタジーであって、むしろ余り本当らしさを追求すべきではないのかもしれません。
ノッティンガムの村の様子などは、『黒く濁る村』で描かれている村と比べたら、はるかにリアルな感じがします。きちんと農作業が映し出され、ジョン王の過酷な税金の取立てで、周格もままならない様子まで、見ている方はよく理解できます。
ただ、ファンタジーとするならば、ここにやはり洞窟などの装置が何か必要なのではないでしょうか?とはいえ何もないわけではなく、ノッティンガムではありませんが、ロビン・フッドの生まれ故郷のバーンズデイル(ノッティンガムのすぐ南)には、石の塔があり、その礎石を動かすと、父親が刻んだ標語が現れるのです!
主演のラッセル・クロウは、このところかなり肥満気味でしたが、『プロヴァンスの贈り物』や『ワールド・オブ・ライズ』はともかくも、『消されたヘッドライン』は地味な映画ながらもなかなかの出来栄えで、この映画もと期待したところ、弓を射る格好とか乗馬姿などなかなか精悍で見直しました。
相手役のケイト・ブランシェットは、『アイム・ノット・ゼア』(ボブ・ディランに扮しました!)とか『ベンジャミン・バトン』以来ですが、男勝りの性格で、ついには鎧兜に身を包んでロビンのもとに馳せ参じる姿はこの女優ならではでしょう!
歴史ファンタジーと豪華配役陣とのとりあわせですから、否が応でも楽しい映画にならざるを得ないところです。
(2)この映画については、2つの点に興味をひかれました。
イ)リチャード獅子心王は、お追従ばかり口にする部下を嫌って、兵隊の間に入り込んで、彼らの本心を聞き出そうとします。
その誘いにうかうかと乗ってしまって本心をぶちまけてしまったロビン・フッドとその仲間は、獅子心王が城攻めをしている最中、首かせ。足かせのさらし刑に処せられてしまいます(幸い、獅子心王が戦死したどさくさにまぎれて、彼らは逃げ出してしまいますが)。
このエピソードは、上司が部下の本心が知りたくて、どんな厳しい意見でもいいから言ってくれと部下に求めるものの、自分を批判する意見を求めているわけでは決してなく、やはり求めているのは支持してくれる部下にすぎない、という職場でよくある光景を髣髴とさせるものでした!
ロ)この映画のラストは、フランス王が兵隊を連れてイングランドに攻め込んでくるのを、ロビン・フッドなどが阻止する場面ですが、さながら第2次世界大戦の連合国軍によるノルマンジー上陸作戦の真逆を見るようでした!
なにしろ、ドーバー海峡に面した切り立った崖下に向かってフランス軍は上陸してくるところ、驚いたことにあの「上陸用舟艇」が何艘も登場するのです。
まさか鋼鉄製ではなく木製ですが、接岸すると船首のところが前に倒れて渡し板となり、そこを通って兵士は敵前上陸するようになっています。
ただ、これをロンメル将軍が迎え撃つのかと思いきや、出迎えるのはフランス王側のスパイであるゴドフリーとその部下。上陸部隊がこれに合流してイングランド軍と激突することになります。
(3)渡まち子氏は、「伝説とフィクション、さらに重厚な史実を上手くブレンドさせた脚本は、娯楽性にあふれていて、手堅い出来栄えだ。何よりハリウッド大作ならではのスター共演で華やかさはバツグン。見る前は、手垢のついたヒーローものを何をいまさら…と思っていたが、見終われば、見事にスコット版ロビン・フッドを楽しめた」として65点をつけています。
★★★☆☆
象のロケット:ロビン・フッド
(1)『ロビン・フッド』というからには、シャーウッドの森の奥に隠れ住んでいながらも、リトル・ジョンなどの仲間らとともに、悪行の限りを尽くす時の権力者を懲らしめるヒーローの物語であり、それをおなじみのラッセル・クロウが演じるものだとばかり思い込んでいました。
ですが、実際には、この映画は、その前史というべきものなのです。
すなわち、第3回目の十字軍遠征の帰途、ロビン・フッド(ラッセル・クロウ)が、瀕死のノッティンガム領主の息子の依頼で、その剣を届けに父親の元に出向いたところ、領主から息子の身代わりになるように求められます。どこと言って行く当てのない身、ロビンはすぐに了承しますが、妻(ケイト・ブランシェット)は、当然のことながら、とてもすぐには受け入れてくれません。
でも、ロビンの誠実さが通じたのか、次第に馬が合ってきます。そして、そうこうするうちに様々な出来事が起こり、ついには、ジョン王の下でフランス王の侵略を阻止してしまうという、とても考えられない活躍をしてしまうのです!
