映画的・絵画的・音楽的

映画を見た後にネタバレOKで映画を、展覧会を見たら絵画を、など様々のことについて気楽に話しましょう。

劇場版TRICK

2010年06月08日 | 邦画(10年)
 『劇場版TRICK 霊能力者バトルロイヤル』を、渋東シネタワーで見ました。
 時間が空いたので、そのつなぎとして見たにすぎませんが、まずまずの出来栄えのように思います。

(1)ストーリーはいつもと変わりがありません。
 ある日、天才物理学者の上田次郎(阿部寛)の研究室に、一夜村というところから青年・西園寺誠一が訪ねてきます。
 その青年が言うところによれば、村には昔から「契り祭り」という祭りがあって、その中で願掛けが行われ、うまくいけば願った恋が成就するものの、人が死ぬ場合もあると言い伝えられているとのこと。
 彼は、そんな話は迷信だと証明してほしいと、上田に頼みに来たわけです。そこで上田は、山田奈緒子(仲間由紀恵)と一緒に一夜村に行くことになります。
 彼らが宿に着くと、彩乃(浅野ゆう子)という黒尽くめの女性に遭遇します。彼女は、人を呪い殺す霊能力を身につけていて、20年前に呪い殺された我が子と夫の復讐をすると言っています。他方で、呪い殺したとされる松子(手塚理美)も、また霊能者を使って呪い返しで彩乃に対抗しようとします。
 その間に、誠一に関係する女性が、次々と、彩乃が口ずさむ子守唄の歌詞とそっくりの方法で殺されていきます。
 そこで、上田と奈緒子が事件のことを調べることになって、……。

 めでたく事件が解決して、上田と奈緒子が一夜村を後にするラストシーンがありますが、そこで上田は、自分には予知能力があって、今度は“まんねりといわれる場所に導かれるだろう。そこでは……”などと奈緒子に話しかけ、二人の後ろ姿が次第に小さくなってジ・エンドとなります。

(2)アレッ、今度の映画の現場がまさに「万練村」なのでは?
 そうです、上で書きました簡単な粗筋は、5月15日にテレビ朝日で放映されたTVドラマ『トリック 新作スペシャル2』の方なのです!



 なにしろ、上記のストーリーに出てくる「一夜村」を「万練村」に、「契り契りの祭り」を「カミハエーリ選び(霊能力者バトルロイヤル)」に、上田のところに相談に来る青年を「西園寺誠一」から「中森翔平」にという具合に次々に入れ換えていくと、そのまま今回の映画の大体のストーリーと相成ります!
 むろん、大きな事件を引き起こす張本人が、「彩乃(浅野ゆう子)」から「鈴木玲一郎(松平健)」へと変わることで、事件の中身そのものは違ってきますが、この2人はどちらもラストで同じような死に方をしますし、村の青年が思っている女性もどちらの作品でも青年と結ばれることなく死んでしまいます。
 また、最後の方で、山田奈緒子の母親(野際陽子)が登場し、書道家という観点から全体をまとめあげるという構図も類似しているといえるでしょう。

 こんなフザケタことをするのも、下記の前田有一氏が、その映画評で、「どこから見てもいつものTRICKで、劇場版ならではの特徴を感じない。昨日までやっていた連続ドラマの新しい回をみているような気になる」と述べていますが、むしろ、製作者側としては、意図的に「いつものTRICK」を作ろうとしているわけで、そんな点を非難してみても仕方がないのでは、と思ったからです。
 なにしろ、これではマンネリではないか、と非難してみても、設定される場所の名称が「まんねりむら」ではどうしようもありません。ここは、堤幸彦監督に脱帽し、「じゃぐち」を「へびくち」と言ったり、「魔のもの」を「酢の物」と取り違えたりするなどのギャグに笑ったりして、そのマンネリ振りを“いつものように”味わうべきではないでしょうか?

(3)映画評論家の間では評価が分かれるようです。
 前田有一氏は、「本格作品じゃないし、だからどうこうという話でもないのだが、全体的に早熟感というか即興演奏のような印象を受ける点が気になる。久々の劇場版、もう少し練りこんだ話、トリックを見てみたかった」として、30点をつけて、「今週のダメダメ」としています。
 福本次郎氏も、「全編ユル~い展開に、見る者のテンションは下がりっぱなし。ツッコミを入れられることを目的としたとしか思えない瞬間芸のような小ネタからあまりにも幼稚な手品の種まで、脱力感あふれるエピソードの数々は、ストレートに観客の心をくすぐるのではなく、あえて寒さを感じさせるのが狙いなのか」として、同じ30点をつけています。

 ただ、他方で小梶勝男氏は、「これまでのシリーズの集大成でもあるし、単なる繰り返しでもある。本作の場合は、それでいいのだ」として72点をつけていますし、また、渡まち子氏は、評点は45点と低いものの、「わざわざ映画館で見るものか? とも思うが、奈緒子がこよなく愛する時代劇「暴れん坊将軍」の出演が何よりのプレゼントかもしれない」と述べています。


★★★☆☆



象のロケット:劇場版TRICK


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1 コメント

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集大成で単なる繰り返し (KGR)
2010-06-29 11:34:57
他所様の意見、感想は面白いですね。

確かにゆるくて脱力感あふれるエピソードですが、
たまには、ゆるゆるでばかばかしくてもいいじゃないか、と思います。

ただアダモちゃんは正直寒かった。
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