『キングスマン ゴールデン・サークル』をTOHOシネマズ渋谷で見ました。
(1)『キングスマン』の第1作目がなかなか面白かったので、その続編もということで映画館に行ってきました。
本作(注1)の冒頭では、エグジー(タロン・エガートン)が、ロンドンのサヴィル・ロウの高級テーラー「Kingsman」から出てきて、店の前に置かれたタクシーに乗り込もうとしたところ、男が近づいてきて、「エグジー、乗せてもらえるか?」と言います。
エグジーが、男がキングスマンの元候補生だったチャーリー(エドワード・ホルクロフト)であることに気付いた時は遅く、チャーリーはピストルをエグジーに向けて、「車のドアを開けろ」と命じます。
エグジーは、仕方なくドアを開けて、チャーリーを車の中に入れます。
タクシーは発進しますが、中では2人が戦い、タクシーをチャーリーの仲間の車が追います。
車の中で、エグジーがピストルを撃っても、チャーリーは、特別な鋼鉄製の右腕で弾丸を防ぎます。
エグジーは車の外に投げ出されますが、なんとかバンパーに掴まって、後部のトランクを突き破って車内に入り込みます。
すると、運転手がチャーリーに殺られてしまい、車は石柱に衝突して停まります。
そこに追いかけてきた3台の車が接近してくると、エグジーが運転する車は真横に走り出します。
車の外に出ていたチャーリーは、仲間に「始末しろ」と命じます。
仲間は、エグジーが乗る車めがけて機関銃を放ちます。
エグジーは、車内から、本部にいるマーリン(マーク・ストロング)に応援を求めますが、「南へ進め」と命じます。
車はハイドパークに入り込みます。
エグジーがマーリンに攻撃許可を求めると、マーリンが「いいぞ」と応じるので、エグジーは車から3発のミサイルを発射して、追跡してきた3台の車を仕留めます。
そして、車は湖の中に入り込み水中を進みます。
エグジーは車をトンネルの中に入れ、自分は下水管に入り、マンホールから地上に出ます。
後に遺された車の中には、チャーリーが残していった右腕が動き出して、座席に仕込まれていたパソコンを操作します。
こんなところが本作の始めの方ですが、さあここから物語はどのように展開するのでしょうか、………?
本作では、第1作で活躍したハリー(コリン・ファレル)も登場しますが、専ら、その後継者のエグジーが、アメリカの諜報組織の手助けを受けながらも、世界最大の麻薬組織ゴールデン・サークルを壊滅すべく、様々の武器を使って戦います。荒唐無稽と言ったらそれまでですが、イギリスの諜報組織「キングスマン」に所属するエグジーとハリーが見せるアクションシーンは、なかなかも見ものです。
(2)同じシリーズですから、前作と本作とが似通ってくるのは当然でしょうが、それにしても本作は前作と随分と似通っている感じがします。
例えば、前作のヴィランは大金持ちのアメリカ人・ヴァレンタイン(サミュエル・L・ジャクソン)でしたが、本作のヴィランも同じようなアメリカ人のポピー(ジュリアン・ムーア)ですし、前作のヴァレンタインは、世界中にSIMカードを大量にバラ撒いて人口を減らそうとしたのに対し、本作のポピーは、自分が大量に供給する麻薬にウィルスを注入し、世界中の麻薬使用者を死の淵まで追い込みます(注2)。
また、本作でも前作同様、ハリーが手にする傘が活躍しますし、記憶障害のハリーに強烈な刺激を与えて記憶を蘇らせようと、彼が暮らしている部屋にいきなり大量の水を注入しますが、これは前作で描かれたキングスマン採用試験における水攻めと類似しています(注3)。
もっと言えば、本作で活躍するのはキングスマンという諜報組織ですが、本作でも前作同様に、諜報活動そのものは余り描かれずに、その結果を踏まえてのゴールデン・サークルとの対決場面の方に重点が置かれています(注4)。
そのためでもあるのでしょう、本作も、前作同様に、セクシーな場面が、そんなに多くはないように思えます(注5)。
さらには、前作で見られたアメリカに対する揶揄の味付け(注6)が、本作でもいろいろと見受けられます。
なにしろ、壊滅してしまったキングスマンが支援を仰いた「ステイツマン」はアメリカの諜報組織で、ボスはシャンパン(ジェフ・ブリッジス)、エージェントとして、カウボーイ・ブーツを履きショットガンのマーリン1895SBLを使うミスター・アメリカンのテキーラ(チャニング・テイタム)とか、レーザー投げ縄「ラッソ」やコルトSAAを操るウイスキー(ペドロ・パスカル)(注7)、それにメカ担当のジンジャー(ハル・ベリー)がいて、いろいろ動き回るのですから(注8)。