そんなことなら、ジョン王の右腕となってさらなる飛躍がと思われたところ、マグナカルタへの署名をジョン王に強制したというトガで、逆にジョン王に追われる身となってしまうのです。
そのため、シャーウッドの森に仲間たちと逃げ込んで、その後はよく知られた活躍をするという次第。
いってみれば、映画『ゲゲゲの女房』が、これから水木しげるの漫画が大いに売れだす直前で、映画『ノーウェアボーイ』がジョン・レノンらがハンブルグ行きが決まったところでジ・エンドとなってしまうのに似ているかもしれません!
とはいえ、これら2作では、主人公たちはこれ以降世の人に知ってもらうことになるのに対して『ロビン・フッド』は、これからは世の中から隠れることになるという点で、180度違っているとも言えるかもしれません。
でも、世の人がロビン・フッドに喝采を浴びせかけるのは、これからの活躍によってなのですが!
それでも、いくら領主が彼の父親を知っているからと言っても、石工の息子にすぎないロビン・フッドが、直ちに領主の息子の身代わりとなるなんて、それも貴族の集会での演説によって、皆の心を一つにまとめあげてしまうなんて、という気にもなります。ですが、ロビン・フッドにまつわる話は元々全て伝説なのでしょうから、どんなことが起きても不思議ではないのでしょう。すべては歴史ファンタジーであって、むしろ余り本当らしさを追求すべきではないのかもしれません。
ノッティンガムの村の様子などは、『黒く濁る村』で描かれている村と比べたら、はるかにリアルな感じがします。きちんと農作業が映し出され、ジョン王の過酷な税金の取立てで、周格もままならない様子まで、見ている方はよく理解できます。
ただ、ファンタジーとするならば、ここにやはり洞窟などの装置が何か必要なのではないでしょうか?とはいえ何もないわけではなく、ノッティンガムではありませんが、ロビン・フッドの生まれ故郷のバーンズデイル(ノッティンガムのすぐ南)には、石の塔があり、その礎石を動かすと、父親が刻んだ標語が現れるのです!
主演のラッセル・クロウは、このところかなり肥満気味でしたが、『プロヴァンスの贈り物』や『ワールド・オブ・ライズ』はともかくも、『消されたヘッドライン』は地味な映画ながらもなかなかの出来栄えで、この映画もと期待したところ、弓を射る格好とか乗馬姿などなかなか精悍で見直しました。
相手役のケイト・ブランシェットは、『アイム・ノット・ゼア』(ボブ・ディランに扮しました!)とか『ベンジャミン・バトン』以来ですが、男勝りの性格で、ついには鎧兜に身を包んでロビンのもとに馳せ参じる姿はこの女優ならではでしょう!
歴史ファンタジーと豪華配役陣とのとりあわせですから、否が応でも楽しい映画にならざるを得ないところです。
(2)この映画については、2つの点に興味をひかれました。
イ)リチャード獅子心王は、お追従ばかり口にする部下を嫌って、兵隊の間に入り込んで、彼らの本心を聞き出そうとします。
その誘いにうかうかと乗ってしまって本心をぶちまけてしまったロビン・フッドとその仲間は、獅子心王が城攻めをしている最中、首かせ。足かせのさらし刑に処せられてしまいます(幸い、獅子心王が戦死したどさくさにまぎれて、彼らは逃げ出してしまいますが)。
このエピソードは、上司が部下の本心が知りたくて、どんな厳しい意見でもいいから言ってくれと部下に求めるものの、自分を批判する意見を求めているわけでは決してなく、やはり求めているのは支持してくれる部下にすぎない、という職場でよくある光景を髣髴とさせるものでした!
ロ)この映画のラストは、フランス王が兵隊を連れてイングランドに攻め込んでくるのを、ロビン・フッドなどが阻止する場面ですが、さながら第2次世界大戦の連合国軍によるノルマンジー上陸作戦の真逆を見るようでした!
なにしろ、ドーバー海峡に面した切り立った崖下に向かってフランス軍は上陸してくるところ、驚いたことにあの「上陸用舟艇」が何艘も登場するのです。
まさか鋼鉄製ではなく木製ですが、接岸すると船首のところが前に倒れて渡し板となり、そこを通って兵士は敵前上陸するようになっています。
ただ、これをロンメル将軍が迎え撃つのかと思いきや、出迎えるのはフランス王側のスパイであるゴドフリーとその部下。上陸部隊がこれに合流してイングランド軍と激突することになります。
(3)渡まち子氏は、「伝説とフィクション、さらに重厚な史実を上手くブレンドさせた脚本は、娯楽性にあふれていて、手堅い出来栄えだ。何よりハリウッド大作ならではのスター共演で華やかさはバツグン。見る前は、手垢のついたヒーローものを何をいまさら…と思っていたが、見終われば、見事にスコット版ロビン・フッドを楽しめた」として65点をつけています。
★★★☆☆
象のロケット:ロビン・フッド