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謎解きはディナーのあとで

2013年08月12日 | 邦画(13年)
 『謎解きはディナーのあとで』をTOHOシネマズ渋谷で見ました。

(1)TVドラマとして放映されていた時に毎週楽しんで見ていたものですから、映画館は女子高生などで一杯でしたが、見に行ってきました。

 本作は、大財閥のお嬢様で警察署の刑事でもある宝生麗子北川景子)と、彼女の執事として仕える影山櫻井翔)が、洋上を航行する豪華客船「プリンセス・レイコ号」にヘリコプターで追いつくというシーンから、物語は始まります。
 その船は宝生家の所有になるもので、二人は、船長・海原鹿賀丈史)や客室支配人・藤堂中村雅俊)らによって出迎えられます。



 話によれば、今回は船の最後の航海とのことで、麗子も18年ぶりで乗船します。
 また、船に設けられている舞台でジャズを歌っている女性・凛子桜庭ななみ)は、藤堂の娘だとされています。

 そんな船に、麗子の上司である風祭警部(椎名桔平)が、国立市からシンガポール市に寄贈される「Kライオン」を警備するために乗り込んでいることがわかったところで、事件が発生します。
 シンガポールの資産家レモンド・ヨーが、麗子達の見ている前で、何者かに殺されて海に投げ落とされたのです。不思議なことに、死体には、救命胴衣が着せられています。
 これを契機に船内では様々の事件が起きてしまいます。
 サア、本件を影山・麗子のコンビは解決できるのでしょうか、……?

 本作は、超豪華客船が舞台だったり、シンガポールのマーライオンやラッフルズ・ホテルなどが映し出されたりと、様々な観客サービスが凝らされて、さらにまたいつもの俳優に加えて鹿賀丈史とか中村雅俊、宮沢りえらも加わり豪華メンバーになっているものの、TVドラマの時のような歯切れの良さがなくなり、かなり間延びしている印象を受けました(注1)。
 でも、様々な人物が入り乱れ事件が起こり、いろいろな仕掛けが施されたコメディ作品なのですから、長くなるのも我慢しなくてはなりますまい。

 執事・影山役の櫻井翔は、本作ではTV版と違い、走ったり、麗子に抱きついたり、プールで浮かんだりするなど大活躍するところ、そつなくそれらをこなしています。



 ただ、宝生麗子役の北川景子の印象が、思ったより薄かったかなと思いました。これは、登場する場面は少ないものの、宮沢りえの大きな存在感によって影が霞んでしまったためではとも思えました(注2)。




(2)本作については、ただでさえ風祭警部の「ハイハイハイ」があるのに、さらに、高円寺兄弟(竹中直人大倉孝二)のシッチャカメッチャカや、大企業の御曹司(生瀬勝久)の大仰な身振りなどが加わって、うるささが倍増してしまっていることなど、いろいろツッコミを入れることが出来るでしょう(注3)。
 ただ、全体がコメディ作品と見なせますから、ゆったりとした気持ちで見ればいいのであり、一々そんなことを言い出してみても始まりません。

 クマネズミは、実を言えば、どんなシーンでお嬢様の麗子が「クビよ!」と執事の影山に叫ぶのかという点(注4)を一番期待して見に行きました。
 本作では、離れ島に流れ着いてディナーをとった後に、影山が、自分の推理をしゃべり出す前に、「失礼ながら、お嬢様の脳みそは難破船ですか?座礁してしまい働かなくなった脳みその鈍さに、SOS が必要でございます」などと言うと、麗子が5回も「クビよ!」と叫びます。
 この「クビよ!」のシーンは、本作では、ラストのシーンをも含めて2度も見られたのですから、そして本作はTV版のおよそ2倍の長さですから、それ以上は望む方が無理というものでしょう!