逆に、違っている点もいろいろあります。
上に記したことも、別の観点から見れば違っていように見ることも出来ますし(注9)、また例えば、本作にはエルトン・ジョンが登場しますが、ほんの少し顔を見せるのだろうと思っていたら、意外と出番があるので驚きました(注10)。
なお、本作のヴィランのポピーは、麻薬の合法化のためと自分の行為を理屈付けているところ、その議論の妥当性(注11)については別の機会に譲るとして、本作で気になったのは、アルコールの方です。
なにしろ、麻薬には問題があるとして、「ゴールデン・サークル」の壊滅にキングスマンやステイツマンが命をかけて一生懸命となるのに反比例するがごとく、本作の登場人物が、ウイスキーやカクテルなどのアルコール類を、一時のタバコのように、無闇矢鱈と口にするのです。
でも、今月の12日に『東洋経済Online』に掲載されたこの記事によれば、「英ケンブリッジ大学の研究チームが、アルコールの摂取がDNAを損傷して、がんのリスクを高めると発表した」とのこと(注12)。
また、同記事によれば、英国のがん研究所は、「(がんになる)リスクは、ワインやビール、蒸留酒などアルコールの種類とは無関係で、飲む量についても「がんに関しては安全な飲酒量などない」と断言している」そうです。
こうした研究については、タバコについて、ガンと喫煙との間に疫学上の関係性があるのかないのか長い間論争が続けられていることからもわかるように(注13)、簡単に評価できるものではないのかもしれません。
ですが、本作のように、実にあっけらかんと飲酒場面が様々に描き出されているのを見ると、スパイ物に硬いことは言いっこなしながらも、少々行き過ぎなのではと思えてしまったところです。
(3)渡まち子氏は、「型破りでハチャメチャな中に、愛する場所から遠く離れた人々のノスタルジーを織り込んだ点がニクい。なかなかスミに置けない続編だ」として70点を付けています。
渡辺祥子氏は、「英米の豪華スターが揃って真摯に取り組むお遊び芝居には、新春顔見世興行を思わせる華がある」として★3つ(「見応えあり」)を付けています。
森直人氏は、「もともと冷戦時代の東西対立を背景にしたジャンルであるスパイ映画を、現代の世界像に置き換えたパロディー的な構造が持ち味。今回は悪ノリが暴走し、もはや怪作の領域である」と述べています。
毎日新聞の山口久美子氏は、「今回もストーリーはわかりやすく、派手なアクションが盛りだくさん。でも2時間20分ともなると、それにも疲れてくる。今回の見どころといえる英国文化を重んじるキングスマンとコッテコテのアメリカ人とのすれ違いも、小ばかにしているようであまり笑えない」と述べています。
(注1)監督は、『キングスマン』や『キック・アス』などのマシュー・ヴォーン。
脚本は、ジェーン・ゴールドマンとマシュー・ヴォーン。
出演者の内、コリン・ファースは『ベストセラー 編集者パーキンズに捧ぐ』、ジュリアン・ムーアは『マギーズ・プラン―幸せのあとしまつ―』、タロン・エガートンとマーク・ストロングとソフィー・クックソンは『キングスマン』、ハル・ベリーは『ザ・コール 緊急通報指令室』、チャニング・テイタムは『ヘイル、シーザー!』、ジェフ・ブリッジスは『トゥルー・グリット』、マイケル・ガンボンは『カルテット! 人生のオペラハウス』で、それぞれ最近見ました。
(注2)ポピーの目的は、自分の取り扱っている麻薬の合法化で、それが認められれば解毒剤を供給すると、アメリカ大統領を脅迫します。
前作のヴァレンタインも、人口の急激な増加によって地球の環境が破壊されており、地球を救うためには人間の数を減らさなくてはならないと考え、世界中にSIMカードを大量にバラ撒きました。
2人のヴィランが、悪事の理由にもっともらしいことを掲げるのは、マシュー・ヴォーン監督によれば、「悪役にもしっかりと理由付けをする必要があるし、僕はそこに人々が考えさせられる問題を作りたいんだ。ヴァレンタインにしたってポピーにしたって、その解決策はとても良いものではないと思うけれど、人々がディスカッションしたり、議論したり、考えられるものを与えたかった」から、ということによるようです(この記事)。
