
『探偵はBARにいる3』を渋谷TOEIで見ました。
(1)このシリーズについては第1作(ヒロインは小雪)及び第2作(ヒロインは尾野真千子)を見ており、第3作目の公開と知り、映画館に行ってきました。
本作(注1)の冒頭では、1台の保冷トラックが、雪原を走っています。
次いで、港の市場の中にある食堂のシーンで、女(麗子:前田敦子)が食事をしています。
さらに、雪原を走る保冷トラックの中。
その前に乗用車が出てきて道を塞いだので、トラックの運転手・椿(坂田聡)は停車し、「何やってんだ」と言いながら外に出ます。
椿の隣りに座っているのは、食堂にいた麗子。
椿は、ピストルを手にしながら、停まっている乗用車に近づき、「おい、降りろ」と言います。
すると、下げられたウィンドウの中から銃が発射され、椿はその場に倒れます。
乗用車の運転手は、車の外に出て、倒れている椿に対して何発も銃を発射し、その後、保冷トラックにやってきて、バックドアをあけ積荷を見ます。
積荷の毛ガニを確認すると、運転手は積荷を自分の乗用車に運びます。
その間、麗子は、保冷トラックの運転室でじっと隠れています。
また場面は変わって、ススキノのクラブの店内。
探偵(大泉洋)が立ち上がって、「お待たせしました」「すべての謎が解けました」「犯人はあなたです」と言いながら、一人の客の男(教頭:正名僕蔵)を指差します。
すると、その男は笑いながら、「面白い冗談だ」「私は教育者だ」と応じます。
これに対し探偵は、「犯人は、被害者の背後から忍び寄って、おっぱいを激しく揉んだ」「犯人は左手で揉んだ」と言います。
教頭は「私は右利きだ」「私じゃない」と抗弁します。
ですが探偵は、「問題は利き腕じゃない」「犯人は、暗闇の中で、右手でケチャップを掴んでしまった」「それで、左手で揉まざるをえないんだ」と詰め寄ります。
乳房を揉まれた女(中国人のヤンヤン:今村美乃)は、「間違いない、この手が揉んだんだ」と教頭の左手をとります。
観念した教頭は「たかがおっぱいじゃないか」と開き直ります。
ですが探偵は、「これは大変なことになる」「誰も中国から炊飯器を買いに来なくなる」と大袈裟に言います。
それを聞いた教頭は慌てて逃げようとしますが、クラブの入口付近で、ちょうどやってきた高田(松田龍平)に足をかけられて転倒してしまいます。
教頭は、なおも「あの巨乳が悪い」などと言い訳をしますが、探偵が「全部込みで20万で手打ちだ、いいね」と告げると、教頭は「うん」とうなずきます。
すると、探偵が「あれはシリコン」と暴露するものですから、教頭は「クソーッ」と悔しがります。
クラブに高田が連れてきた原田(前原滉 )が、依頼案件(失踪した恋人の麗子の捜索)を探偵に持ち込んできて物語が始まりますが、さあ、ここからどのように展開するのでしょうか、………?
本作については、ヒロインの北川景子が久しぶりながらも大層綺麗であり、また、それなりにストーリーが展開しているにしても、前2作で感じたように、松田龍平の存在感がどうも稀薄であったり、殴り合いの乱闘が延々と続いたりするので、やっぱり上映時間(122分)が長く感じられたところです。それに、せっかくリリー・フランキーを登場させるのならば、単に覚醒剤取引に従事するだけのありきたりのヤクザ屋ではない役柄をやってもらった方が、本作にもっとインパクトを与えられるのではないかと思いました。
(本作はサスペンス物であるにもかかわらず、以下においてはネタバレしている箇所がありますので、未見の方はご注意ください)
(2)「探偵はBARにいる」シリーズでは、登場するヒロインが、皆大きな役割を持っています。
ただ、第1作目の小雪が扮する沙織にしても、第2作目の尾野真千子が演じる河島弓子にしても、前者はススキノの高級クラブのママであり、後者はヴァイオリニストという具合に、その仕事ぶりなどを描くのにそれほど困難はないでしょう。
ですが、本作で北川景子が演るマリは、元は風俗嬢で、現在はいかがわしいモデル派遣事務所のオーナーという複雑な役柄のせいか、あまりその実像がはっきりとしません。

それに、マリは、探偵が彼女のハンドバッグの中身を調べてみると、処方箋とモルヒネの錠剤を所持していることがわかり、なにか重大な疾病を抱えているようです。でも、本作を見ている限りでは、とてもそんな病を抱え込んでいるようには見えませんでした。
