「ジュリー&ジュリア」を、日比谷のシャンテ・シネで見ました。
今年もメリル・ストリープの映画を2本見て一層のファンとなったところ(「マンマ・ミーア!」と「ダウト」)、本作品が今年最後の公開というのですから見に行かずにはおれません〔来年2月には『恋するベーカリー』の日本公開が控えているというのですから凄いことです!〕。
そして、本作品もなかなかうまく仕上げられているなと感心いたしました。
もちろん、2つの原作をいとも巧みに一つの作品にまとめあげた監督・製作・脚本のノーラ・エフロンの並々ならぬ手腕によるところが大きいわけですが、またメリル・ストリープの素晴らしさも大きく寄与しているものと思います。なにしろ、彼女は、身長が10cmほど低く、声もずっと低いなど相当違った個性である実在の料理家ジュリア・チャイルドを実に上手に演じているのですから!
それだけでなく、もう一人の主役と言えるエイミー・アダムスも、典型的な現代女性であるジュリー・パウエルを巧みに演じています。彼女の映画も今年は2本見たところ、メリル・ストリープと共演した「ダウト」もよかったと思いますが、「サンシャイン・クリーニング」は出色の出来でした。
この映画で面白いなと思った点は、次のようなことです。
・ジュリア・チャイルドの生涯と、ジュリー・パウエルの1年間の暮らしとは、まとまりのある一つの映画作品であるにもかかわらず、全く別々のものとして描かれ、ジュリアが作ったフランス料理のレシピでしかつながっていないとされているのです〔ただ、ジュリーは、ジュリアが自分のことに不満を抱いているということを知るのですが、それはあくまでも人づてに聞いたこととされ、二人はついに会うことはありませんでした〕。
・といっても、ジュリアの夫は、マッカーシーの赤狩り旋風のなかで尋問を受ける羽目になり、またジュリーは、9.11事件の事後処理に従事する公務員だということで、どちらもその時の政治状況から無縁の存在ではありません。
政治状況などは、こうした雰囲気の映画であればカットされてしまうのが普通でしょうから、その意味でこの映画は骨のある映画だと言えるかも知れません。
・また、ジュリアは、普及し始めたTVの料理番組の草分け的存在であり、他方ジュリーも、ブログという最新のメディアを使って自分のポジションを確保しようとします。いわば両者とも、新しい流れに乗っていると言えるでしょう。
・他方で、ジュリアの夫は外交官という古くからの固い職業に就いており、またジュリーの夫も、考古学雑誌の編集に携わっていて、時流とは離れた所にいます。
というように、様々な視点から2人の女性、2つの家族を比べてみるのも面白いかな、と思ったりしています。
評論家諸氏の受けも概して良さそうです。
福本次郎氏は、「作り手の人生観が込められた究極のラブレターに、心まで満腹になった」として、この人にしては稀有なことに80点もの高得点を与え、また、渡まち子氏も、「ストリープが個性豊かな名演技とすれば、ジュリーを演じるエイミー・アダムスの良さは自然体。二人の対比が効いている」などとして75点をつけているところ、前田有一氏は、「脚本はこなれているとは言えず、快感度は低い」ものの、「二人の素敵な女優と彼の食いっぷりで、映画全体としてもなんとか持ったという感じ」で60点しか与えていません。
前田氏は、「いちいち無理してヒロインを上げたり下げたりする必要はない」と述べたり、「毎日あんなに大量の料理を作って、いったいこの人はどう処理してるんだとか、資金はどっから出てるんだとか、余計な事を考えさせてしまうあたりも処理が足りない」と言っているところ、そんなつまらないことが気になるのであれば、要するにこの映画の楽しさに乗り切れなかっただけのことではないでしょうか?
象のロケット:ジュリー&ジュリア
今年もメリル・ストリープの映画を2本見て一層のファンとなったところ(「マンマ・ミーア!」と「ダウト」)、本作品が今年最後の公開というのですから見に行かずにはおれません〔来年2月には『恋するベーカリー』の日本公開が控えているというのですから凄いことです!〕。
そして、本作品もなかなかうまく仕上げられているなと感心いたしました。
もちろん、2つの原作をいとも巧みに一つの作品にまとめあげた監督・製作・脚本のノーラ・エフロンの並々ならぬ手腕によるところが大きいわけですが、またメリル・ストリープの素晴らしさも大きく寄与しているものと思います。なにしろ、彼女は、身長が10cmほど低く、声もずっと低いなど相当違った個性である実在の料理家ジュリア・チャイルドを実に上手に演じているのですから!
それだけでなく、もう一人の主役と言えるエイミー・アダムスも、典型的な現代女性であるジュリー・パウエルを巧みに演じています。彼女の映画も今年は2本見たところ、メリル・ストリープと共演した「ダウト」もよかったと思いますが、「サンシャイン・クリーニング」は出色の出来でした。
この映画で面白いなと思った点は、次のようなことです。
・ジュリア・チャイルドの生涯と、ジュリー・パウエルの1年間の暮らしとは、まとまりのある一つの映画作品であるにもかかわらず、全く別々のものとして描かれ、ジュリアが作ったフランス料理のレシピでしかつながっていないとされているのです〔ただ、ジュリーは、ジュリアが自分のことに不満を抱いているということを知るのですが、それはあくまでも人づてに聞いたこととされ、二人はついに会うことはありませんでした〕。
・といっても、ジュリアの夫は、マッカーシーの赤狩り旋風のなかで尋問を受ける羽目になり、またジュリーは、9.11事件の事後処理に従事する公務員だということで、どちらもその時の政治状況から無縁の存在ではありません。
政治状況などは、こうした雰囲気の映画であればカットされてしまうのが普通でしょうから、その意味でこの映画は骨のある映画だと言えるかも知れません。
・また、ジュリアは、普及し始めたTVの料理番組の草分け的存在であり、他方ジュリーも、ブログという最新のメディアを使って自分のポジションを確保しようとします。いわば両者とも、新しい流れに乗っていると言えるでしょう。
・他方で、ジュリアの夫は外交官という古くからの固い職業に就いており、またジュリーの夫も、考古学雑誌の編集に携わっていて、時流とは離れた所にいます。
というように、様々な視点から2人の女性、2つの家族を比べてみるのも面白いかな、と思ったりしています。
評論家諸氏の受けも概して良さそうです。
福本次郎氏は、「作り手の人生観が込められた究極のラブレターに、心まで満腹になった」として、この人にしては稀有なことに80点もの高得点を与え、また、渡まち子氏も、「ストリープが個性豊かな名演技とすれば、ジュリーを演じるエイミー・アダムスの良さは自然体。二人の対比が効いている」などとして75点をつけているところ、前田有一氏は、「脚本はこなれているとは言えず、快感度は低い」ものの、「二人の素敵な女優と彼の食いっぷりで、映画全体としてもなんとか持ったという感じ」で60点しか与えていません。
前田氏は、「いちいち無理してヒロインを上げたり下げたりする必要はない」と述べたり、「毎日あんなに大量の料理を作って、いったいこの人はどう処理してるんだとか、資金はどっから出てるんだとか、余計な事を考えさせてしまうあたりも処理が足りない」と言っているところ、そんなつまらないことが気になるのであれば、要するにこの映画の楽しさに乗り切れなかっただけのことではないでしょうか?
象のロケット:ジュリー&ジュリア