映画的・絵画的・音楽的

映画を見た後にネタバレOKで映画を、展覧会を見たら絵画を、など様々のことについて気楽に話しましょう。

ジャッジ!

2014年01月23日 | 邦画(14年)
 『ジャッジ!』を渋谷シネパレスで見ました。

(1)『ルームメイト』での演技がなかなか良かった北川景子が出演するというので、映画館に行ってきました(注1)。

 本作の冒頭は、「きつねうどんのCM」(注2)の撮影風景が描かれます。キツネの着ぐるみに広告代理店・現通の若手クリエーター太田喜一郎妻夫木聡)が入り、「腰の振りが甘い」などとダメを出されています。
 ただ、そのCMを巡っての会議で、スポンサーの方から、「すごく酷いCMだ。このネコをもっとネコらしくして」と要求されると、ベテランクリエーターの大滝一郎豊川悦司)は「大好評だ。ただ、簡単な直しがあった。明日まで、キツネをネコに直して」と喜一郎に伝えます。
 喜一郎は「そんなムチャな」と抵抗しますが、大滝が「ムチャはチャンスだ」と言って取り合おうとしません。仕方なく喜一郎は、猫の声を自分で入れたりして直しにとりかかります。
 そんなある日、喜一郎は、大滝から「自分の代わりに、サンタモニカ国際広告祭の審査員をやってきて欲しい」と言われ、さらに「(スポンサーの息子が制作した)「ちくわのCM」(注3)が入賞しないとクビだ」とも告げられてしまいます。



 やむなく喜一郎は、同僚の大田ひかり北川景子)(注4)に、同姓のよしみで一緒にサンタモニカに行ってもらいますが、さて広告祭における審査の結果はどうなることでしょうか、………?



 本作は、舞台設定を広告代理店とする着想が斬新で、そのCM作りの一端をかいま見させてくれるので興味深く、更に全体的にコメディとしてなかなかよくできており、笑いの場面がてんこ盛りであって、とても面白いと思いました。この映画を見た友人が言っていたのですが、「昔の三谷幸喜や宮藤官九郎の世界に入り込んだような感じ」となりました!

 主演の妻夫木聡は、このところ様々な役をこなしてきているところ、『清須会議』や本作のようなコメディでもなかなかの演技を披露していますし、ヒロインの北川景子も、『謎解きはディナーのあとで』と同様、持ち味を遺憾なく発揮しているなと思いました。

(2)本作においては、様々の固有名詞が架空のものとなっているにもかかわらず、どうして「トヨタ」は実名なのか(注5)、そしてCMクリエーター・木沢はるか鈴木京香)が所属する白鳳堂が制作した「トヨタ」のCMは、国際広告祭でグランプリを獲得できるほどクオリティが高いものなのか(随分とあからさまな擬人法を使っていて、気持ち悪いだけではないか)(注6)、などなど問題点が思い付きます。

 でも、こうした映画については、あれこれ詮索することなく、また下記の(3)で触れる前田有一氏のように教訓など汲み取る必要もなく、単純にお腹の底から面白がればいいのではと思いました。
 もとより、映画から何かしらの教訓を引き出すことは見る人の自由であり、他人がとやかく言うべき筋合いではないとはいえ、「中学生から見られる社会の仕組みムービー」と述べたり、「トヨエツをはじめとする幾多の悪人?たちが、魅力たっぷりに描かれているのもその主張と合致する。世の中は、善悪だけではない、絶妙なバランスで成り立っているのだと、この映画はその本質を伝えようとする」など前田氏は言うのですが、そんなつまらないことはこうした作品を見ずともわかりきった話なのではないでしょうか?

(3)渡まち子氏は、「思いがけない役で登場する豪華キャストが楽しい、笑いと驚きの娯楽作で、大いに楽しめる快作に仕上がっている」として70点をつけています。
 また、前田有一氏は、「ラブシーンや暴力シーンもなく、子供たちと一緒に楽しむ、ちょいと辛口のお仕事ムービーとして見事な出来映え。今週のイチオシとして推薦する」として85点をつけています。

 ですが、柳下毅一郎氏は、「ついに日本にもそれ(トム・クルーズ主演の『ザ・エージェント』という映画)に匹敵するお手盛り映画が誕生した!正義と真実の使徒、裏工作と嘘が嫌いな電通マン!」と批判します。
 でも、本作は、CMディレクターの永井聡氏が監督、CMプランナーの澤本嘉光氏が脚本でCM界を取り上げている作品なのですから、作品自体がCM界のCMになっていて「お手盛り映画」となってしまうのも(注7)、当然といえば当然のことなのではないでしょうか(注8)!