それで、マリについては、本作のラストにかけていろいろな秘密が解き明かされて、ある意味で感動的ですらあるものの、他方で、探偵がバーで呟くように(注2)、なんだか胡散臭さも感じてしまうところです。
それに、マリの背後にいる北城ですが、リリー・フランキーが演じる役柄にしては平凡な感じがしてしまいます。
公式サイトの「CAST」で北城は、「表向きは慈善活動に積極的な人道派だが、実は異常なまでのサディスト」「あらゆる悪事に手を染めている」と紹介されていますが、せいぜいタラバガニの足を手下の口に押し込んだり、マリに手錠をかけたり、探偵に対しロシアンルーレットまがいのことをするくらいに過ぎません。

演技力抜群のリリー・フランキーなら、もっと目を瞠るような悪事を犯しても様になるように思えます。
なお、探偵は、前2作においてと同様に、本作でも、極寒の中でひどい目に遭わされます(注3)。ただ、手を下したのが探偵と誼を通じている相川(松重豊)だけに、何かしら愛情も感じられるところです。
また、高田は、北城の用心棒の波留(志尊淳)との2度目の対決に臨むにあたり、チョコチョコッと強めの練習をするだけながらも、なんとか勝ちを収めてしまうというのは、少々お手軽の感があります(注4)。
まあ、それでも、探偵と高田が、例のオンボロ車に乗ったりして、なんとか事件の解決に向かっていくというストーリーは、これまでの2作ですでにお馴染みながらも、北海道の大自然やススキノの繁華街などを背景に映し出されると、やっぱり見入ってしまうのも事実です。

(3)渡まち子氏は、「冬の北海道、猥雑なススキノにこだわり、日ハムの栗山監督まで登場するこの第3弾、4年ぶりだが、安定の娯楽作だった。探偵の少し寂しげな背中が、いつもながら愛おしい」として65点を付けています。
毎日新聞の高橋諭治氏は、「安定感抜群の娯楽性を肯定しつつ、あえて注文を付けるならば、想定以上の“驚き”が見当たらないことだろう。マンネリに陥る前に、次回作では思いきった冒険を期待したい」と述べています。
(注1)監督は、『疾風ロンド』の吉田照幸。
脚本は、『ミックス。』の古沢良太。
原作は東直己著『ススキノ探偵』(ハヤカワ文庫JA)。
なお、出演者の内、大泉洋は『アイアムアヒーロー』、松田龍平と前田敦子は『散歩する侵略者』、北川景子は『の・ようなもの のようなもの』、志尊淳は『帝一の國』、鈴木砂羽は『土竜の唄 香港狂騒曲』、リリー・フランキーは『奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール』、田口トモロヲは『TOO YOUNG TO DIE! 若くして死ぬ』、安藤玉恵は『彼女の人生は間違いじゃない』、松重豊は『アウトレイジ 最終章』で、それぞれ最近見ました。
(注2)探偵は、いつものバーで高田を横において、「あの手の女の言うことは信用できない」「病気というのも嘘じゃないか」と独り呟きます。
なお、探偵は、「刑期を終えたマリが姿を現すような気がする」などと呟きますが、計画的に2名の殺人を犯したマリが、死刑あるいは無期懲役を免れてシャバに姿を表すようにも思えないところです。
(注3)探偵は、第1作目では雪の中に埋められましたし、第2作目では、まだ雪のない大倉山シャンツェのスタートゲートのところに縛られて立たされました。本作での探偵は、冬の荒海を走る漁船の舳先に裸同然で縛り付けられますが、前2作の中間的なところといえるかもしれません。
(注4)高田については、本作の本編では、ニュージーランドに留学すると思わせておいて、エンドロールで、実は江別(札幌とは車で40分位の距離)でニュージーランド出身者の教えを受けていることが明らかになるのですが、ご愛嬌でしょう(以降も続編が作られるということでしょう!)。
★★★☆☆☆
象のロケット:探偵はBARにいる3
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(1)このシリーズについては第1作(ヒロインは小雪)及び第2作(ヒロインは尾野真千子)を見ており、第3作目の公開と知り、映画館に行ってきました。
本作(注1)の冒頭では、1台の保冷トラックが、雪原を走っています。
次いで、港の市場の中にある食堂のシーンで、女(麗子:前田敦子)が食事をしています。
さらに、雪原を走る保冷トラックの中。