(注3)前作の水攻めテストでは全員が失格と判定されますが、本作の水攻めでも、ハリーの記憶は蘇りませんでした。
(注4)なにしろ、前作でも、キングスマンのリーダーのアーサー(マイケル・ケイン)は、ヴァレンタインに操作されているとしてエグジーに殺られてしまいますが、本作の場合も、敵の組織ゴールデ・サークルが放つミサイルによって、リーダーのアーサー(マイケル・ガンボン)らは簡単に殺られてしまうのですから、組織的な行動をなかなか取ることが出来ません。
(注5)尤も、エグジーは、ポピーの手下のチャーリーの恋人クララ(ポピー・デレビンニュ)の体内に追跡装置を注入するシーンがありますが。そのために、エグジーはクララとベッドインするのですが、愛する王女ティルデ(ハンナ・アルストロム)の許可を得られずに、………。
(注6)『キングスマン』を巡る拙ブログのエントリの(2)において、「イギリスのキングスマンは、教官のマーリンが「チームワークが大切」とは言いながらも、あくまでも個人個人で敵に向かうのに対して、敵のアメリカ人大富豪・ヴァレンタインは数量で立ち向かってくるように見える」などと申し上げました。
なお、本作の劇場用パンフレット掲載の町山智浩氏のエッセイ「英国紳士とカウボーイ、イギリスとアメリカの間に育ったマシュー・ヴォーン」が参考になるでしょう(町山氏の指摘によれば、マシュー・ヴォーン監督は「イギリス人の労働者階級の母と、イギリスを訪れたアメリカ人俳優ロバート・ヴォーンの間に生まれた婚外子」だったとのこと←同氏は、さらに「生物学的な父はヴォーンではなく、英国貴族だった」と述べています←Wikipediaを参照)。
(注7)ここらあたりの銃については、こちらの記事が参考になります。
(注8)尤も、テキーラは、登場するだけで余り活躍はせず、やや肩透かしの感じですが。
(注9)例えば、前作のヴィランのヴァレンタインは男ですが、本作のヴィランのポピーは女ですし、またポピーは、本拠地にしているカンボジアの「ポピーランド」の外に出られないのに対し、ヴァレンタインはアメリカのみならず、アルゼンチンの山小屋などに基地を持っていて、あちこちに出没します。
ただ、アルゼンチンの山小屋は、本作におけるイタリアの秘密工場に類似しているようにも思われます。
(注10)マシュー・ヴォーン監督は、「実は前作の時もオファーをしていたんだが、実現しなくて。続編では映画をパワーアップさせるため、ぜひ彼に出てもらい、アクションシーンをしてほしかった」と語とか立っています(この記事)。
(注11)上記「注6」で触れた町山氏のエッセイでは、「この話はドラッグを肯定しているのか否定しているのか、考えれば考えるほど混乱する」として、「現在、欧米ではドラッグの供給源を取り締まるために、個人使用の非犯罪化が進んでいる」、「それを反映して、(本作の)ドラッグ使用者は、みんないい人ばかりだ」などと述べています。
でも、麻薬取り締まりの厳しい日本の現状からしたら、そんな議論は机上の空論なのかもしれません。
(注12)記事によれば、「英ケンブリッジ大学のケタン・パテル教授率いるチームが、英MRC分子生物学研究所で行った研究について、科学誌『ネイチャー』に発表した」もののようです。
(注13)例えば、JTによるこの記事。
★★★☆☆☆
象のロケット:キングスマン: ゴールデン・サークル
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(1)『キングスマン』の第1作目がなかなか面白かったので、その続編もということで映画館に行ってきました。
本作(注1)の冒頭では、エグジー(タロン・エガートン)が、ロンドンのサヴィル・ロウの高級テーラー「Kingsman」から出てきて、店の前に置かれたタクシーに乗り込もうとしたところ、男が近づいてきて、「エグジー、乗せてもらえるか?」と言います。
エグジーが、男がキングスマンの元候補生だったチャーリー(エドワード・ホルクロフト)であることに気付いた時は遅く、チャーリーはピストルをエグジーに向けて、「車のドアを開けろ」と命じます。
エグジーは、仕方なくドアを開けて、チャーリーを車の中に入れます。
タクシーは発進しますが、中では2人が戦い、タクシーをチャーリーの仲間の車が追います。
車の中で、エグジーがピストルを撃っても、チャーリーは、特別な鋼鉄製の右腕で弾丸を防ぎます。
