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ゼロ・グラビティ

2014年01月10日 | 洋画(14年)
 『ゼロ・グラビティ』を渋谷TOEIで見ました。

(1)いつもは躊躇する宇宙物ながら、サンドラ・ブロックジョージ・クルーニーとが初共演とのことで、映画館に行ってきました。

 映画の冒頭では、地上600㎞の高さになると、温度は+250~-100ºCで、音を伝えるものはなく、気圧も酸素もないなどと説明されます。
 そんな厳しい環境の宇宙空間で、メディカル・エンジニアのライアン・ストーン博士(サンドラ・ブロック)は、スペースシャトルから出てハッブル宇宙望遠鏡にかかわる作業をしています(注1)。また、バッテリーの交換をしている者も。



 さらにその周囲では、ベテラン宇宙飛行士のマット・コワルスキージョージ・クルーニー)が、宇宙遊泳記録をつくろうとプカプカ浮かんだり、ストーン博士を手伝ったりします(注2)。
 その時、地上のヒューストンから、「作業中止、至急地球にもどれ」との緊急連絡が。ロシアによって破壊された人工衛星の破片(スペース・デブリ)が猛烈なスピードで彼らの方に向かっているというのです。
 ですが、すでに時遅く、大量の破片が彼らに襲いかかり、ストーン博士は、スペースシャトルに取り付けられていたアームともろともに宇宙空間に放り出されてしまいます。アームとつながっていたベルトを外すと、彼女は回転運動を起こしてしまい、自分の位置が把握できません。
 そうこうするうちにコワルスキーが彼女を探し出し、急ぎスペースシャトルに戻ろうとします。
 でも、人工衛星の破片によりスペースシャトルも大破してしまったため、次の手として、国際宇宙ステーション(ISS)に行って、そこに接続されているソユーズを使おうとします。
 さあ、この帰還劇はうまくいくのでしょうか、………?

 登場人物が2人だけながら、次々に危機が彼らに襲いかかるために、最後の最後までハラハラのし通しでした。そればかりか、宇宙空間での映像が実に素晴らしく、リアリティーも迫力も十分感じられ、91分を大層堪能したところです。

(2)ですが、本作については、佐藤秀さんのブログ記事が指摘するように、様々な問題点があると思われます。
 加えて、邦題の「ゼロ・グラビティ」には少々違和感を覚えます。
というのも、重量(weight)がゼロ、すなわち無重量のことを無重力と呼ぶことがあるにせよ、重力(gravity)そのものはなくならないのですから、正確な言い方ではないわけですし(言葉の使い方の問題に過ぎませんが)、さらにストーン博士が地球に帰還するというこの映画のメインの話も、まさに重力があってこその話だからです(注3)。

 とはいえ、理系の知識の乏しいクマネズミは、本作を見ている最中は、それらの問題点はマッタク念頭に浮かばず、ただただその素晴らしい映像に見入ってしまいました(尤も、2Dによる上映を見たにすぎませんが)。

 さらにまた、本作に登場する2人の俳優の素晴らしさも言を俟たないでしょう。
 その主役はいうまでもなくストーン博士であり、それに扮するサンドラ・ブロックが熱演していてすこぶる感銘を受けました。



 でも、やはり共演のジョージ・クルーニーを忘れるわけにはいきません(注4)。
 あれだけの美男子でスタイル抜群にもかかわらず、ほとんど宇宙服を脱ぐこともなく、ヘルメットのガラス(注5)越しにしか顔を見せないで窮屈至極の演技するのですから(注6)!



 それだけでなく、彼の無駄話めいた交信内容は、ジョージ・クルーニーが話すことによって実に味があるものとなっています。
 例えば、ヒューストンの管制官に向かって、「1996年に42日間のミッションをした時、テキサスの上空を飛行するたびに、地上で妻が私のことを思って空を見上げていることが分かっていたので、6週間にわたってキスを投げ送っていた。ところが、エドワード空軍基地に降り立ったら、妻が弁護士と逃げ去っていたことがわかったんだ」と彼がしゃべると、管制官は「何度も聞いたよ」と切り返します。
 暫くして、彼が、「今回のミッションは、1987年の感謝祭の時と同じように嫌な感じがする」と言うので、管制官が「その話は初耳だ」として促すと、彼はニューオーリンズのバーボンストリートを歩いていた時のことを語り始めますが、その際中に作業中止の指令が飛び込むのです。
 その後様々な出来事があって、宇宙船ソユーズの中に一人取り残されたストーン博士は、コワルスキーを探して、「マット、どこにいるのか伝えて。ケープ・カナベラルを出発して以来、ずっとしゃべり続けてきたのに止めてしまったの?感謝祭の話の続きはどうしたの?」と無線で呼びかけますが、何の応答もありません(注7)。

(3)なお、本作を見ている時に思い浮かんだのは、本作と対極をなすような作品『アップサイドダウン』でした。
 同作の設定では、2つの惑星が逆向きにギリギリで接触する位置にあり、それぞれの住民はそれぞれの重力から逃れることが出来ないのです。主人公は、禁を破って反対側の惑星に入り込むのですが、そのままの状態では行動できないため、秘密裏に取得したその惑星の金属(「逆物質」と言われます)を体にまとって動き回ります。
 それでも最後には、実にあっけないやり方で主人公は反対側の惑星の恋人と一緒になることができるのですが。

 同作は、リアルな装いを凝らしている本作とは異なって、実際には起こりえないファンタジーの世界を取り扱っているとはいえ、本作とは正反対の方向から「重力」を描き出していて、それはそれで興味深いものがあります。