その前に乗用車が出てきて道を塞いだので、トラックの運転手・椿(坂田聡)は停車し、「何やってんだ」と言いながら外に出ます。
椿の隣りに座っているのは、食堂にいた麗子。
椿は、ピストルを手にしながら、停まっている乗用車に近づき、「おい、降りろ」と言います。
すると、下げられたウィンドウの中から銃が発射され、椿はその場に倒れます。
乗用車の運転手は、車の外に出て、倒れている椿に対して何発も銃を発射し、その後、保冷トラックにやってきて、バックドアをあけ積荷を見ます。
積荷の毛ガニを確認すると、運転手は積荷を自分の乗用車に運びます。
その間、麗子は、保冷トラックの運転室でじっと隠れています。
また場面は変わって、ススキノのクラブの店内。
探偵(大泉洋)が立ち上がって、「お待たせしました」「すべての謎が解けました」「犯人はあなたです」と言いながら、一人の客の男(教頭:正名僕蔵)を指差します。
すると、その男は笑いながら、「面白い冗談だ」「私は教育者だ」と応じます。
これに対し探偵は、「犯人は、被害者の背後から忍び寄って、おっぱいを激しく揉んだ」「犯人は左手で揉んだ」と言います。
教頭は「私は右利きだ」「私じゃない」と抗弁します。
ですが探偵は、「問題は利き腕じゃない」「犯人は、暗闇の中で、右手でケチャップを掴んでしまった」「それで、左手で揉まざるをえないんだ」と詰め寄ります。
乳房を揉まれた女(中国人のヤンヤン:今村美乃)は、「間違いない、この手が揉んだんだ」と教頭の左手をとります。
観念した教頭は「たかがおっぱいじゃないか」と開き直ります。
ですが探偵は、「これは大変なことになる」「誰も中国から炊飯器を買いに来なくなる」と大袈裟に言います。
それを聞いた教頭は慌てて逃げようとしますが、クラブの入口付近で、ちょうどやってきた高田(松田龍平)に足をかけられて転倒してしまいます。
教頭は、なおも「あの巨乳が悪い」などと言い訳をしますが、探偵が「全部込みで20万で手打ちだ、いいね」と告げると、教頭は「うん」とうなずきます。
すると、探偵が「あれはシリコン」と暴露するものですから、教頭は「クソーッ」と悔しがります。
クラブに高田が連れてきた原田(前原滉 )が、依頼案件(失踪した恋人の麗子の捜索)を探偵に持ち込んできて物語が始まりますが、さあ、ここからどのように展開するのでしょうか、………?
本作については、ヒロインの北川景子が久しぶりながらも大層綺麗であり、また、それなりにストーリーが展開しているにしても、前2作で感じたように、松田龍平の存在感がどうも稀薄であったり、殴り合いの乱闘が延々と続いたりするので、やっぱり上映時間(122分)が長く感じられたところです。それに、せっかくリリー・フランキーを登場させるのならば、単に覚醒剤取引に従事するだけのありきたりのヤクザ屋ではない役柄をやってもらった方が、本作にもっとインパクトを与えられるのではないかと思いました。
(本作はサスペンス物であるにもかかわらず、以下においてはネタバレしている箇所がありますので、未見の方はご注意ください)
(2)「探偵はBARにいる」シリーズでは、登場するヒロインが、皆大きな役割を持っています。
ただ、第1作目の小雪が扮する沙織にしても、第2作目の尾野真千子が演じる河島弓子にしても、前者はススキノの高級クラブのママであり、後者はヴァイオリニストという具合に、その仕事ぶりなどを描くのにそれほど困難はないでしょう。
ですが、本作で北川景子が演るマリは、元は風俗嬢で、現在はいかがわしいモデル派遣事務所のオーナーという複雑な役柄のせいか、あまりその実像がはっきりとしません。

それに、マリは、探偵が彼女のハンドバッグの中身を調べてみると、処方箋とモルヒネの錠剤を所持していることがわかり、なにか重大な疾病を抱えているようです。でも、本作を見ている限りでは、とてもそんな病を抱え込んでいるようには見えませんでした。
それで、マリについては、本作のラストにかけていろいろな秘密が解き明かされて、ある意味で感動的ですらあるものの、他方で、探偵がバーで呟くように(注2)、なんだか胡散臭さも感じてしまうところです。
それに、マリの背後にいる北城ですが、リリー・フランキーが演じる役柄にしては平凡な感じがしてしまいます。