エグジーは車の外に投げ出されますが、なんとかバンパーに掴まって、後部のトランクを突き破って車内に入り込みます。
すると、運転手がチャーリーに殺られてしまい、車は石柱に衝突して停まります。
そこに追いかけてきた3台の車が接近してくると、エグジーが運転する車は真横に走り出します。
車の外に出ていたチャーリーは、仲間に「始末しろ」と命じます。
仲間は、エグジーが乗る車めがけて機関銃を放ちます。
エグジーは、車内から、本部にいるマーリン(マーク・ストロング)に応援を求めますが、「南へ進め」と命じます。
車はハイドパークに入り込みます。
エグジーがマーリンに攻撃許可を求めると、マーリンが「いいぞ」と応じるので、エグジーは車から3発のミサイルを発射して、追跡してきた3台の車を仕留めます。
そして、車は湖の中に入り込み水中を進みます。
エグジーは車をトンネルの中に入れ、自分は下水管に入り、マンホールから地上に出ます。
後に遺された車の中には、チャーリーが残していった右腕が動き出して、座席に仕込まれていたパソコンを操作します。
こんなところが本作の始めの方ですが、さあここから物語はどのように展開するのでしょうか、………?
本作では、第1作で活躍したハリー(コリン・ファレル)も登場しますが、専ら、その後継者のエグジーが、アメリカの諜報組織の手助けを受けながらも、世界最大の麻薬組織ゴールデン・サークルを壊滅すべく、様々の武器を使って戦います。荒唐無稽と言ったらそれまでですが、イギリスの諜報組織「キングスマン」に所属するエグジーとハリーが見せるアクションシーンは、なかなかも見ものです。
(2)同じシリーズですから、前作と本作とが似通ってくるのは当然でしょうが、それにしても本作は前作と随分と似通っている感じがします。
例えば、前作のヴィランは大金持ちのアメリカ人・ヴァレンタイン(サミュエル・L・ジャクソン)でしたが、本作のヴィランも同じようなアメリカ人のポピー(ジュリアン・ムーア)ですし、前作のヴァレンタインは、世界中にSIMカードを大量にバラ撒いて人口を減らそうとしたのに対し、本作のポピーは、自分が大量に供給する麻薬にウィルスを注入し、世界中の麻薬使用者を死の淵まで追い込みます(注2)。
また、本作でも前作同様、ハリーが手にする傘が活躍しますし、記憶障害のハリーに強烈な刺激を与えて記憶を蘇らせようと、彼が暮らしている部屋にいきなり大量の水を注入しますが、これは前作で描かれたキングスマン採用試験における水攻めと類似しています(注3)。
もっと言えば、本作で活躍するのはキングスマンという諜報組織ですが、本作でも前作同様に、諜報活動そのものは余り描かれずに、その結果を踏まえてのゴールデン・サークルとの対決場面の方に重点が置かれています(注4)。
そのためでもあるのでしょう、本作も、前作同様に、セクシーな場面が、そんなに多くはないように思えます(注5)。
さらには、前作で見られたアメリカに対する揶揄の味付け(注6)が、本作でもいろいろと見受けられます。
なにしろ、壊滅してしまったキングスマンが支援を仰いた「ステイツマン」はアメリカの諜報組織で、ボスはシャンパン(ジェフ・ブリッジス)、エージェントとして、カウボーイ・ブーツを履きショットガンのマーリン1895SBLを使うミスター・アメリカンのテキーラ(チャニング・テイタム)とか、レーザー投げ縄「ラッソ」やコルトSAAを操るウイスキー(ペドロ・パスカル)(注7)、それにメカ担当のジンジャー(ハル・ベリー)がいて、いろいろ動き回るのですから(注8)。
逆に、違っている点もいろいろあります。
上に記したことも、別の観点から見れば違っていように見ることも出来ますし(注9)、また例えば、本作にはエルトン・ジョンが登場しますが、ほんの少し顔を見せるのだろうと思っていたら、意外と出番があるので驚きました(注10)。
なお、本作のヴィランのポピーは、麻薬の合法化のためと自分の行為を理屈付けているところ、その議論の妥当性(注11)については別の機会に譲るとして、本作で気になったのは、アルコールの方です。
なにしろ、麻薬には問題があるとして、「ゴールデン・サークル」の壊滅にキングスマンやステイツマンが命をかけて一生懸命となるのに反比例するがごとく、本作の登場人物が、ウイスキーやカクテルなどのアルコール類を、一時のタバコのように、無闇矢鱈と口にするのです。
