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リングサイド・ストーリー

2017年11月22日 | 邦画(17年)
 『リングサイド・ストーリー』を新宿武蔵野館で見ました。

(1)予告編を見て面白いと思い、映画館に行きました。

 本作(注1)の冒頭では、力道山vsルーテーズの試合の場面とか力道山が空手チョップをしている姿などを、昔のプロレスの映像を使って映し出します。
 それから、アントニオ猪木とかジャイアント馬場などが登場し、日本プロレスは絶頂期になって、プロレスシーンは実に熱かった、そして今プロレス界は新時代を迎えている、などというナレーションが入ります。

 次いで、プロレスラーのキャラクターがいろいろ動くお弁当が作られている場面となって、タイトルが流れます。

 そして、主人公の江ノ島カナコ佐藤江梨子)が働いている弁当工場の場面。
 カナコは、会社の幹部に呼ばれます。
 カナコが「なんで私なんですか?」と尋ねると、幹部は「どうしても1人減らさないといけないんだ」「他の人は、いろいろと訳があって」と答えます。
 なおもカナコが「私だって困ります」と粘っても、幹部は「あんたは、何をやっても生きていけそうだし」「この際、結婚したら?」「聞いているよ、噂」と言い、「でも、売れないのは無職と同じか」と付け加えます。
 それに対し、カナコは「ヒデオは無職ではありません」と反論します。

 場面は、オーディション会場。
 オーディションを受ける者の中にヒデオ瑛太)が混じっています。
 ヒデオは他の応募者達を見て、「今日は何のオーディションなのかわかっているの?」と批判します。
 その時、カナコから携帯にかかってきますが、ヒデオは「俺、大事なオーディションの最中。そんなの後にしてくれ」と言って、切ってしまいます。
 その時、係員から「1番から10番まで中に入ってください」との声がかかり、ヒデオは慌てて審査員のいる部屋の中に入ります。

 場面は変わって、カナコの母親・恭子余貴美子)が営む美容院。
 カナコが顔を出すと、美容室に来ていた隣の豆腐屋の女将・桃子角替和枝)が「カナコちゃん、久しぶり」と言い、次いで恭子も「久しぶり、元気?」「何かあったの?」と尋ねます。
 カナコは「仕事、切られた」「明日から無職」と答えます。
 それに対し、恭子は「ウチを当てにしないでよ」「年内一杯なんだから」と言います。
 カナコが「寂しくなったね、商店街も」と応じると、恭子は「ヒデオ君、元気?」と尋ねます。
 カナコが「今、オーディション中」「でも、30すぎのおっさんには難しいみたい」と答えると、恭子は「私には若く見えるけど」と言います。それに対して、カナコは「でも、35だよ」と呟きます。

 こんなところが本作の始めの方ですが、さあこれから物語はどのように展開するのでしょうか、………?

 本作は、長年同棲している恋人の生活を支えている主人公の女の物語。女の恋人は俳優志望ながら、オーディションに落ち続ける売れない役者で、文句ばかり言って仕事をしないで家にいるグータラ人間です。主人公は、一生懸命働いて恋人を支えますが、主人公が浮気をしているに違いないと恋人が勘違いするところから様々な騒動が持ち上がるというコメディ仕立てになっています。よくある設定の物語ですが、まずまず笑える作品となっています。

(2)本作は、なんだか、すぐ前に見た『南瓜とマヨネーズ』と似ている設定ですが(注2)、本作の場合、恋人・ヒデオはミュージシャンではなくて俳優。ただ、『南瓜とマヨネーズ』のミュージシャン・セイイチ太賀)と同じように、ヒデオも、アレコレ文句ばかり言っていて仕事をしようとはしないのです。



 いきおい、男を支える主人公の働きぶりに注目が集まるところ、『南瓜とマヨネーズ』では、主人公・ツチダ臼田あさ美)は水商売に入りますが、本作の主人公・カナコはプロレスとか格闘技関係の団体で働くがために(注3)、とんでもない事件が色々起こります。それで、『南瓜とマヨネーズ』がリアルなラブストーリーとなっているのに対し、本作は、まずまず笑えるラブコメディとなっています。

 さらに言えば、本作は、同じ監督が制作した『百円の恋』とも似ている感じです。
 特に、『百円の恋』の主人公・一子安藤サクラ)のグータラな生活ぶりは、本作のヒデオのグータラさを上回るでしょう(注4)。
 ただ両作は、途中からかなり違った方向に向かいます。
 すなわち、『百円の恋』では、一念発起した一子がボクシングジムに通いつめ、それまでの肥満した体を実にスリムなボディに引き締めるだけでなく、鋭いパンチを繰り出せるまでに練習を積み重ね、念願の試合に臨むまでになるのに対し、本作のヒデオは、K-1の社長(峯村リエ)に試合を命じられたことでもあり(注5)、そんなに氣の入った練習はしないのです。