公式サイトの「CAST」で北城は、「表向きは慈善活動に積極的な人道派だが、実は異常なまでのサディスト」「あらゆる悪事に手を染めている」と紹介されていますが、せいぜいタラバガニの足を手下の口に押し込んだり、マリに手錠をかけたり、探偵に対しロシアンルーレットまがいのことをするくらいに過ぎません。

演技力抜群のリリー・フランキーなら、もっと目を瞠るような悪事を犯しても様になるように思えます。
なお、探偵は、前2作においてと同様に、本作でも、極寒の中でひどい目に遭わされます(注3)。ただ、手を下したのが探偵と誼を通じている相川(松重豊)だけに、何かしら愛情も感じられるところです。
また、高田は、北城の用心棒の波留(志尊淳)との2度目の対決に臨むにあたり、チョコチョコッと強めの練習をするだけながらも、なんとか勝ちを収めてしまうというのは、少々お手軽の感があります(注4)。
まあ、それでも、探偵と高田が、例のオンボロ車に乗ったりして、なんとか事件の解決に向かっていくというストーリーは、これまでの2作ですでにお馴染みながらも、北海道の大自然やススキノの繁華街などを背景に映し出されると、やっぱり見入ってしまうのも事実です。

(3)渡まち子氏は、「冬の北海道、猥雑なススキノにこだわり、日ハムの栗山監督まで登場するこの第3弾、4年ぶりだが、安定の娯楽作だった。探偵の少し寂しげな背中が、いつもながら愛おしい」として65点を付けています。
毎日新聞の高橋諭治氏は、「安定感抜群の娯楽性を肯定しつつ、あえて注文を付けるならば、想定以上の“驚き”が見当たらないことだろう。マンネリに陥る前に、次回作では思いきった冒険を期待したい」と述べています。
(注1)監督は、『疾風ロンド』の吉田照幸。
脚本は、『ミックス。』の古沢良太。
原作は東直己著『ススキノ探偵』(ハヤカワ文庫JA)。
なお、出演者の内、大泉洋は『アイアムアヒーロー』、松田龍平と前田敦子は『散歩する侵略者』、北川景子は『の・ようなもの のようなもの』、志尊淳は『帝一の國』、鈴木砂羽は『土竜の唄 香港狂騒曲』、リリー・フランキーは『奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール』、田口トモロヲは『TOO YOUNG TO DIE! 若くして死ぬ』、安藤玉恵は『彼女の人生は間違いじゃない』、松重豊は『アウトレイジ 最終章』で、それぞれ最近見ました。
(注2)探偵は、いつものバーで高田を横において、「あの手の女の言うことは信用できない」「病気というのも嘘じゃないか」と独り呟きます。
なお、探偵は、「刑期を終えたマリが姿を現すような気がする」などと呟きますが、計画的に2名の殺人を犯したマリが、死刑あるいは無期懲役を免れてシャバに姿を表すようにも思えないところです。
(注3)探偵は、第1作目では雪の中に埋められましたし、第2作目では、まだ雪のない大倉山シャンツェのスタートゲートのところに縛られて立たされました。本作での探偵は、冬の荒海を走る漁船の舳先に裸同然で縛り付けられますが、前2作の中間的なところといえるかもしれません。
(注4)高田については、本作の本編では、ニュージーランドに留学すると思わせておいて、エンドロールで、実は江別(札幌とは車で40分位の距離)でニュージーランド出身者の教えを受けていることが明らかになるのですが、ご愛嬌でしょう(以降も続編が作られるということでしょう!)。
★★★☆☆☆
象のロケット:探偵はBARにいる3
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それと、リリー・フランキーはやはり大した役でないのが不満です。ただガチでSが似あう役者を投入したらコメディーのバランスが崩れて案外引いちゃうかもしれないですけどね。
TBある方が簡単でいーなー。
おっしゃるように、本作に「ガチでSが似あう役者を投入したらコメディーのバランスが崩れて案外引いちゃう」かもしれませんね。
それになにより、「TBある方が簡単でいーなー」です!!!
ブログに記事をアップしてTBが送られてくると、たとえこちらのエントリを十分に読んでくれずにTBだけ送られてくるのであっても、やはり反応があったなと嬉しくなってくるものです。
コメントの場合は、何か文章を書き込まなくてはならず、おまけにコメントをしてもお返しのコメントをしてくれる「ふじき78」さんのようなブロガーは数少ないものですから、寂しい限りです。