でも、今月の12日に『東洋経済Online』に掲載されたこの記事によれば、「英ケンブリッジ大学の研究チームが、アルコールの摂取がDNAを損傷して、がんのリスクを高めると発表した」とのこと(注12)。
また、同記事によれば、英国のがん研究所は、「(がんになる)リスクは、ワインやビール、蒸留酒などアルコールの種類とは無関係で、飲む量についても「がんに関しては安全な飲酒量などない」と断言している」そうです。
こうした研究については、タバコについて、ガンと喫煙との間に疫学上の関係性があるのかないのか長い間論争が続けられていることからもわかるように(注13)、簡単に評価できるものではないのかもしれません。
ですが、本作のように、実にあっけらかんと飲酒場面が様々に描き出されているのを見ると、スパイ物に硬いことは言いっこなしながらも、少々行き過ぎなのではと思えてしまったところです。
(3)渡まち子氏は、「型破りでハチャメチャな中に、愛する場所から遠く離れた人々のノスタルジーを織り込んだ点がニクい。なかなかスミに置けない続編だ」として70点を付けています。
渡辺祥子氏は、「英米の豪華スターが揃って真摯に取り組むお遊び芝居には、新春顔見世興行を思わせる華がある」として★3つ(「見応えあり」)を付けています。
森直人氏は、「もともと冷戦時代の東西対立を背景にしたジャンルであるスパイ映画を、現代の世界像に置き換えたパロディー的な構造が持ち味。今回は悪ノリが暴走し、もはや怪作の領域である」と述べています。
毎日新聞の山口久美子氏は、「今回もストーリーはわかりやすく、派手なアクションが盛りだくさん。でも2時間20分ともなると、それにも疲れてくる。今回の見どころといえる英国文化を重んじるキングスマンとコッテコテのアメリカ人とのすれ違いも、小ばかにしているようであまり笑えない」と述べています。
(注1)監督は、『キングスマン』や『キック・アス』などのマシュー・ヴォーン。
脚本は、ジェーン・ゴールドマンとマシュー・ヴォーン。
出演者の内、コリン・ファースは『ベストセラー 編集者パーキンズに捧ぐ』、ジュリアン・ムーアは『マギーズ・プラン―幸せのあとしまつ―』、タロン・エガートンとマーク・ストロングとソフィー・クックソンは『キングスマン』、ハル・ベリーは『ザ・コール 緊急通報指令室』、チャニング・テイタムは『ヘイル、シーザー!』、ジェフ・ブリッジスは『トゥルー・グリット』、マイケル・ガンボンは『カルテット! 人生のオペラハウス』で、それぞれ最近見ました。
(注2)ポピーの目的は、自分の取り扱っている麻薬の合法化で、それが認められれば解毒剤を供給すると、アメリカ大統領を脅迫します。
前作のヴァレンタインも、人口の急激な増加によって地球の環境が破壊されており、地球を救うためには人間の数を減らさなくてはならないと考え、世界中にSIMカードを大量にバラ撒きました。
2人のヴィランが、悪事の理由にもっともらしいことを掲げるのは、マシュー・ヴォーン監督によれば、「悪役にもしっかりと理由付けをする必要があるし、僕はそこに人々が考えさせられる問題を作りたいんだ。ヴァレンタインにしたってポピーにしたって、その解決策はとても良いものではないと思うけれど、人々がディスカッションしたり、議論したり、考えられるものを与えたかった」から、ということによるようです(この記事)。
(注3)前作の水攻めテストでは全員が失格と判定されますが、本作の水攻めでも、ハリーの記憶は蘇りませんでした。
(注4)なにしろ、前作でも、キングスマンのリーダーのアーサー(マイケル・ケイン)は、ヴァレンタインに操作されているとしてエグジーに殺られてしまいますが、本作の場合も、敵の組織ゴールデ・サークルが放つミサイルによって、リーダーのアーサー(マイケル・ガンボン)らは簡単に殺られてしまうのですから、組織的な行動をなかなか取ることが出来ません。
(注5)尤も、エグジーは、ポピーの手下のチャーリーの恋人クララ(ポピー・デレビンニュ)の体内に追跡装置を注入するシーンがありますが。そのために、エグジーはクララとベッドインするのですが、愛する王女ティルデ(ハンナ・アルストロム)の許可を得られずに、………。