 結果は類似するものになるとはいえ、まるで違った雰囲気を醸し出します。
 こうなってしまうのも、本作がコメディであり、また格闘技自体を描く作品ではないことによるものでしょう。

 加えて言うと、本作は、『ミックス。』の前日譚と言えないこともありません。
 というのも、同作で主人公の多満子新垣結衣)とペアを組むことになる萩原瑛太)は、今は建設工事の現場で働く労働者ながら、元はプロボクサーだったのです。それが、目をやられて引退に追い込まれてしまったという設定になっています。
 そして、ボクシングではサウスポーだったということで、卓球のミックスで有利な左打ちが出来るとされています。
 本作のヒデオは、逆に、小学校の6年間、卓球で左打ちをやってきたために、K-1の練習の際に、左打ちの素早さが注目されて、「短い練習期間だから左フックだけ覚えろ」というアドバイスを受けることになります。
 こんなところから、クマネズミには、本作のヒデオが『ミックス。』の萩原に入れ替わるような印象を受けました。

 それだけでなく、本作では、K-1の武尊とか城戸康裕、プロレスラーの黒潮”イケメン”二郎、村上和成などの現役選手が色々出演しますが、『ミックス。』でも、水谷隼、石川佳純、伊藤美誠といった現役選手が出演しています。

 こうしたところから、このところ続けて見た本作と『南瓜とマヨネーズ』、そして『ミックス。』は、どうも昨年見た『百円の恋』と密接な関係にあるような印象を受けます。
 4本の作品の共通項は、“倹しい恋物語”、あるいは“百円生活(注6)のラブストーリー”といったところでしょうか。

 それはともかく、本作においては、ラスト近くに映し出されるヒデオの入場シーンが、とても素晴らしいと思いました。なにしろ、フラワーカンパニーズの「消えぞこない」の曲(注7)に乗って、試合に出場しないとされていたヒデオが、実に華々しくリングに向かって登場してくるのですから!
 このシーンがあるからこそ、酷く嘘くさかった本作の物語も(注8)、まあ許せるか、という感じになりました。



(注1)監督は、『イン・ザ・ヒーロー』や『百円の恋』の武正晴
 脚本は、横幕智裕と李鳳宇。
 この記事によれば、本作は「半分実話」とのこと。

 なお、出演者の内、最近では、佐藤江梨子は『R100』、瑛太は『ミックス。』、余貴美子は『後妻業の女』、高橋和也は『太陽』、近藤芳正は『紙の月』、田中要次は『お盆の弟』、角替和枝は『くちびるに歌を』で、それぞれ見ました。

 また、本作については、公開できないかもという噂があったようで(この記事)、クマネズミも、あまりPRされていないので情報を持たずじまいとなり、公開終了間際になって、慌てて新宿武蔵野館の夜1度だけの上映回に滑り込んだ次第です。

(注2)両作とも、同棲している男女のうちチ、女が生活を全面的に支えています。
 ただし、『南瓜とマヨネーズ』の場合、原作漫画の第1話によれば、ツチダとセイイチとは同棲して1年半とされていますが、本作のカナコとヒデオの同棲生活は10年も続いているとされています。




(注3)弁当工場を解雇されたカナコを就職させるために、ヒデオが、プロレス団体(「WRESTLE-1」)宛に、プロレスについての薀蓄を披露した手紙を書くのですが、それを読んだその団体の常務(田中要次)が感激して、カナコを事務員として採用することとします。
 ですが、ヒデオが、カナコがレスラーと浮気したと勘違いしてと騒動を引き起こしたために、カナコはそこも辞めざるを得なくなります。ただ、幹部同士でつながりのあったK-1に紹介してもらって、カナコはそこの広報を担当することになります。



(注4)『百円の恋』の一子は、全く何もしないのに対し(一応は、実家に戻ってきた妹の子供の面倒を見ていることになっていますが、一緒にTVゲームをするばかりです)、本作のヒデオは、オーディションに顔を出しているのですから。

(注5)ヒデオが、カナコがK-1の和希武尊)と浮気していると勘違いして、試合に臨む和希に対しキグルミを着たヒデオが殴りかかり、試合をメチャメチャにしてしまいます。怒ったK-1の社長が「負け犬みたいなあんたを見ていると反吐が出る」「あんた、和希と勝負してみる?」と挑発すると、ヒデオは「やってやるよ」と挑発に乗ります。それで、社長は、「今度の大会でエキジビションをやらせる。その代わり、1回保たなかったら、江ノ島さんときっぱりと別れることにしなさい」と宣言します。

(注6)この拙エントリの(2)をご覧ください。

(注7)こちらで視聴できます。

(注8)あのひ弱なヒデオが、いくら猛特訓をするにしても、僅かな期間でK-1のリングに上がるというのは、非常識すぎますから(『ミックス。』における卓球とは訳が違うでしょう)。



★★★☆☆☆



象のロケット:リングサイド・ストーリー


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