(注1)予告編は、このサイトで見ることが出来ます

(注2)このCMは、このサイトで見ることが出来ます。

(注3)このCMは、このサイトで見ることが出来ます。

(注4)大田ひかりという名前をつけたことについて、爆笑問題の太田光の妻の太田光代氏が不満を漏らしているようです(この記事を参照)。

(注5)そういえば、「きつねうどんCM」の「エースコック」も実名でした(このサイトの記事を参照)!
 ただ、「ちくわ堂」の方は架空で、「鈴廣かまぼこ」が特別に作ったもののようです(このサイトを参照)。

(注6)と思って見ていたところ、本作で映し出されるトヨタのCMは実際のCM(博報堂制作による「HUMANITY」)であり、なおかつ賞(2006年の第53回カンヌ国際広告祭フィルム部門で銀賞)も獲っているとのことで、驚きました(ラストのクレジットに「劇中CM協力」として記載されています。なお、このサイトの説明によれば、同CMでは、「車のシート、シートベルト、エアバックなど、さまざまなパーツを人間に置き換えることで、細部までいきとどいたサービスやホスピタリティをユーモアたっぷりに表現しました」とのこと)!

(注7)主演の妻夫木聡は、劇場用パンフレットに掲載されたインタビューにおいて、窓際族のリリー・フランキー)から教えてもらった「カマキリのポーズ」を演じた際に、永井監督から「もうちょっとちゃんとカマキリをやってください」と言われたと語っていますが、これって本作の冒頭で喜一郎が「腰の振りが甘い」と言われたこととダブってしまいます。



 また、ヒロインの北川景子も、劇場用パンフレットに掲載されたインタビューにおいて、「映画というよりも広告の現場に近い感じ」とか「広告の素材としての役割を任されているのであれば、それは大きな役割で後裔なことですし頑張ろうと思いました」などと述べています。

(注8)このエントリ自体も、本作のCMとなってしまうことでしょう!




★★★★☆☆



象のロケット:ジャッジ!


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6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
こんにちは。 (みぃみ)
2014-01-24 10:05:33
なるほど~。
はるかとはるかの会社にはそういう関係が、そしてトヨタのCMは…なのですね。
んふ♪大滝ちっくな事してるんですね~(喜)。

とはいえ、知らずに考えたトヨタCMの私的解釈が
正解してたのは嬉しかったです。
車って便利且つ命も預けるものなので、
メーカーさんにはそういう気持ちでずっといて欲しい☆です。
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怪作 (iina)
2014-01-24 10:11:54
快作というより怪作です。
多くが駄作と思うようなCMが優勝するという点に比重を置くので、このようなストーリーになるのでしょうね。
駄作と思わせたCMが2006年の某部門で銀賞を取っているのですから。

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Unknown (クマネズミ)
2014-01-24 22:28:59
「みぃみ」さん、TB&コメントをありがとうございます。
「みぃみ」さんは、ご自身のブログで「自動車で、実際に動いてるのは機械や金属なるも、そこには、「作った人の想い」があるんだ」と述べておられますが、クマネズミには気持ち悪く思えたCMも、そのように考えれば納得出来ないこともありませんね。
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Unknown (クマネズミ)
2014-01-24 22:29:38
「iina」さん、コメントをありがとうございます。
確かに、「駄作」と思われるCMでも、それを提供する企業の力が強大だと高い評価を受けてしまうように思えるところ、それをあからさまに言ってしまうと、身も蓋もないことになってしまいますが。
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楽しいものは良いですね (瀬織津姫)
2014-01-29 13:26:11
 あまり難しく考えないで、楽しく見れる映画は、それで価値があると思います。クマネズミさんは、そうした感覚だと理解します。
 世の中には、良い宣伝でもっとよく知って貰いたいことがありそうにも思われました。
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Unknown (クマネズミ)
2014-01-29 20:26:24
「瀬織津姫」さん、コメントをありがとうございます。
本作は至極面白いのですから、『永遠の0』とか『ゼロ・グラビティ』のように、もっと観客が伸びてもいいように思えるのですが、なかなかそうも行かないようですね。
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