(注6)『キングスマン』を巡る拙ブログのエントリの(2)において、「イギリスのキングスマンは、教官のマーリンが「チームワークが大切」とは言いながらも、あくまでも個人個人で敵に向かうのに対して、敵のアメリカ人大富豪・ヴァレンタインは数量で立ち向かってくるように見える」などと申し上げました。
なお、本作の劇場用パンフレット掲載の町山智浩氏のエッセイ「英国紳士とカウボーイ、イギリスとアメリカの間に育ったマシュー・ヴォーン」が参考になるでしょう(町山氏の指摘によれば、マシュー・ヴォーン監督は「イギリス人の労働者階級の母と、イギリスを訪れたアメリカ人俳優ロバート・ヴォーンの間に生まれた婚外子」だったとのこと←同氏は、さらに「生物学的な父はヴォーンではなく、英国貴族だった」と述べています←Wikipediaを参照)。
(注7)ここらあたりの銃については、こちらの記事が参考になります。
(注8)尤も、テキーラは、登場するだけで余り活躍はせず、やや肩透かしの感じですが。
(注9)例えば、前作のヴィランのヴァレンタインは男ですが、本作のヴィランのポピーは女ですし、またポピーは、本拠地にしているカンボジアの「ポピーランド」の外に出られないのに対し、ヴァレンタインはアメリカのみならず、アルゼンチンの山小屋などに基地を持っていて、あちこちに出没します。
ただ、アルゼンチンの山小屋は、本作におけるイタリアの秘密工場に類似しているようにも思われます。
(注10)マシュー・ヴォーン監督は、「実は前作の時もオファーをしていたんだが、実現しなくて。続編では映画をパワーアップさせるため、ぜひ彼に出てもらい、アクションシーンをしてほしかった」と語とか立っています(この記事)。
(注11)上記「注6」で触れた町山氏のエッセイでは、「この話はドラッグを肯定しているのか否定しているのか、考えれば考えるほど混乱する」として、「現在、欧米ではドラッグの供給源を取り締まるために、個人使用の非犯罪化が進んでいる」、「それを反映して、(本作の)ドラッグ使用者は、みんないい人ばかりだ」などと述べています。
でも、麻薬取り締まりの厳しい日本の現状からしたら、そんな議論は机上の空論なのかもしれません。
(注12)記事によれば、「英ケンブリッジ大学のケタン・パテル教授率いるチームが、英MRC分子生物学研究所で行った研究について、科学誌『ネイチャー』に発表した」もののようです。
(注13)例えば、JTによるこの記事。
★★★☆☆☆
象のロケット:キングスマン: ゴールデン・サークル
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ヴィランについて触れていらっしゃいますが、前作も本作もヴィランが魅力的…というか、強烈な個性を持っていたのが良かったと思います。
そして、彼らに共通していたのは、両者ともインフルエンサーにより世界征服を企んでいた事。これ、今のネット社会を象徴しているようで、非常に興味深かったです。
おっしゃるように、前作のヴァレンタインも本作のポピーも、とても「強烈な個性を持っていた」ように思います。
マシュー・ボーン監督は、第3作目を考えているようですが、それにはどんなヴィランを登場させようとしているのか、今から楽しみです。
今回の物語の中で一番可哀想なのは強要されてゴールデンサークルを埋められて軽い裏切りでもすぐに処刑されてしまうので敵に立ち向かわざるを得ないポピーランドの人達じゃないかと思う。
確かに、ポピーは人間不信を露わにしていましたが、そうした人間に迎え入れられようとして麻薬の合法化を求めるのですから、基本的に矛盾している感じがします。
なお、「軽い裏切りでもすぐに処刑されてしまうので敵に立ち向かわざるを得ない」という点については、戦前の中国軍などにおける「督戦隊」のことを想起します。
「タバコが多いのは、そもそもこの映画が昔のスパイ物のオマージュ、だから」とのご指摘は全くそのとおりだと思います。
でも、たとえそうであっても、現時点で映画を制作するのであれば何かしらの配慮があってもしかるべきではないかな、という気がしたところです。
とはいえ、こうしたエンタメ作品に道徳的配慮をというのは求め過ぎなのでしょう!
I appreciate you for the authentic news you have given me.
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