 ただ、この作品をコメディとすると、極悪人でもない犯人が殺人を2度も犯してしまう(注5)のはどうかな、という気がします(注6)。ですが、本作は、コメディ作品とはいえ、一応サスペンス映画でもあるのですから、それもまた致し方ないのでしょう。

(3)渡まち子氏は、「毒舌執事と令嬢刑事コンビが殺人事件に挑む「謎解きはディナーのあとで」。初の劇場版ではアクティブな影山が新鮮だ」として55点を付けています。




(注1)途中の無人島で、執事の影山が一気に事件の謎を喋ってしまうのであれば、それまでの展開をもっと切り詰めてもいいのかもしれない、などと思いました。

(注2)例えば、北川景子と宮沢りえが、船内カジノで対決して、持ち前のお嬢様気質を発揮して大勝するというのはどうでしょうか(船内に影山が持ち込んだお金は10万ドルぐらいとし、それを北川景子が50万ドルとし、さらに影山が100万ドルにするというのでは)?

(注3)そもそも、犯人はレイモンド・ヨーを殺してしまう必要があったのでしょうか?例えば、レイモンド・ヨーとカジノで対決して、彼から大金を巻き上げるなどといった手段をとったらどうでしょうか?

(注4)丁度、TVドラマ「ガリレオ」シリーズで、天才物理学者・湯川学が、あたりかまわず数式を書き散らかすシーンに対応しているのでしょうか(劇場版の『真夏の方程式』には、その場面が設けられておらず、残念至極な気がしたところです)。

(注5)さらに加えれば、麗子を誘拐し身代金(100万ドル)を略取したこと、麗子を爆殺しようとしたこと(実際には、不発でしたが)、麗子と影山を洋上に投げ出したこと(ちゃんとした救命ボートでしたが)なども、罪状に付け加えられることでしょう。

(注6)犯人の裁判をどの国が行うのかによって課される刑は異なるでしょうが、本作の場合、死刑になる可能性もあるのではないでしょうか?
 本作ではどうやら、船が寄港したシンガポールの警察に犯人は引き渡されたようです。
 でも、そこでは留置されるだけであり、豪華客船スーパースターヴァーゴの船籍が、このサイトの記載によればパナマですから、刑事裁判管轄権は第一義的にはパナマなのかもしれません。ただ、パナマのような便宜置籍国は、自国に直接の被害が発生しているわけではないので、事件処理に総じて消極的なようです。
 他方、犯人及び被害者の一人は日本人ですから、日本の刑法は適用可能と考えられます(犯人については刑法第3条によって、被害者については刑法第3条の2によって)。とはいえ、もう一人の被害者レイモンド・ヨーは外国人(シンガポール人)ですから、シンガポールが管轄権を主張する可能性もあると思われます。
 いずれにせよ、関係する国の協議によって、裁判管轄権は決められることになるでしょう。
 なお、この件については、このサイトの記事が参考になると思います。



★★★☆☆



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2 コメント

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Unknown (ふじき78)
2013-09-13 08:56:31
> 犯人はレイモンド・ヨーを殺してしまう必要があったのでしょうか?

あっ、本来の目的の為ならマネキンでいいじゃん。まあ、怨恨があったからという事でしょうねえ。二人目は二人目で事情があるし。クルーズがもう少し長かったら歯止めが効かなくなった犯人に「うぜえ」って理由で竹中直人か椎名桔平あたりも殺されてしまったかもしれません。

カジノのシーンは生瀬が面白かっただけにもうちょっと見たかった。どっちかっていうとポーカーフェイスが出来ないお嬢様の尻拭いを影山がするってパターンじゃないですか?
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Unknown (クマネズミ)
2013-09-14 05:42:06
「ふじき78」さん、TB&コメントをありがとうございます。
確かに、犯人はレイモンド・ヨーに「怨恨があった」わけですが、騙されただけで殺されたわけではないのですから(自殺を引き起こしましたが)、同じように彼から大金を巻き上げれて裸にしてしまえばいいのでは、と思いました。
それに、犯人は殺人鬼でもありませんから、理性を失って「歯止めが効かなくな」ることもないのではないか、レイモンド・ヨーを殺して目的を達成したというのなら、むしろ自決すべきではないのか、などと思いました。

カジノのシーンは、おっしゃるようにもう少し工夫を凝らしてもらったほうがよかったと思います。
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