(4)渡まち子氏は、「ほとんどが宇宙服を来て素顔をさらさず、体を使っての演技も制限される中、熱演をみせたブロックとクルーニーのオスカー俳優2人の演技も絶品。存分に“遊泳する”ためにも、絶対に3Dで見てほしい作品で、映画好きなら見逃し厳禁の傑作だ」として、なんと95点をつけています。
 相木悟氏は、「ジェットコースター気分でスリルを楽しんで、帰りにはしっかりとした感動が胸に残る。これぞ映画的アトラクション・ムービーの正しい在り方といえよう」と述べています。




(注1)ヒューストンからの連絡では、データが何も送られてきていないとのこと。修理しなくてはなりませんが、それには後1時間かかるようです。ストーン博士は、この作業に時間をとられてしまってスペースシャトルに帰還するのが遅れ、ひいては大事故に結びついてしまったと悔やみます。

(注2)その際の会話で、ストーン博士は、スペースシャトルに乗船する前に半年ばかりの訓練を受けていることがわかります(但し、そのなかには休日が含まれていたようです)。

(注3)人工衛星が地球を回っているというのも、重力と遠心力とが打ち消し合っているからという説明と、重力によって人工衛星は絶えず地球に向かって落ち続けているという説明がなされているようですが、いずれにせよ重力がゼロというわけではありません。これは、宇宙船の中の状態にも当てはまるでしょう(例えば、このサイトの記事のQ8を参照)。

(注4)サンドラ・ブロックは、最近では『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』で見ましたし、ジョージ・クルーニーについては、最近では『ファミリー・ツリー』で見ました。

(注5)あるいは「バイザー」と言うのかもしれません。
 なお、劇場用パンフレット掲載の「Production Notes」によれば、本作でそれはCGを使って描かれているとのこと。

(注6)ソユーズに入り込んだストーン博士が抱く妄想の中で、コワルスキーはヘルメットを外しますが。

(注7)コワルスキーの無駄話も、ミッションが初めてのストーン博士の緊張感をほぐすのに役立ったものと思われます。
 それまでのコワルスキーとの会話の中でも、ストーン博士は、次第に自分自身のことを話しています〔例えば、4歳の娘を失ってしまったこと(学校で鬼ごっこで遊んでいる最中に、滑って頭を打って)。この話を聞き出すにあたっては、先に話したコワルスキーの妻の話が伏線として効いている感じです〕。
 なお、ソユーズに乗り込んだストーン博士がグリーンランドのイヌイット族の漁師と交信する様を、地上の漁師の側から描いた映像が、スピンオフ動画になっています(この記事で当該動画とその概要がわかります)。




★★★★★☆




象のロケット:ゼロ・グラビティ


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6 コメント

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Unknown (佐藤秀)
2014-01-10 22:06:43
>重力と遠心力とが打ち消し合っている

日本語的には引力と遠心力の差が重力なので、無重力=ゼロ・グラビティで差支えないと思いますよ。英語でもzero gravityと言いますし。
Unknown (クマネズミ)
2014-01-11 07:08:24
「佐藤秀」さん、TB&コメントをありがとうございます。
クマネズミとしては、エントリの「注3」で触れたサイト(JAXAのサイトの「Q&A」の「宇宙の不思議 うそ、ほんと ~さあ、宇宙へ飛び出そう!~」の第2章)の「Q8」に従ってそのように書いたのですが(「スペースシャトル本体について、重力と遠心力がつり合っているなら、船内のすべての物体についても、重力と遠心力はつり合う。すると、すべての物体について重力はうち消され、見かけ上の重力はゼロ、ということである」)。
なお、そのサイトでは、「地球が引く力(これは重力と呼ばれたり、万有引力と呼ばれたりする)」と「Q7」にありますから、「引力」=「重力」としているようです。でも、「佐藤秀」さんのように、「引力」-「遠心力」=「重力」とされるのであれば、「重力」はゼロ・になるわけだと思います。
また、同じサイトの「コラム4」でも「無重力と「無重量」のことが取り扱われています。
ある意味で、言葉遣いの問題なのではないでしょうか?
Unknown (ふじき78)
2014-01-11 07:47:02
> それだけでなく、彼の無駄話めいた交信内容は、ジョージ・クルーニーが話すことによって実に味があるものとなっています。

味があるからと言って、タランティーノをキャスティングして、無駄話を延々とさせると全然別の映画になってしまうんだろうなあ(このコメントがまたとっても無駄話だ)。
Unknown (クマネズミ)
2014-01-11 08:16:41
「ふじき78」さん、TB&コメントをありがとうございます。
ジョージ・クルーニーの話は、表面的には無駄話に見えても実はよく考えられている内容と思われますが、タランティーノをキャスティングしたりしたら、彼のことですから、シナリオを無視して本当に無駄話をしかねませんね!
無重力 (KGR)
2014-01-11 10:38:07
「無重力」が話題になっているようですが、最近メディアなどでは「無重力状態」と呼ぶことが多いようです。

厳密に言えば宇宙のどこにいても全く他からの引力の影響を受けない場所はないので、完全な無重力はありませんが、釣り合って見かけ上の重力がないのかほんとにないのかは確かめようがないはずです。

ところでこの映画、主演二人も見事ですが、演出、撮影が傑出していたようにも思います。
アカデミー賞の何かの部門賞を取るかもしれないと思っています。
Unknown (クマネズミ)
2014-01-11 21:51:47
「KGR」さん、TB&コメントをありがとうございます。
「無重力」に関する貴重な情報を感謝申し上げます。
なお、ネットを調べてみたら、Wikipediaには「無重量状態」という項目が設けられています。
また、「アカデミー賞の何かの部門賞を取るかもしれない」との点については、サンドラ・ブロックは主演女優賞を、ジョージ・クルーニーは助演男優賞を既に獲得しているので難しいかもしれないものの、美術賞とか撮影賞あたりならあるいは獲れそうですね

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